ドナルド・トランプ米政権がキューバの実用主義的な次期指導者を物色するなか、ラウル・カストロの孫であるラウル・ロドリゲス・カストロが候補として浮上している。ただしロドリゲスがキューバ国内で十分な支持を確保していないだけに、実際に次期指導者になり得るかは不透明だとの評価が出ている。
最近、トランプ政権は1月に米軍がニコラス・マドゥロ当時ベネズエラ大統領を生け捕りにした後、暫定大統領となったデルシ・ロドリゲスと同類の人物をキューバで探している。先立ってニューヨーク・タイムズ(NYT)は、トランプ政権がキューバ内で米国と協力できる実用主義的な人物を見つけるよう情報機関に指示したと報じた。
米国が受け入れ可能なキューバの次期指導者候補の一人としてはラウル・ロドリゲスが取り沙汰されている。42歳のロドリゲスは、ラウル・カストロの長女デボラ・カストロ・エスピンと故ルイス・アルベルト・ロドリゲス・ロペス=カジェハ将軍との間に生まれた。10年前、ラウル・カストロがキューバ大統領としてフランス・パリを国賓訪問した当時、キューバ内務省所属の大佐としてその警護を担当した。このほかに公式な公職を務めたことはない。
11日(現地時間)のNYTによると、米側ではロドリゲスが資本主義的な思考に比較的開かれた人物だとの評価が出ている。高価なデザイナー衣料を着た姿がたびたび捉えられてきたロドリゲスは、若い頃コンサートでパーティーを楽しんだり有名歌手らと交遊し、ボートで時間を過ごす様子などで知られている。米・キューバ交渉の状況に通じるある米国人は、こうした物質的豊かさへの嗜好が資本主義的思考に開かれているサインとして受け止められているとNYTに語った。
かつて対外的にはほとんど知られていなかったロドリゲスは、今年に入り国際的な関心を集めている。年初から進んだキューバと米国の交渉で中核人物として浮上したためだ。キューバがトランプ政権の制裁を終わらせるため米国と秘密交渉を始めて以降、ロドリゲスはジョン・ラトクリフ米中央情報局(CIA)局長とマルコ・ルビオ米国務長官にそれぞれ会った。
民主党所属の元バーモント州選出上院議員パトリック・レイヒの外交政策補佐官を務め、ロドリゲスと数回会ったティム・リッシャーは「10年前まではカストロ大統領の警護員だと紹介されていた人物が、どんな理由でか、どんな過程を経たのかは分からないが、今ではそれよりはるかに重要な人物になった」と述べ、「彼はキューバ政府がどのように作動するかをよく示す人物だ」と語った。
ロドリゲス自身も次期指導者になろうとする野心を持っているとされる。NYTによると、ロドリゲスは自分と会話を交わした人々に、究極的にはキューバの次期大統領になる意思を隠さなかったという。
しかし、実際に次期指導者になるまでにはいくつもの障壁が存在する。まずキューバ政府内ではフィデル・カストロの男系の孫であるオスカル・ペレスオリバ・フラガが有力な後継者として取り沙汰されているという。ペレスオリバ・フラガは最近、国営テレビや政府発表に頻繁に登場しており、異例にも国際メディアのインタビューにも応じた。
何よりロドリゲスがキューバ国内で十分な支持基盤を備えているかは不明だ。NYTは11日、「それ(目標)を実現できるほどの内部支持を確保しているかは不明だ」と伝えた。
ロドリゲスのぜいたくな生活様式も弱点として挙げられる。深刻な食料・医薬品不足や停電で国民が苦しむ状況で、祖父のBMWに乗ってハバナを乗り回すといった姿が否定的な印象を与えるとして不快感を示した人々もいたとNYTは伝えた。英ガーディアンがキューバ革命広場で出会ったキューバ人のエミリオ・アビラは、ロドリゲスが革命の精神に適う人物かとの問いに「よく分からない」と答えたという。
ここに、ロドリゲスが自身の強大な影響力を使ってキューバ人を国外に逃がし、違法物品をキューバに持ち込む大規模な密輸組織を庇護したとの疑惑まで提起された。NYTによると、ロドリゲスは盗難クレジットカードで購入した物品をキューバに持ち込むのを手助けし、賄賂として高級品を受け取ったうえ、指名手配中の犯罪者がキューバで自由に動き回れるよう許容したとの疑惑を受けている。
キューバ政府は関連疑惑を強く否定している。カルロス・フェルナンデス・デ・コシオ・キューバ外務次官は、ロドリゲスと密輸組織の連携疑惑を「中傷」だと一蹴した。