先月26日午後1時(現地時間)、上海・浦東の繁華街。白い中型セダン1台が道端に停止した。車両に乗り込むと、空の運転席と大型タブレット画面が迎えた。シートベルトを着用すると、警告音とともに走行が始まった。
車両は走行を開始して約5秒で急停止した。車線に進入する過程で、当該車線を高速で走っている車両を先に通すためだった。その後、再び安定的に走行を再開した車両は、車間距離と制限速度を守って走り、再度すばやく減速した。4車線の交差点に進入すると同時に、直進信号の残りが2秒しかないことを感知し、安全線の後ろに停車するためだった。
無人で30分余り走行する間、センターラインを越えて逆走する車を避けて車線の端を走行したり、追い越し後に減速する車を避けて車線を変更する場面も目撃された。車両は最終目的地に到着すると、警告音とともにタブレットに走行終了を知らせる文言が表示された。
これは現代自動車の協力会社である中国の自動運転企業モメンタ(Momenta)の無人ロボタクシーである。上海・浦東とスージョウ(苏州)、ウーシー(无锡)、シェンジェン(深圳)などで無人試験運用に関する免許を取得し、現在は商用化を目指して最終の社内テストを進めている。
モメンタは高精度地図に依存しない「無(む)地図」自動運転技術を適用している。自社開発のワールドモデル(World Model・AIが現実世界の作動原理を学習して未来を予測する技術)を基盤に、車両が周辺環境をリアルタイムで認識・判断して走行する方式だ。このため、高精度地図が構築されていない新しい地域や道路でも素早く適応できるというのが会社側の説明である。
モメンタ関係者は「ロボタクシーにワールドモデルを適用して現実世界への理解度と判断力を強化した」と述べ、「ロボタクシーは警察の手信号を理解するだけでなく、工事区間や事故現場など複雑な状況にも柔軟に対応できる」と説明した。
量産車を活用してレベル4(L4)の無人走行を実現した点も際立つ特徴である。今回試乗した車両は、ロボタクシー専用に新たに開発した車ではなく、一般の量産乗用車にモメンタの自動運転システムを適用した車両だ。車体上部にライダー・センサーなどの装備が付いた一部のロボタクシーと異なり、一般の量産車と同じ外観をしているのもこのためである。モメンタは既存の量産車プラットフォームを活用してロボタクシーを迅速に拡大する戦略だ。
モメンタのロボタクシーは今後、上海汽車(SAIC)のモビリティプラットフォームであるシャンダオチューシン(享道出行)を通じてサービスされる予定である。正式サービスが始まれば運転席に遮蔽板を設置し、乗客は後部座席にのみ乗車できる。乗車可能人数が1人減ることになるが、運転席の操作を防ぐための安全措置だ。料金は未定だが、一般タクシーより競争力のある水準に設定する方針である。
走行範囲も徐々に拡大する。モメンタ関係者は「現在、浦東で運行する区間の制限速度は時速60kmだ」とし、「高速道路や高架道路を運行するには別途の資格が必要なため、資格取得を進めている」と述べた。
◇ 自動運転の拠点となった上海…ロボタクシー商用化に始動
モメンタのロボタクシーを試乗した上海・浦東は、中国の自動運転産業の巨大な実験場である。政府支援の下、ビッグテック(大手テック企業)と自動運転スタートアップが集まり、空港と金融街、観光地と住宅地がつながる実際の都市空間で無人車で乗客を運ぶ実験を続けている。
年初、上海市は「高度自動運転先導区」育成計画を発表し、浦東全域を自動運転開放区域に拡大し、2027年までにL4自動運転の旅客輸送規模を600万人以上に増やす目標を示した。その後、自動運転の開放地域を段階的に拡張し、浦東国際空港から虹橋の交通網、ディズニーランドなどを自動運転で結び、高速道路や高架道路まで段階的に開放する構想である。
この地域では実際の商用化競争も繰り広げられている。バイドゥ(百度)の「ルオボクアイパオ(萝卜快跑)」、ポニー・エーアイ(Pony.ai)の「シャオマージーシン(小马智行)」などが一部区間で実際の乗客を乗せたロボタクシーを運行中である。
◇ ビル街の退勤ラッシュでも安定走行…料金は「タクシーの半額」
同日午後6時ごろ、シャオマージーシンのロボタクシーに乗り、退勤時間帯の浦東のにぎやかなビル街から住宅街まで約4kmを走ってみた。
シャオマージーシンのウィーチャットのミニプログラムで車両を呼ぶと、5分で乗車場所にロボタクシーが到着し、アプリで「ドアロック解除」を押すとドアハンドルのロックが解けて乗車できた。座席に取り付けられたタブレットに携帯電話番号の下4桁を入力し、「走行開始」ボタンをタッチすると、案内音声とともに走行が始まった。車内には交通状況を表示するタブレットと非常停止ボタン、前席を映すカメラが設置されていた。
ほかの車両が素早く割り込んだり、左折・右折と車線変更が繰り返される状況でも、特段の問題なく目的地に到着した。下車後は別途の措置なしにロボタクシーが去った。前日に利用した一般タクシーより走行が安定的で、車内環境が快適だという印象を受けた。乗車時にアプリでドアロックを解除しなければならないことを除けば、これといった煩わしさもなかった。料金は7元(約1437ウォン)で、タクシー料金の3分の1から半分の水準だった。
ただし、まだ一般のタクシーのように誰でも容易に利用できる段階にはないように見えた。シャオマージーシンは浦東の一部区間でのみ運行しており、ルオボクアイパオも浦東とプーシーの一部地域に運行範囲が制限されている。一般的なタクシー配車アプリでは利用できず、各社のウィーチャットのミニプログラムを通じる必要がある。
それでも現地住民の関心は相当だった。ロボタクシーから降りる記者を見た中年男性らは三々五々集まり、「本当に無人自動運転車なのか」「走行感はどうか」「料金はいくらか」と相次いで質問した。通りがかった中年女性も車両をじっと見守りながら「いま実際に商用化されているのか」と尋ねた。タクシーより料金が安いと伝えると、彼らはすぐに携帯電話をいじりながら「どうやって利用できるのか」と聞いた。ロボタクシーをリスクを伴う見慣れない技術として警戒するより、実際に利用できる交通手段として受け止める様子だった。
現地業界関係者は「もはや無人ロボタクシーの運用が『可能かどうか』を問う段階は過ぎた」と述べ、「今後はどれだけ安全で安価に、より広い地域でサービスできるかがカギだ」と語った。