グーグルが人工知能(AI)搭載のスマート眼鏡(スマートグラス)を来年に発売すると明らかにし、Meta(メタ)が主導してきたAIウエアラブル(着用型)市場の先取り競争が本格化する見通しだ。米ビッグテック各社はスマートフォンに続く次世代機器としてスマート眼鏡を指名し、関連投資を拡大している。約10年ぶりにスマート眼鏡市場に再参入するグーグルが、今回はソフトウエアからハードウエアまで包摂する統合AIエコシステムを構築できるかが注目される。
◇ サムスン電子と組むグーグル、Gemini搭載スマート眼鏡を来年投入
グーグルは8日(現地時間)に開かれた「アンドロイドショー」で、最先端AIモデルのGeminiと連携したスマート眼鏡を来年順次披露する計画だと発表した。初期モデルはオーディオ機能のみを搭載し、音声でGeminiと会話し情報をやり取りする方式になる見通しだ。のちにレンズに内蔵したディスプレーを通じてナビゲーション(道案内)、翻訳などの情報も表示するモデルを追加で公開すると付け加えた。
現在グーグルはサムスン電子、米眼鏡ブランドのワービーパーカー、韓国の眼鏡ブランドであるジェントルモンスターと組み、スマート眼鏡のハードウエアデザインを共同開発している。その一環として5月にはワービーパーカーと1億5,000万ドル(約2,000億ウォン)規模の投資を約束した。ワービーパーカーもこの日、米証券取引委員会(SEC)に提出した資料で「グーグルと協力して作った初の軽量(lightweight)スマート眼鏡が2026年に発売される予定だ」と記載した。
来年に初披露されるスマート眼鏡は、グーグルのヘッドセット専用OS「アンドロイドXR」を基盤に製作される予定だ。
グーグルは今年5月、10年ぶりにスマート眼鏡市場へ再参入すると宣言した。グーグルは2013年に初のスマート眼鏡「グーグルグラス」を披露したが、MITテクノロジーレビューが選んだ「21世紀最悪の技術」の一つに挙げられるなど酷評にさらされ、2015年に市場から撤退した。当時グーグルグラスは無骨なデザイン、高価格、限定的な機能、発熱問題、違法撮影によるプライバシー侵害論争で失敗したとの評価を受ける。
グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリンは、過去のグーグルグラスの失敗経験を教訓に、今回は成功させる意志を示した。ブリンは5月のグーグル年次開発者カンファレンス(I/O)にサプライズ登場し、「(2013年当時は)AI技術が十分に発達しておらず、サプライチェーンの理解度も低く製品価格が過度に高かった」とし、「生成AIの登場でスマート眼鏡の機能を適切に実装できるようになった」と自信を見せた。
グーグルはスマート眼鏡を起点に、ウエアラブルAI機器のエコシステムを拡張していく構想だ。日常で頻繁に使う機器にAIを滑らかに統合し、スマートフォンに続く次世代コンピューティングプラットフォームを先取りするのが目標である。この日グーグルはブログでスマート眼鏡の発売日程を発表し、「AIと拡張現実(XR)が真に有用になるには、ハードウエアが生活の中に自然に溶け込み、個人のスタイルに合う必要がある」としたうえで、「一つのフォームファクター(製品形状)がすべての人に合うことはないため、アンドロイドXRを多様な機器を支援するプラットフォームとして構築している」と説明した。
とりわけグーグルは検索、コンテンツ(YouTube)、アンドロイドOS、生成AI(Gemini)などソフトウエア競争力を成すすべての要素を自社で保有しており、今回のスマート眼鏡投入でこれまで弱点とされたハードウエア部門の印象を改めることができれば、競合に対して優位を確保できるとの見方が業界で出ている。グーグルは先に自社開発の「ピクセルフォン」でスマートフォン市場に参入したが、ハードウエア競争力が不足し、アイフォーンとサムスン電子の壁を越えられなかった。
CNNは「地図アプリで道を探し、知らない情報をグーグルで検索し、友人とビデオ通話をするなど、日常でスマートフォンを使って行うすべての活動をスマート眼鏡で代替する世界を作ることを目標にしている」と報じた。
◇ Meta(メタ)、独走の先頭…中国のアリババ・シャオミまで参戦
スマート眼鏡がスマートフォンを代替する次世代機器として注目を集め、関連分野の競争も激化する見通しだ。現在は有名眼鏡ブランドのレイバン・オークリーと組んだMeta(メタ)がこの市場を主導しているが、グーグルとアップルに続きアリババなど中国のテック企業まで参戦し、来年がスマート眼鏡大衆化の元年になるとの見方も出ている。
市場調査会社のオムディアは、今年のスマート眼鏡の世界出荷台数が510万台と前年比158%増になると推定した。来年はグーグル、シャオミなど主要企業がスマート眼鏡を相次いで披露し、出荷台数が1,000万台を超え、年平均47%で成長して2030年には3,500万台を突破すると見通した。
オムディアは「眼鏡にAIベースの知能を統合すれば、日常を体験する方式を根本的に変え得るため潜在力が大きい」とし、「Meta(メタ)がレイバンブランドと協業したことが決定的で、いわゆるナード(ガリ勉)製品と見なされていたスマート眼鏡を魅力的な製品へと転換し、主流市場に参入する突破口を用意した」と評価した。
Meta(メタ)がレイバンと組んで投入した「レイバンメタ」スマート眼鏡は予想以上の成功を収め、市場を先取りした状態だ。9月には内蔵ディスプレーを備えた799ドルのモデルも披露するなど、関連商品の拡張に乗り出した。オムディアは今年のMeta(メタ)のスマート眼鏡出荷台数を400万台と見込み、全市場の80%を占めると推定した。マーク・ザッカーバーグMeta(メタ)最高経営責任者(CEO)は第2四半期の決算カンファレンスコールで「スマート眼鏡は個人超知能を実現するための理想的なフォームファクターだ」とし、将来はスマート眼鏡がAIと相互作用する主要な手段として浮上すると強調した。
最近Meta(メタ)は慢性的な赤字だったメタバース事業の予算を30%削減するなど構造改革に乗り出したが、スマート眼鏡など市場で高い評価を受けるコンシューマー向けハードウエア開発への投資は増やしている。今月初めにはアップルでユーザーインターフェース(UI)デザイン総括を務めてきたアラン・ダイを招聘し、ダイはスマート眼鏡などMeta(メタ)の次世代ハードウエアデザインを担当するとみられる。今月6日にはペンダント形のAI機器を作るスタートアップ「リミットレス」を買収した。リミットレスは服に装着したりネックレスとして付けられるAIペンダントを開発した企業で、日常の会話や会議などを録音して文字化したり要約したりするサービスを提供する。
中国のアリババも先月末、AI搭載スマート眼鏡「クオーク」を発売し、ウエアラブル市場に参入した。同製品はアリババのAIモデル「Qwen」と連携し、高解像度ディスプレーを搭載した。価格は39万ウォンからで、Meta(メタ)のレイバン眼鏡の約3分の1水準だ。バイドゥは先月の年次「バイドゥワールドカンファレンス」で「シャオドゥAI眼鏡プロ」を公開した。これ以外にも、アップルが来年にAI搭載スマート眼鏡「アップルグラス」を披露するため開発を加速しており、スナップも来年スマート眼鏡「スペクタクルズ」を投入すると予告した。