ドナルド・トランプ米国大統領が金正恩北朝鮮国務委員長に相次いでラブコールを送っている。米朝首脳会談を外交的成果とし、北朝鮮を中国・ロシアから引き離すと同時に韓国を圧迫しようとする外交・安保・経済的利害が絡み合った動きだとの分析が出ている。

ドナルド・トランプ米大統領。/聯合ニュース

北朝鮮は20日、平壌一帯から日本海上へ短距離弾道ミサイル約10発を発射した。韓米連合演習の縮小だけで米国の対北朝鮮敵視政策が変わったとは見なせないという立場を示した後、武力示威に踏み切った。

インド・太平洋地域を管轄する米太平洋軍はこの日、声明で北朝鮮のミサイル発射を認知し同盟・パートナー国と緊密に協議しているとしつつも、「米国の人員や領土、同盟国に即時の脅威とはならない」と評価した。

北朝鮮の今回の武力示威は、トランプ大統領が金委員長に相次いで対話の手を差し伸べるなかで行われた。

トランプ大統領は前日、記者団に「自分は金正恩をよく知っている」とし「今年、金正恩に会う」と述べた。先立って韓米連合演習「乙支フリーダムシールド(UFS)」を「不適切で敵対的だ」と批判し、米国防総省に縮小を指示した。トランプ大統領は金委員長との関係が朝鮮半島を「はるかに安全にした」とも主張した。

◇ 相次ぐ戦争でも目立った成果なく…「米朝会談で外交実績を誇示」

トランプ大統領が北朝鮮の武力示威にも対話を強調する第一の理由としては外交的成果が挙げられる。アルジャジーラは、イラン戦争が終わっておらずウクライナ戦争終結の公約も履行できていない状況で、結果と関係なく金委員長との会談自体がトランプ大統領の外交的成果として活用され得ると分析した。

米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は、米朝首脳会談でシンガポール共同声明の再確認や終戦宣言といった結果が出ればノーベル平和賞まで取り沙汰され得ると展望した。平素からノーベル平和賞への期待を公然と示してきたトランプ大統領にとって、米朝首脳会談が個人的な外交実績を誇示する機会になり得るということだ。

これに関連し、一部ではホルムズ情勢が整理段階に入るなかで、トランプが徐々に北朝鮮側へ関心を移したのではないかとの観測も出ている。19日、米インターネット媒体アクシオスは米当局者らを引用し「米軍が最近数週間、毎日数百万バレルの原油を運ぶためにホルムズ海峡を出入りする海上輸送路を秘密裏に構築する作戦を展開してきた」と報じたことがある。

20日午後、慶尚北道亀尾市の河川敷野球場近くで実施された2026ウルチ訓練の重要施設統合防護訓練で、陸軍第50師団所属の将兵が訓練に臨んでいる。/聯合ニュース

◇ 中東に縛られる米国…東北アジアの危機を防ぎ、北・中・露の亀裂を狙う

第二の理由は、米軍の兵力が中東に集中している間に東北アジアで追加の危機が発生するのを防ぐと同時に、北・中・露の結束を弱めようとする安保上の計算である。ユジン・パク・ネバダ大教授はアルジャジーラに「米国には中東以外の地域で別の重大な危機が発生しないようにする明確な理由がある」と述べた。

米国が最も懸念しているのは台湾問題を巡る東北アジア地域の緊張の高まりだ。米国の研究機関では中国軍が2027年までに台湾侵攻能力を備えるとの警告が出たこともある。これに対し2026年3月時点で米情報当局は、中国指導部が2027年の侵攻を計画しておらず、中国統一に向けた固定的なタイムテーブルもないと評価したが、だからといって台湾海峡を巡る緊張が完全に解消されたわけではない。

中国は武力行使の可能性を放棄しないまま台湾周辺で軍事訓練と圧力を続けている。さらに中国国内の状況も変化した。習近平主席が年初、収賄容疑を名目上の理由として掲げ、張又侠・中央軍事委員会副主席など軍首脳部の粛清を断行し、台湾侵攻に反対していた軍部勢力が排除された。ここに足元の中国の景気減速が重なり、中国内部の不確実性が高まっている。

こうした状況で米朝対話は北・中・露の関係を揺さぶるカードになり得る。ブルッキングズ研究所は、北朝鮮がロシアに兵力と弾薬を提供し軍事・経済的支援を受けるなかで、両国関係が大きく強化されたと分析した。一方、北朝鮮を自らの影響圏に置いてきた中国も、対北影響力をロシアに奪われないために平壌との関係回復に乗り出した。

北朝鮮が中国とロシアに全面的に依存する関係ではないという点も、米国が食い込める余地だ。マイク・ポンペオ前米国務長官は2023年に刊行した回顧録『Never Give an Inch: Fighting for the America I Love(韓題:一歩も引くな)』で、2018年3月に平壌を訪れた際、金委員長が中国を牽制するには在韓米軍が必要だという趣旨で語ったと主張した。在韓米軍が消えれば中国が北朝鮮を吸収し、朝鮮半島を中国の新疆・ウイグル地域のように運営するという主張だ。

このような北・中間の微妙な関係を意識したかのように、トランプ大統領は1期の時も金委員長と一対一で会い、非核化問題などを一気に決着させようと試みた。しかし当時は金正恩との三度の会談にもかかわらず、非核化と制裁解除を巡る隔たりを埋められなかった。ハ・ヨンチュル・ワシントン大韓国学センター所長は「トランプ大統領が当時、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)など内部強硬派の制約で交渉が失敗したと判断し、2期には金委員長と直接ディールを成立させようとする可能性がある」と説明した。

習近平中国国家主席とキム・ジョンウン北朝鮮国務委員長。/聯合ニュース

◇「韓国、イラン戦争を支援せず」…対米投資を迫るシグナルも

第三に、トランプ大統領の対北宥和策は韓国を圧迫しようとする手段とも解釈される。トランプ大統領は韓国がイラン戦争の支援に乗り出していない点に言及し、「我々を助けない国まで引き続き守ることはできない」と述べた。韓国の対米投資の約束履行が遅れていることについても不満を示してきた。

ハ所長はアルジャジーラに、トランプ大統領がイラン戦争支援と対米投資の問題で韓国を圧迫しようとしている可能性があるとし、これを「ミラー外交(対抗的な応酬)」と分析した。レイチェル・ミニョン・リー・スティムソンセンター上級研究員も、連合訓練の縮小が韓国の対米投資を前倒しし、防衛費分担金引き上げの土台を整えるためのテコになり得ると述べた.

一方、韓国政府はトランプ大統領の突発的な決定に当惑を示しつつも、公の評価は控える状況だ。

趙賢外交部長官は19日、国会外交統一委員会で韓米連合訓練の縮小指示について「韓国政府はもちろん米国政府関係者も全く事前に把握していなかった」とし、政府もトランプ大統領のソーシャルメディア(SNS)を通じて関連内容を把握したと明らかにした。

また、米朝首脳会談の推進可能性は「新たな局面転換の機会」だと表現し、米側に具体的な米朝接触の現況を問い合わせたが、まだ返信を受けていないと説明した。韓国を排除した米朝対話への懸念には「韓米同盟が弱体化しないよう最善を尽くしている」と答えた。

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