会社名からして「寧徳」だ。2011年、ツェン・ユーチュン会長の故郷である中国福建省寧徳で発足した世界最大の電池企業CATLは、社名にも都市名を冠した。中国名の寧徳時代を直訳すれば「寧徳の時代」だ。大黄魚の養殖で知られた海辺の都市の運命が変わり始めた瞬間である.
寧徳は都市に空港がなく、近隣の福州空港から150㎞移動してようやく到達できる場所である。このようにインフラが相対的に不足していた都市だが、電気自動車市場が拡大しCATLが注目されるにつれて、ここへ流入する人も急速に増えた。2015年以降、CATLが本格的に事業規模を拡大すると、寧徳の各所にCATLの工場と研究施設が立ち並び、CATLに続いて素材メーカー、装置メーカー、物流企業なども寧徳に拠点を構えた。CATLが寧徳へ電池産業のエコシステムを呼び込んだ格好である.
工場が増えるにつれて雇用が生まれ、雇用を追ってよそから来た人々が寧徳に根を下ろし始めた。農業と漁業に依存してきた寧徳に若者が集まった。河南省出身の20代のAさんも昨年、故郷を離れ1300㎞以上離れた寧徳に定着した。CATLに入社したためだ。現在は会社が提供する社宅で生活している。Aさんは「寧徳で働く社員の中には、ほとんどが故郷を離れて来た若者だ」と語った.
CATLの社員が増えたスピードだけ見ても、寧徳に流入した人の規模を推し量れる。公示によると、海外支社を含むCATLの全社員数は2023年の11万人余りから昨年は18万人余りへと、2年で7万人以上を雇用した。会社関係者は「CATLに入社した世界各地の社員は毎年寧徳に滞在して研修を受ける」とも明らかにした.
「寧徳の土着」のタクシー運転手Bさんは「以前は外国人に会うことはほとんどなかったが、CATLが成功してからは出張で来る外国人を時々見かける」と述べ、「アフリカの国から来た取引先関係者を乗せたこともある」と語った。さらに「ここ数年の間に確実に都市が目に見えて発展し、若い人が目に見えて増えた」と付け加えた。CATLの幹部も「海外支社をはじめ、寧徳本社にも海外出身の社員が多い」とし「寧徳は小さな都市だが、若者と外国人の密度が相当に高い」と述べた.
実際の数値もこの流れを裏付ける。CATLをはじめ新エネルギー産業が集積した東僑経済技術開発区の常住人口は2010年の4万人未満から足元では16万人以上へと4倍超に増えた。寧徳の市街地面積も2001年の6㎢から2020年には60㎢へと10倍になった。経済規模も拡大した。寧徳市の総生産(GDP)は直近5年(2021〜2025年)の間に3151億元(約65兆ウォン)から4252億元(約87兆ウォン)へと急増した。昨年時点で製造業などを含む第2次産業が全GDPに占める比率は54.6%に達した。大黄魚を前面に据えた農漁村の都市が、製造業中心の産業都市へと変貌したのである.
「寧徳移住者」が増えるにつれ、会社が配慮すべき事項も変わった。社員が寧徳に定着し家庭を築けるよう、住宅と生活環境を支援する方向へと広がった。CATLはよそから来た社員のために大規模な社宅を運営している。無料の寮だけでなく、コア人材専用アパート、福利厚生住宅、生産職向けの共働き夫婦寮など、ニーズに応じて細分化した。実際に寧徳市内を回ると、CATLの名を冠したマンション群を難なく見つけられた。生産拠点近隣では、生産職の採用と住居を兼ねたアパートも大規模に建設された.
定住者が増えると教育インフラも追随した。東僑経済技術開発区は当初、居住・生活の性格が濃くない工場中心の産業団地だったが、住宅街と商業圏が形成され「16万人が住む都市」へと様変わりし、その中には現在、小学校が7校、中学校が5校ある。CATLも社員の子どもの教育のため、ここでの小学校建設を支援した。産業団地が子育てのできる都市になったのである.
CATLはこれに加え、未婚社員の恋愛と結婚まで支援する。会社が運営する社内ミーティングプログラム「鵲橋会」を通じ、恋愛を希望する社員同士の出会いを会社が直接仲介する形だ。数十組の社内カップルが同じ日同じ時刻に結婚式を挙げる珍しい光景も広がる。「スイート・デー(Sweet Day)」という名の合同結婚式である。昨年のスイート・デーには数十組の社内新婚夫婦が本社キャンパスで合同結婚式を挙げ、計3500人余りの来賓が出席して新婚夫婦を祝福した.
20代の社員Aさんは「CATLは社員の半分が20代というほど若い会社だが、寧徳で会社の外に出て同世代に会う機会は多くない事情のためだ」と述べ、「会社は社内恋愛による生産性低下を懸念するより、社員が家庭を築き寧徳に定着することをより重視する雰囲気だ」と語った.