イラン戦争に伴うホルムズ海峡の封鎖が長期化するなか、シリアの港が新たな迂回石油輸送路として注目を集めている。地中海に面する地理的優位性を掲げるシリアは、自国を安定的な陸上石油輸送路かつホルムズ海峡の代替として売り込んでいる。
2日(現地時間)、ワシントン・ポスト(WP)は「シリアは国際制裁の解除とペルシャ湾で続く戦争を機会とする構えだ」とし、「シリアは地中海に位置するバニヤース港を通じて欧州へのアクセスが優れている点を前面に出しており、すでに複数の各国政府とエネルギー供給企業が関連事業に投資している」と報じた。
WPによると4月からイラク南部の製油施設とシリアのバニヤース港を往来するトラック輸送が始まった。イラン戦争でホルムズ海峡が事実上封鎖されると、イラクの石油輸出業者が海峡を迂回する輸送路を試行し始めたという。現在もペルシャ湾で産出された石油を積んだ約5000台の大型トラックが昼夜を分かたず砂漠を横断し地中海を目指している。
先立ってブルームバーグ通信も7月、「わずか数カ月でシリアは中東全体の重油輸出量の4分の1以上を占める国へと変貌した」とし、「シリアはイラクから来るエネルギー輸送の関門として一段と認識されつつあり、とりわけイランが影響力を行使する主要海上ルートへの依存度を下げるための原油パイプライン建設計画も推進されている」と伝えた。
バシャール・アルアサド前大統領が追放された後、シリアはホルムズ海峡を迂回する陸上輸送路を通じて経済的利益を得る方策を進めている。現在トラックに依存する輸送体制を大規模パイプラインに代替し、シリアを中東の主要石油輸出回廊へと育成する構想だ。
パイプラインの運営を担う国営シリア石油公社は、米国の石油企業シェブロンとフランスのトタルエナジーズ、シリア・カタールの投資家が参加するコンソーシアムが今月最終契約を締結する見通しだと明らかにした。カタールも本事業に関心を示しており、パイプラインをカタールまで延長する案が協議されているとされる。
米国もシリアを経由する石油輸出を積極的に支援している。7月、ドナルド・トランプ米政権は、イラク南部バスラからシリアのバニヤースまで1日最大200万バレルの原油を輸送できるシェブロン主導の新パイプライン建設を支援すると発表した。パイプラインは現在重油を積んだトラックが砂漠を横断して移動するのと類似の経路に沿って建設される予定だ。
約57億ドルが投じられる1000マイル(約1600km)に及ぶパイプライン建設には少なくとも2年半を要する見通しだ。パイプラインが完成しても、ホルムズ海峡を通過する海上輸送を完全に代替するのは難しいとの見方が支配的である。ただし長期的には、石油輸出国が輸送経路を多角化することに寄与し得るとWPは伝えた。
ホワイトハウスがシリア・イラクの高官らとともにパイプライン計画を公表した当時、トランプ大統領のシリア特使であるトム・バラックは声明で、このプロジェクトがホルムズ海峡を「後回しにしておくのに」役立つと評価した。
ただしシリアを通じた迂回輸送にもリスク要因がある。アサド政権が崩壊した後、シリア情勢は過去より安定したが、アフメド・アルシャラ大統領がなお国土全域の統制を完全には確保できていないためだ。シリアではイスラム国(IS)組織員による散発的なテロが続いているうえ、パイプラインはイランの支援を受ける民兵が影響力を行使するイラク西部地域も通過しなければならない。
米シンクタンクのドイツ・マーシャル・ファンドの客員研究員でエネルギー専門家のガブリエル・ミッチェルは「あらゆる種類のパイプラインインフラに対する物理的な保全を確保することが最大の課題になる」と指摘した。パイプラインが武装勢力の攻撃に脆弱になり得るということだ。ただしミッチェルは、この事業が今後30年を見据えた長期投資である点も強調した。
アフマド・クバジ・シリア石油公社副社長は、コンソーシアムがドローンをはじめとする先端監視技術を活用してパイプラインを防護する方策を協議しており、米国も安全保障支援に乗り出すと明らかにした。クバジは「毎日5000台のトラックがイラクからここへ来ているが、これまでセキュリティ事故は一件もなかった」と述べた。