マイクロソフト(MS)に続き、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)がエヌビディアの中国向け輸出能力をさらに制限する米議会の法案を支持して動いた。エヌビディアの最大顧客である2社のハイパースケーラーが供給企業と正面から対立し、AI覇権をめぐる利害関係が水面上に浮かび上がったとの見方が出ている。
問題となった「ゲインAI法」(GAIN AI Act)は、米国内のチップ需要を先に満たした後に限り、中国および武器禁輸対象国へ高性能AIチップを輸出できるよう求める内容である。法案が可決されれば、MS・AWSのような大手クラウド企業が自社データセンターに投入するチップへの優先アクセス権を確保し、供給不足局面で有利な立場を占めることができるとの観測が出ている。
MSの米国政策総括であるジェリー・ペトレッラは先月のカンファレンスで同法案について「本当に前向きに見ている」と述べ、公開の場で支持の意思を示した。AWSも上院スタッフとの非公開接触を通じて賛成の立場を伝えたとされる。AIスタートアップのAnthropicも法案支持の列に加わった。一方、もう一方のハイパースケーラーであるグーグルとMeta(メタ)、そしてドナルド・トランプ大統領はまだ公式見解を出していない。
政界ではチャック・シューマー米上院民主党院内総務など民主党の中核人物が法案を推しているが、実際の前進には上院銀行委員会のティム・スコット委員長と下院共和党指導部の同意が必要な状況である。法案は現在、国防権限法(NDAA)の修正案としての組み込みが議論されている。
エヌビディアは法案が「不必要な市場介入」だとして強く反発している。米国内にはすでにチップが十分にあり、AI産業の真のボトルネックは電力供給だと主張する。リサーチ会社コンステレーション・リサーチのレイ・ワン主任アナリストは「これまでハイパースケーラーとエヌビディアの対立は主に製品性能や価格の問題だったが、いまは地政学・規制まで絡み、はるかに複雑になった」と指摘した。
トランプ政権の「AIツァーリ」と呼ばれたデービッド・サックスなど一部のホワイトハウス関係者は、法案を発議したジム・バンクス議員に対し「商務省がすでにチップ輸出の統制権限を持っており、追加立法の実質的な効果は限定的になり得る」という見解を伝えたとされる。それでもMS・AWS・Anthropicが声をそろえて支持に動き、希少なAIチップをめぐる供給主導権争いが立法戦へと広がる様相だ。