米国とイランの戦争が早期に終わると予想して冬用の天然ガス購入を先送りしていた欧州の読みが外れた。戦争が終わればカタールの液化天然ガス(LNG)供給が正常化し、価格が下がると期待したが、戦争は7カ月目に入っている。戦争の早期終結と価格下落を見込んでガス購入を遅らせた選択が、冬を前にした欧州のエネルギー負担となって跳ね返っているとの分析が出ている。
3日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)・ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)などによると、現在欧州連合(EU)の天然ガス貯蔵施設は約65.6%が埋まっている。15年前に欧州ガスインフラ(GIE)が関連統計の集計を開始して以来、同時期としては最低の記録である。一般的に欧州は冬季のガス消費量の約3分の1を貯蔵施設に備蓄したガスで賄う。
欧州が冬を前にガス貯蔵率に敏感なのは、ロシアのウクライナ侵攻当時に経験したエネルギー危機のためである。EUは2022年、ロシアのウクライナ侵攻とロシア産ガス供給の混乱でエネルギー危機が発生すると、同年6月にガス備蓄規定を導入した。初年の2022年には11月1日までに貯蔵施設の80%を満たすよう定め、2023年からは目標値を90%に引き上げた。
◇ 戦争が終われば価格が下がると見てガス購入を先送りした欧州
しかし今春、EU欧州委員会はガス価格が急騰すると、加盟国が購入時期を調整できるよう関連規定の柔軟性条項を活用して備蓄目標を80%に引き下げる案を提示した。とりわけドナルド・トランプ米国大統領も米国とイランが合意に近づいたと繰り返し明らかにし、欧州では戦争が終わればLNG供給が回復し価格も下がるとの期待が高まった。
しかし予想に反して戦争は長期化し、ホルムズ海峡を通過する油槽船など商船への攻撃も続いている。船舶追跡会社ケイプラー(Kpler)によると、原油輸送船はホルムズ海峡を通過しているが、LNG運搬船のうち海峡を抜けた船舶は少数にとどまった。カタール・ラスラファンLNG施設の生産ライン14本のうち稼働中は6本にすぎないことが把握された。
加えて中東地域のLNG供給の混乱が続き、ガス価格も急騰した。FTによると欧州天然ガス価格は直近2カ月で75%超上昇し、今週は3年ぶりの高水準を記録した。夏場から上昇基調だったガス価格は下落の兆しが見えないなか、欧州のエネルギー企業は貯蔵庫にガスを充填する負担も増した。
問題は、冬を前にガスを備蓄できる時間もあまり残されていない点である。貯蔵施設には一定期間に注入できるガス量に物理的な限界があり、必要量を確保しても短期間で貯蔵率を引き上げるのは難しい。欧州エネルギー企業METグループのフイベルト・ビゲベノ最高経営責任者(CEO)はFTに「現実的に重要なのは、どれだけ多くのガスを確保できるかではなく、どれだけ多くのガスを貯蔵施設に注入できるか」という趣旨で語った。ドイツとオランダのガス貯蔵業界も、それぞれ70%と80%の国家ガス備蓄目標の達成は難しいと見通した。
◇ 遅れてガス確保に動く欧州…アジアともLNGで競合
こうした状況で、欧州企業が遅れて冬季向けガスの確保に乗り出し、国際LNG市場での競争も激しくなっている。WSJによると、欧州の購入者は限られた物量の確保に向け、欧州企業同士はもちろんアジアの購入者とも競っている。
ただし低いガス貯蔵率が直ちに欧州のエネルギー供給不足に結びつく可能性は大きくないというのが専門家の評価だ。EU欧州委員会も、当面ガス供給を懸念すべき状況ではないとの立場である。再生可能エネルギーの使用拡大と産業用需要の減少などの影響で、ここ数年で欧州のガス消費が17%減ったためだ。さらに今冬はエルニーニョの影響で欧州の気温が平年より高いと予想される。
しかし予想より寒い冬や中東のLNG供給の混乱、再生可能エネルギーの発電量低下などが同時に発生すれば、状況が変わり得るとの警告も出ている。ルシー・ブーストGIE代表は「複合的な衝撃に直面すれば問題になる」と述べた。先月、厳冬が到来した場合には現状の準備が十分でないと判断し、オランダ政府が異例に国営エネルギー企業エネルジーベヘール・ネーデルラント(EBN)が今年と来年にガスを備蓄できるよう10億ユーロ(約1兆5700億ウォン)を支援することを決めたのも同じ文脈である。
戦争の早期終結と価格下落を見込んで冬用ガスの購入を遅らせていた欧州としては、当面のガス不足よりも、遅れてより高い価格を支払い貯蔵庫を満たさねばならない負担が増した状況である。今後、中東地域のLNG供給の正常化時期と冬季の気温が、欧州ガス価格の行方を左右する主要な変数となる見通しだ。