中国の国境と接するネパール中北部ヒマラヤ山岳地帯で26日午前に大洪水が発生したなか、行方不明者の大半はヒマラヤの聖山に向かっていた巡礼客だったことが分かった。彼らは仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の聖地であるチベットのカイラス山へ向かうためネパール国境の村に集まっていたところ、突如襲った災害に見舞われた。

27日(現地時間)ネパール観光省は前日に発生した洪水と地滑りでネパールだけで826人が行方不明になったと集計した。このうち約600人は外国人だった。ネパールメディアのカトマンズ・ポストは、行方不明者のなかにインド国籍が少なくとも177人、米国63人、オーストラリア34人、英国33人、カナダ25人が含まれると伝えた。

26日に洪水と土砂崩れで崩落する前のチベット自治区側から見たジロン港の建設現場と、ネパール側のラスワにある友誼の橋の建設の様子。/聯合ニュース

このうち相当数はチベット地域のカイラス巡礼に出るため、国境の町ラスワで待機していたとされる。ラスワは今回の洪水と地滑りで最大の被害を受けた地域である。巡礼客は26日午前にネパールのラスワガディ検問所を通過し、中国チベットのジロン(ケロン)に渡る予定だった。だが8時30分ごろ、ラスワ地域のボテコシ川一帯を洪水と地滑りが襲い、大半が連絡不能となった。

中国側のジロン県でも同様の理由で558人が行方不明になった。中国側の行方不明者のうち外国人は約260人と集計された。

カイラス山は、ひとつの峰をヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教、チベットの土着宗教であるボン(Bon)教が同時に聖地とする、稀有な場所である。ヒンドゥー教徒はこの山をシヴァ神が妻パールヴァティとともに留まる住処とみなす。仏教徒はこの山を、最高境地の喜びを象徴する仏であるデムチョク(チャクラサンヴァラ)が留まる場所とみなす。仏教的宇宙観で世界の中心にそびえる山とされる須弥山がカイラス山だと見る見解もある。ジャイナ教徒は開祖であり第一のティールタンカラ(救済者)であるリシャバナータがこの山で解脱したと信じる。ボン教はこの山を霊的な柱とする。

このため、峰の標高は海抜6638mでヒマラヤに林立する8000m級の峰々よりは低いが、いまだに頂上に到達した者はいない。中国政府は神聖性を理由にカイラス山の登山許可を出していない。

巡礼客もまた山に登る代わりに、山の周囲を歩く。山の中腹を大きく一周するこの巡礼路を「コラ」と呼ぶ。仏教徒とヒンドゥー教徒は時計回りに巡り、ボン教徒は反時計回りに巡る。コラは全長約52kmに達し、通常は3日かけて分割して歩く。巡礼客は初日に18〜20kmを歩いてディラプク寺院で宿泊し、2日目に標高5630mのドルマ・ラ峠を越える。漢拏山の山頂より約3倍近く高い地点を徒歩で通過しなければならない区間である。3日目には再び出発地のダルチェンへ戻る。彼らはコラを一周すれば罪が洗い流され、生涯で108周を満たせば解脱に至ると信じる。インドではこの巡礼全体を「カイラス・マナサロワル・ヤートラ」と呼び、人生で最も重要な霊的旅と見なす。

とりわけ今年は、新型コロナのパンデミックで2020年以降途絶えていたカイラス巡礼が満5年ぶりに再開され、巡礼客が例年より増えたとされる。ネパールは今年、インド人巡礼客2万5000人が自国を経由すると予想していた。APは専門家の話として、8月はモンスーン(雨期)で登山には適さないが、ラスワのルートに沿うカイラス巡礼路は繁忙期だと伝えた。洪水と地滑りが襲った26日朝も、ネパールと中国の国境検問所の間には巡礼客の列ができていた。インドメディアのビジネス・トゥデイは、インドのイーシャ財団が派遣した巡礼客77人がチベット側の出入国施設に滞在中に連絡が途絶えたと26日に伝えた。

専門家は、被害が集中したラスワガディからチベットのジロンを結ぶ道が、カイラスへ向かう最も安価な陸路であるため巡礼客の被害を拡大させたと述べた。巡礼旅行を主管するネパールの旅行会社のプログラムを見ると、巡礼客は大きく四つのルートのうち一つを選ぶ。インド政府が運営する二つの陸路ルート、もしくはネパールの旅行会社が販売するラスワ陸路、あるいはヘリコプターを利用するシミコット・ヒルサのルートが代表的だ。

ネパールの旅行会社ネパール・ノマドの集計によると、今回被害を受けたラスワ陸路を利用すると1人あたり2800〜3200ドル(約390万〜440万ウォン)で14日を要する。シミコットからヘリを利用するルートは4300〜4800ドル(約600万〜670万ウォン)とより高価だが、所要日数は10日余りに短縮される。これにカイラスのコラ巡礼期間にポニーとポーターを使う場合は300〜500ドル(約45万〜70万ウォン)を別途支払う必要がある。

CNNは、今回洪水と地滑りの被害を受けた地域が「世界的に有名なトレッキング地域であるランタン渓谷と、その西側にあるタマン・ヘリテージ・トレイルへ向かう重要な玄関口」だったと伝えた。続けて、今回の洪水でインド、英国のほか、米国、イタリア、ポルトガル、ウクライナ、ロシア、ベルギーの国民も行方不明になったと報じた。これらのうち相当数はカイラス巡礼ではなく、トレッキングに出て連絡が途絶えたと推定される。

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