イスンヨン(44) ジェンジeスポーツ グローバル戦略・新規事業総括常務は20日にChosunBizとソウル宣靖陵のあるカフェで会い、初の長編小説『プロジェクト ペンタキル アゲイン』を紹介し、このように語った。ジェンジeスポーツは米国ロサンゼルスに本社を置くグローバルeスポーツ球団で、韓国『リーグ・オブ・レジェンド(LoL) チャンピオンズ コリア(LCK)』に正式所属するプロチームを運営している。LoL・PUBG(バトルグラウンド)など多数種目で活動する北米・アジア拠点の国際球団であり、LCKでは近年数年間にわたり着実に優勝圏の成績を出しているチームだ。
この常務はスポーツで8年、eスポーツで8年を過ごした稀有な経歴の持ち主だ。延世大ヨーロッパ言語文化学部を卒業し、米国コネチカット州立大でスポーツ経営の修士を終えた。KOLON スポーツ団スポーツマーケティングチーム、IMGゴルフディビジョンのチーム長、2015プレジデンツカップ運営チーム長を経てスポーツ組織の運営と現場システムを体で習得した。その後ブリザード・エンターテイメント アジア・太平洋(APAC) eスポーツ総括として活動し、オーバーウォッチ・リーグの誕生から運営まで全過程を直接責任を持って担い、グローバルeスポーツリーグ構造の長短所も誰より間近で経験した。
イスンヨンは『スポーツマーケティング ちょっとずつ解説』『eスポーツマーケティング ちょっとずつ解説』を含め六冊の実用書を出した著者でもある。しかし「現場の緊張・葛藤・感情の機微は実用書では決して盛り込めない」として、今回初めて叙事文学に挑戦した。
プロジェクト ペンタキル アゲインは選手・コーチングスタッフ・フロント・リーグ運営陣の間で絡み合う利害関係、ゲームIP(知的財産権)の寿命変化に伴う産業構造の揺らぎ、ファンダム世論と消費パターンがチーム運営に与える影響など、eスポーツ産業の舞台裏をそのまま露わにする。主人公「ハイガン」が経験する失敗と再起の叙事は、作者が現場で直接目撃してきた選手のキャリア断絶、リーグの縮小・解体、セカンドキャリア不在といった現実を土台にした。この常務は「数多くの才能が日の目も見ずに消えていく場面をあまりにも多く見た」と述べ、「二度目のチャンスを得られなかった人々に『リスポーン(respawn)』のメッセージを伝えたかった」と語った。以下、常務との一問一答。
─小説を書くことを選んだ理由は何か。どの場面・事件が動機になったのか。
「スポーツとeスポーツの現場で働きながら感じた最大の問題は『華やかな舞台の裏に隠れた生存競争』が正しく知られていない点だ。デビューすらできずに消える選手たち、リーグ構造の変化で一夜にしてチームが解体される状況などを繰り返し見ながら、業界の舞台裏を記録すべき必要性を強く感じた。実用書では現場の感情・葛藤・密度を盛り込むのは難しいと判断し、当初はウェブ小説で連載を始めたが、産業の構造的現実をより深く伝えるために長編小説へと拡張した。この問題意識が『プロジェクト ペンタキル アゲイン』の出発点だった。」
─主人公の失敗・再起の叙事に作者本人の経験が投影されたのか。
「ハイガンは虚構の人物だが、その感情の流れはイスンヨンが業界で直接経験した責任感・圧迫・挫折・回復の感情と接している。オーバーウォッチ・リーグが成長・衰退する全過程を総括し、種目の興亡が選手・コーチングスタッフ・フロントすべてにどのような影響を与えるかを誰より間近で見た。特にリーグ運営者として感じる重み、組織を守らねばならないという責任感、結果に対する負担はイスンヨンの経験から来た部分が多い。こうした感情が自然にハイガンの内面の叙事として入り込んだ。」
─『二度目のチャンス(リスポーン)』というメッセージを強調した理由は何か。
「プロゲーマーは大半が10代で人生を懸けるが、デビュー確率は非常に低く、ライフサイクルは短い。準備されていない引退は社会復帰を難しくする。実際に複数のリーグが終了し、多くの選手が進路を失い、選択肢は種目転向・コーチング・配信などに限定されざるを得なかった。だから『二度目のチャンス』は単なる再就職ではなく、新しい人生を設計し自らの価値を再び打ち立てる過程に近い。その回復過程こそがeスポーツ産業で最も切実なテーマだと感じ、リスポーンを作品の核心メッセージに据えた。」
─小説の中の選手・監督・フロント間の利害衝突は現実でも同じか。
