英国下院議員を選ぶ補欠選挙に「ゴミ箱」が出馬した。支持率20%を得て支持者の間で人気を集めている。
政治専門メディアのザ・ヒルは6日(現地時間)、銀色のゴミ箱の仮面に黒いマントをまとったコメディアンが「カウント・ビンフェイス(Count Binface・ゴミ箱顔の伯爵)」という名前で投票用紙に載ったと伝えた。相手は英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆるブレグジットを主導した大物政治家ナイジェル・ファラージである。賄賂容疑を受けるファラージが「自分を直接審判してほしい」として自発的に開いた補欠選挙が、ゴミ箱と争う風刺劇に変わったとの評価が出ている。
13日、イングランド東部の海岸都市クラクトン(Clacton-on-Sea)では下院議員1人を改めて選ぶ補欠選挙が行われる。現地調査機関サーベーションが先月16日から24日までクラクトン住民502人を調査した結果、支持候補を決めた回答者のうち73%がファラージを、20%がカウント・ビンフェイスを選んだ。ファラージとビンフェイスの2人だけで選ばせると、差は69%対31%に縮む。当選可能性はファラージが圧倒的に高い。それでも有権者5人に1人が保守党や労働党といった既存政党の候補ではなくゴミ箱コメディアンを選んだことで、今回の選挙は英国政界全体が注目する見ものとなった。
ファラージは英国のEU離脱運動を主導して名を上げた極右性向の政治家である。ファラージが率いる右派政党リフォームUKは反移民主義を掲げ、既存の保守党を脅かしながら規模を拡大した。ファラージは2024年総選挙当時、このクラクトンに出馬して初めて下院議員に当選した。
しかし当選直後から、総選挙直前に暗号資産事業家から受けた500万ポンド(約96億ウォン)相当の贈り物を適切に申告しなかったという疑惑で議会倫理機関の調査を受けた。これは調査の結果、重大な違反が認められれば停職処分まであり得る事案である。ファラージは結果を待つ代わりに先月8日、議員職を自ら手放した。そして同じ選挙区で直ちに補欠選挙に再出馬した。ファラージは「議会ではなくクラクトン住民に直接審判を受ける」として今回の補欠選挙を「国民対既得権の対決」と位置づけた。疑惑については「贈り物は警護費名目だった」とし「規定には違反していない」と主張した。
与党労働党と保守党、自由民主党は、ファラージが自身の疑惑を覆い隠すために不必要な選挙を行ったと批判している。これらを含む英国の主要政党は、ファラージに反対する意味で今回の補欠選挙に候補を擁立しなかった。主要政党が抜けた空白には少数政党と無所属、風刺候補が殺到した。
今回のクラクトン補欠選挙には計34人が出馬し、英国議会選挙史上最多出馬者記録を更新した。従来の記録は2008年の補欠選挙当時の26人だった。英国では選挙区の有権者10人の推薦と供託金500ポンド(約96万ウォン)さえ納めれば下院議員候補として立候補できる。候補者が当該選挙区に居住する必要もない。名簿を見ると、俳優で右派活動家のローレンス・フォックスを含め、ビンフェイスや「吠えるロード・ホープ」といった政治風刺型候補がずらりと並ぶ。もっとも、メディア露出と支持率の基準で候補群を絞ると、ファラージの対抗はビンフェイス1人に収れんする。
ビンフェイスを日本語に移すと「ゴミ箱顔の伯爵」に近い。ビンフェイスは選挙や遊説の現場に実際のゴミ箱の仮面を被って現れる。ゴミ箱の中の人物は英国の著名なコメディ作家ジョナソン・デービッド・ハーヴィである。ハーヴィはビンフェイスを「外宇宙の惑星から来た銀河系の戦士」と紹介し、2019年からテリーザ・メイ、ボリス・ジョンソン、リシ・スナクといった著名首相が出馬した選挙区に連続して出馬してきた。当選よりも、著名政治家と同じ開票舞台に立って政治家の権威を笑いの種にすることに目的を置く。ウェストミンスター選挙での最高成績は308票だった。2カ月前のメイカーフィールド地域の補欠選挙では95票にとどまった。
ビンフェイスが今回の選挙で掲げた公約を見ると、冗談とファラージへの嘲笑が半々に混ざっている。例えばアイスクリームの価格を99ペンス以下に固定し、冥王星の惑星地位回復を国民投票に付すという公約は冗談に近い。一方、議員職を辞任した人物が自身の辞任で行われる補欠選挙に再出馬できないようにする法律を制定し、「暗号資産億万長者から500万ポンドの贈り物を受け取らない」という公約は、ファラージを正面から狙った嘲笑に近い。ビンフェイスはファラージよりクラクトンに長く滞在するとの約束も付け加えた。
主要政党候補が消えた選挙で、有権者は最も有名な風刺候補であるビンフェイスを支持する形でファラージへの反感を示している。調査機関イプソスがファラージ辞任直後の先月8〜9日、英国全土の成人に2人のうちどちらが勝つことを望むかを尋ねたところ、ビンフェイスが33%でファラージ(21%)を上回った。英国人全体の選好度を問う調査であり実際の情勢とは異なるが、ファラージに向けた全国的な反感の大きさを示すものだと専門家は評価した。
ただしクラクトン住民の間では、ファラージ審判という理由で住宅や医療といったクラクトンの地域懸案が丸ごと埋もれたという反対意見も出た。嘲笑の目的を帯びず真剣に出馬した無所属候補は「選挙が『ファラージ対ゴミ箱』の見ものとして消費され、地域問題が埋没した」と反発した。