セカンドハウス課税などいわゆる「富裕層増税」法案をめぐってニューヨークの資産家と神経戦を繰り広げてきたゾラン・マムダニ米ニューヨーク市長が、今回は流通大手と対峙した。アマゾンなど大手流通・配送企業に下請けを通じた配送ではなく、配送労働者を直接雇用するよう義務づける法案に力を添えたためである。
10日(現地時間)のニューヨーク・タイムズ(NYT)、ニューヨーク・ポストなどによると、マムダニ市長はこの日、ニューヨーク市議会に係留中の「配送労働者保護法(Delivery Protection Act)」を支持すると表明した。この法案は社会主義傾向のティファニー・カバンニューヨーク市議が発議したもので、アマゾンやフェデックスなど流通・配送企業のいわゆる「ラストマイル(last-mile)」配送業務を規制することが骨子だ。
これまで大手流通・配送企業は、自社の流通網で顧客に商品を届ける最終段階の配送業務を下請け企業に委ねてきた。これにより、配送労働者を直接雇用した場合に負担すべき最低賃金や福利厚生など各種雇用関連規制の適用を回避してきたとされる。しかし法案が施行されれば、該当企業は下請け企業に依存する代わりに配送労働者を直接雇用しなければならない。
マムダニ市長は声明で「アマゾンのような企業は、搾取的な下請けシステムを通じて責任を回避しながら、数十億ドル規模のビジネスモデルを構築している」と批判した。続けて、同法案を「配送労働者を保護し、配送施設が運営される地域社会を守り、労働者の労働で利益を得る企業が自社の事業慣行がもたらす結果に責任を負うようにする常識的な規制」と評価した。
企業は即座に反発した。法案が施行されれば配送コストが上昇し、配送速度も遅くなり得るという主張だ。アマゾンは新たな規制を避けてニューヨーク市外へ配送拠点を移す可能性を示し、その場合ニューヨーク地域で数千の雇用が消失し得ると警告した。
現在アマゾンはニューヨーク市で40カ所以上の配送サービスパートナーと連携しており、これらの企業には5000人以上が勤務している。アマゾン広報担当のケリー・ナンテルはビジネス・インサイダーに対し「現在の法案どおりであれば、アマゾンの地域雇用に対する約束を直接的に損なう」と述べ、「顧客に商品を配送する中小事業者を脅かし、これら企業の従業員5000人以上の雇用を危うくし、結局は配送業務をニューヨーク市外へ移転する案を検討せざるを得なくする」と明らかにした。
消費者の負担も増え得るとの分析が出ている。コンサルティング企業AKRFの研究によれば、法案が可決される場合、配送コストは小包1個当たり最大5.20ドル増加し、ニューヨークの世帯は年間最大664ドルを追加負担する可能性があると推計した。AKRFは、流通・配送企業がニューヨーク市外に配送拠点を移す場合、配送速度が遅くなりコスト負担も大きくなり得ると分析した。
配送業務を担う下請け企業も法案可決を歓迎しない雰囲気だ。アマゾンの配送サービスパートナー企業を運営するルディ・カサレスは、現在約130人の従業員を直接雇用し福利厚生を提供しているとし、法案が可決されれば事業自体の継続が難しくなると主張した。ルディ・カサレスは「事業を畳まざるを得ない。これ以上、我々のやることがなくなるからだ」と語った。
一方、労働界は配送労働者保護法に賛成し、法案の可決を促している。米国最大の労働組合の一つであるチームスターズは、この法案が可決されマムダニ市長が署名すれば、ニューヨークが米国でラストマイル配送業務を規制する初の都市になり得ると明らかにした。トーマス・ジェスアルディ・チームスターズ共同委員会16委員長は「ニューヨーク5つの行政区の政治が新たな時代に入った」と述べ、「いまや労働者と労働者の権益を代弁する人々がハンドルを握っている」と語った。
今回の法案をめぐる衝突は、マムダニ市長の親労働・富裕層増税政策をめぐる階層間の対立を一層浮き彫りにする可能性がある。マムダニ市長は就任後、家賃凍結や富裕層のセカンドハウス課税などを推進し、資産家・企業側と相次いで衝突してきた。
エリック・ブラン・ラトガース大学労働学科助教授は、この法案が「闘いを仕掛けるには非常に良い案件」だと評価した。エリック・ブランは、今回の論争が「若い黒人・有色人種の労働階級のニューヨーク市民」と「アマゾンの億万長者創業者ジェフ・ベゾス」が対峙する構図を形作ると分析した。