「検索の帝王」グーグルが発表した2025年のトレンド検索語1位は、皮肉にも自社の人工知能（AI）チャットボット「Gemini」だった。これまで大型スポーツイベントや政治イシューが占めてきた座をAIサービスが代替した点で、今年のグローバルな検索関心の中心がAIへ移動したことを示す象徴的な結果である。
グーグルの「今年の検索語」レポートによると、Geminiは年間検索増加幅で1位を記録し、「DeepSeek（ディープシーク）」など他の生成型AIサービスも上位を占めた。単一サービスの成果を超え、世界の利用者の検索行為がAIベースの質疑応答へ移行する流れが鮮明になったとの評価である。
あわせて既存のポータル中心の検索エコシステムにも変化の兆しが表れている。生成型AI検索の利用拡大に伴い、グーグル・NAVERなど伝統的検索エンジンの長期独占構造にも亀裂が生じているというのが業界の分析である。
韓国の状況もこれと似ている。グーグルコリアが発表した「今年の検索語」を見ると、テクノロジー分野の1位は「ChatGPT」が占め、その後にGemini、ゼタ（Zeta）、パープレキシティ（Perplexity）などAIベースの検索・質疑応答サービスが上位を席巻した。Kコンテンツや政治イシューが他の部門を埋めはしたが、テクノロジー分野に限ってはAIが事実上すべての検索関心度を独占した格好だ。業界では「いまや『検索する』という行為は、ほぼ『AIに尋ねる』という意味と同義になった」との分析を示している。
こうした雰囲気は実際の検索市場の数値変化でも明確に確認できる。市場調査会社スタットカウンター（StatCounter）によると、10年以上90%台のシェアを維持してきたグーグルの検索市場シェアは、2024年末から2025年の間に87〜89%のレンジへと沈んだ。変化幅は大きくないが、検索市場の「絶対的強者」グーグルで初めて下落傾向が現れた点で意味が大きい。マーケティング分析会社ページトラフィック（PageTraffic）は、今年のグローバル情報探索市場でグーグルのシェアを81.6%、ChatGPTを約9%と推定した。単一のAIサービスが検索市場の需要の10%に近づいたのは事実上初めてである。
年齢別・用途別の使用パターンを見ると変化はさらに鮮明だ。25〜44歳のユーザーは天気・地図のような単純情報の検索では依然としてグーグルへの依存度が高いが、創作・業務・知識探索分野ではAI活用比率が64%まで上がり、むしろポータル検索を上回った。複合的・叙述型の質問が増えた点は、すでに自然言語ベースの検索の重心がAIへ移動したことを象徴している。
AIベースの検索サービスのトラフィック成長速度はさらに急だった。データ分析会社シミラーウェブ（Similarweb）によると、生成型AIサービスのトラフィックは前年比で165倍も増加した一方、既存検索エンジン上位10社のオーガニック検索流入は−0.51%と減少した。「会話型検索エンジン」を掲げるパープレキシティは月間訪問数が2024年3月の5200万件から今年5月には1億5300万件へと約3倍に急増した。利用者の検索行為が「リンク探索型」から「直接応答型」へ移行していることを示すデータである。
業界が最も注視する変化は「ゼロクリック（Zero-Click）」現象である。利用者が検索結果ページから元のサイトへ移動せず、AIが提供する要約情報だけを確認して離脱する構造である。ガートナーは生成型検索の導入により既存ウェブサイトの流入トラフィックが2026年までに25〜50%減少すると予測した。グーグルの「AI Overview」機能を有効化した場合、ウェブサイトのクリック率が平均34.5%低下するとの分析も出ており、コンテンツ業界とメディア業界の懸念が強まっている。
AIは検索サービスの外部エコシステムにも素早く吸収される雰囲気だ。アップルが発表した「App Store Awards」では、視覚的なスケジュール管理アプリ「ティモ（Tiimo）」、自動映像編集機能の「ディテイル（Detail）」、視覚障害者向けに説明機能を提供する「ビー・マイ・アイズ（Be My Eyes）」などAIベースの機能を内蔵したアプリが多数受賞した。AIがスマートフォン・PCエコシステムの基本機能として組み込まれていることを示す事例である。
業界では今年を起点に、検索市場が既存のポータル中心の「リンク探索モデル」からAIが即答を提供する「応答型モデル」へ転換する過渡期に入ったとの評価が出ている。検索市場の重心移動はすでに始まっており、トラフィック・広告中心の既存の検索・メディア産業構造も再編圧力を受けるとの見方である。