「現実でも非常に頻繁に発生する。監督・コーチは競技力と勝利が最優先だが、フロントは収益性と財政安定が最優先だ。フロントはスポンサー露出とファンサービスのために選手をコンテンツ・イベントに投入しなければならないが、監督は練習の集中度低下を懸念して制限する場合が多い。ここにeスポーツはゲーム寿命という変数が存在し、リーグ存続の可否が不確実な分、財政的圧迫と運営ストレスが一層大きい。小説の葛藤構造は業界で実際に繰り返される場面と大きく変わらない。」
─ファンダムがチーム運営に直接的な影響を与えた事例が実際に存在するのか。
「eスポーツのファンダムはポジティブ・ネガティブいずれも即時性が高く影響力が大きい。技能が揺らぐ場合、悪性世論が素早く形成され、選手のメンタルとチームの雰囲気に影響を与える。一方でロイヤルファンダムのオフライン応援・グッズ消費・イベント参加はチーム存続の決定的な原動力になる。財政的に厳しい時期にファンが自発的にグッズを購入したり支援キャンペーンを展開してチームが生存基盤を確保した事例も存在する。こうした経験が小説にもそのまま反映された。」
─フロントが現実で毎日直面する最大のプレッシャーは何か。
「最大のプレッシャーは収益モデルの多角化と年間予算の確保だ。多くのリーグはゲーム会社の投資に基づくため、リーグ自体の収益だけでチームを安定的に維持するのは難しい。したがってフロントはスポンサーシップ、IPビジネス、コンテンツ制作、アカデミー運営などあらゆる収益源を確保して、給料・施設費・運営費を賄わなければならない。年俸支給日・宿舎・練習室の運営費などが一度でも滞ればチーム存立が揺らぐため、常にプレッシャーの中で働くことになる。小説にある『すべての費用を責任を持つ団長』の描写は実際の業界でも誇張ではない。」
─球団の最大のコスト要因は何か。
「種目によって異なるが、概して選手年俸の総額比重が最も大きい。ただしすべての種目がLoLのように高い年俸構造を持つわけではなく、人気・リーグ規模・市場価値によって差が大きい。練習室・宿舎など施設コストも相当だが、コーチング・分析・マーケティング・セールスなど人材への投資比重が大きい点は共通している。eスポーツチームは労働集約的なビジネスだからだ。」
─フロントの見えない労働のうち、読者に最も知ってほしい部分は何か。
「『持続可能性のための見えない闘い』だ。選手が実力だけに集中できるよう、フロントは契約・予算・スポンサー・行政・リスク管理など多くの業務を担う。ハイガンが夜通し契約書を検討し、スポンサーを探して走り回る場面は、実際のフロントの日常と大きく変わらない。チームが存在するためには、こうした見えない労働が不可欠だという点を強調したかった。」
─伝統的なスポーツと比べたeスポーツの固有の強みと弱みは何か。
「eスポーツの強みはグローバルな拡張性とデジタル基盤のアクセス性だ。言語・地域の制約なく世界へ素早く拡散する。一方で最大の弱みはゲームIPの寿命に対する構造的依存性だ。LoL・スタークラフトのような長寿ゲームは例外的で、大半のゲームは1〜2年のうちにエコシステムが縮小する。種目の所有権がゲーム会社にあるため、リーグ運営・スポンサーシップ・中継権などの核心要素がIPホルダーの方針に左右されるという構造的限界も存在する。」
─種目の寿命と無関係に球団が持続可能であるためにはどのような構造が必要か。
「核心は特定のゲームIPに従属しない球団ブランドの独立だ。複数種目のチームを保有してリスクを分散し、球団ブランド自体でIP事業(コンテンツ・グッズ・教育)を拡張し、グローバルなファンダムを構築しなければならない。ジェンジがアカデミー・コンテンツ・流通などで収益源を拡張した事例が代表的だ。チーム自体のファンダムが形成される時、種目と無関係に持続可能性が生まれる。」
─今後5年間でeスポーツ産業における最大の変化は何だと見るか。
「地域別の人気ゲームが一層断片化する可能性が大きい。東南アジア・南米はモバイル中心、北米はコンソール中心、韓国・欧州はPC中心など、生態系が分離している。LoLのように世界を一つに束ねる種目は登場しにくいかもしれない。しかしこうした地域別の成長が合わされば、グローバル市場はむしろさらに大きくなる可能性がある。同時にコンテンツ・中継権の価値が上昇してメディア権利市場が拡大し、選手のライフサイクル管理・福祉・引退支援システムも専門化する見通しだ。」