「AIは人間の仕事を代替しない。むしろより多くの新しい仕事を生み出す」
「人工知能（AI）の大母」と呼ばれるフェイフェイ・リー米国スタンフォード大学コンピューター工学科教授で人間中心AI研究所（HAI）共同創設者は13日、ソウル東大門デザインプラザ（DDP）で開かれた「ソウルデジタルフォーラム（SDF）2025」でこう語った。続けて「100年前、人類の80%が農民だったが今は10%未満だ」とし「仕事が消えたのではなく進化したのだ」と述べた。
リー教授はこの日「AI技術の進化方向と社会的意義」をテーマに講演した。リー教授は「AIは人間の能力を補完する道具であり、技術よりも人間を中心に据える設計が未来のAIの核心であるべきだ」と強調した。
リー教授は教育の変化を最も重要な課題に挙げた。リー教授は「教員は決して消えない職業だ」とし「人間は学習する存在であり、若い世代は必ず成人から学ぶ」と語った。続けて「AIは教員を代替する技術ではなく、学習と創造性を拡張する手段であり、教育は暗記中心から創造力と問題解決力を育む方向に転換すべきだ」と付け加えた。
リー教授はAI資源の偏在問題も指摘した。リー教授は「現在のAI産業は資金とデータが一部の企業と国家に集中している」とし「これを緩和するために政府と社会がオープンソースのエコシステムと起業家精神を積極的に奨励すべきだ」と述べた。さらに「大企業だけでなくスタートアップ、学界、公共機関、非営利団体が共に参加してこそ持続可能なAIエコシステムを構築できる」と強調した。
リー教授は社会全般に広がったAI不安についても言及した。リー教授は「AIに対する不安の相当部分は情報不足に由来する」とし「政府と教育機関が市民にAIの原理と限界を明確に説明し、公共教育を強化すべきだ」と語った。続けて「AIが民主主義や労働、社会構造全般に影響を及ぼす以上、市民が技術を理解し統制できなければならない」と付け加えた。
リー教授は生成型AIの転換点とされたChatGPTを「AI大衆化の分岐点」と評価し、AIの次の転換点は「空間知能」と「大型ワールドモデル」だと主張した。空間知能はAIが3次元（3D）空間と物体の関係を理解し、実環境の中で思考・移動・創作できる能力を意味する。大型ワールドモデルはこのような空間情報を学習し仮想の世界を自ら構成・生成する技術で、ロボットや自動運転、デジタル制作など多様な分野に応用できる。
リー教授は「言語は1次元の信号だが現実世界は3次元で、時間まで含めれば4次元だ」とし「世界を空間的に理解し再創造できるAIが未来のイノベーションの核心になる」と見通した。続けて「この技術がロボット、製造、建築、芸術など実際の空間と相互作用する産業全般に応用される可能性が大きい」と説明した。
リー教授は超知能（ASI）について慎重な姿勢を示した。リー教授は「AIは翻訳や画像生成のような特定の課題ではすでに人間を凌駕したが、感情・共感・社会性など人間特有の知能にはまだ到達していない」と語った。さらに「リンゴが落ちる現象を観察し重力の法則を発見した人間の思考力は、依然としてAIが追いつけていない領域だ」と付け加えた。
リー教授は韓国のAI産業も高く評価した。リー教授は「韓国は世界的に情熱的で技術水準が高い国だ」とし「優れたSTEM（科学・技術・工学・数学）教育と研究インフラを基盤にグローバル競争力を確保している」と語った。続けて「サムスンのような大企業だけでなくスタートアップの活発な挑戦も印象的だ」と伝えた。
リー教授は「AIは道具であり、その方向は人間が決め、AIを善く使うにはすべての市民が参加しなければならない」とし「エンジニアだけでなく芸術家、教員、医師、学生、市民のすべてがAI時代の主体にならなければならない」と語った。