「AI三大碩学」の一人であるヤン・ルクン米ニューヨーク大学教授兼Meta(メタ)AI最高科学者がMeta(メタ)を離れ、スタートアップを設立する見通しだと伝わった。
ルクン教授は最近、知人にフェイスブックの親会社であるMeta(メタ)を離れる予定だと語ったと、フィナンシャル・タイムズ(FT)が消息筋を引用して11日(現地時間)報じた。ルクン教授は2013年からフェイスブックでAI最高科学者という肩書の副社長を務め、基礎人工知能研究所(FAIR)を率いてきた。
ルクン教授の決定は、マーク・ザッカーバーグMeta(メタ)最高経営責任者(CEO)が最近AI組織を大規模に再編しようとする中で出て注目を集めている。ザッカーバーグCEOは、ルクン教授が主導してきた長期AI研究から離れ、より迅速に大規模言語モデル(LLM)ベースの生成AIモデルと製品を投入する戦略を推進中である。Meta(メタ)がグーグル、オープンAIなど競合に後れを取ったとの評価が出ると、速度戦に入ったかたちだ。
そのためにMeta(メタ)は、人間水準の知能を備えた汎用人工知能(AGI)を超え「超知能」を最優先で開発するという目標を掲げた。Meta(メタ)は6月、有望AIスタートアップのスケールAIに143億ドルを投資し、「天才開発者」と呼ばれる28歳の創業者アレクサンダー・ワンを最高AI責任者(CAIO)として迎え入れ、「メタ超知能研究所」(MSL)の指揮を任せた。
また、研究者数百人を整理解雇し、AI組織をLLMを統括する「TBDラボ」とFAIR、製品・応用研究チーム、インフラチームの4チームに分ける再編も8月に断行した。これにより、この間ルクン教授はワンCAIOに報告してきた。
ザッカーバーグのこうした方向転換がルクン教授のビジョンと衝突したとの分析だ。ルクン教授はFAIRで次世代「ワールドモデル」開発に注力してきた。「ワールドモデル」は、AIが映像と空間データを学習し物理的な世界を理解するよう設計したAIシステムである。
ルクン教授は、本質的に次の単語予測技術にすぎないLLMを基盤とするAIは日常で有用ではあっても、人間のように推論し計画する能力は備えられないとの立場だ。ルクン教授は、AIが直接見聞きして世界を学習し、さらに予測・推論などが可能な「ワールドモデル」を代案として提示している。ルクン教授はこのモデルが完成するまでには10年ほどかかると見通した。
ルクン教授はMeta(メタ)を離れAIスタートアップを設立すると伝えられており、このスタートアップもワールドモデル研究に注力する見通しだ。
ルクン教授は、昨年ノーベル物理学賞を受賞したジェフリー・ヒントン、カナダのトロント大学教授と、ヨシュア・ベンジオ、モントリオール大学教授らとともに「AIのゴッドファーザー(Godfathers of AI)」と呼ばれる碩学である。3人はAI分野の業績が認められ、2018年に並んで科学分野のノーベル賞と称されるチューリング賞を受賞した。