ジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)JPモルガン・チェース最高経営責任者(CEO)が、人工知能(AI)によるサイバー攻撃と基幹インフラのリスクに共同で対応するため、金融と情報技術(IT)、エネルギー、通信など主要産業を網羅する企業連合の拡大を進めていることが分かった。企業のAI導入が加速するなか、AIリスク管理も個別企業の枠を超え、基幹インフラ産業全体での共同対応体制へ広がる様相だ。
5日(現地時間)ロイターは、事情に詳しい複数の関係者を引用し、ダイモンCEOが米国の大手銀行と主要な地域銀行、IT企業のCEOに直接連絡し、連合への参加を要請していると報じた。
今回の構想は、JPモルガンが共同設立した「基幹インフラ連合(Alliance for Critical Infrastructure・ACI)」を拡大改編する方式で進める。関係者によれば、先月から始まった連合参加の要請は、金融サービスやエネルギー、上水道、電力、通信、航空、鉄道など基幹インフラ分野の40余社へと拡大した。ACIは今月中、参加を希望する企業と協力策を協議する会議(schedule calls)を進めていると伝わる。
ACIはJPモルガンをはじめ、マスターカード、バークシャー・ハサウェイ・エナジーなどが共同設立した団体である。サイバー攻撃や物理的脅威、地政学的リスクなどから国家の基幹インフラのレジリエンスを高めるべく、産業横断の情報共有と共同対応体制を構築することを目標に活動してきた。今回はAIリスクへの対応機能を強化するため、組織を再整備している。とりわけ今年年末までに新体制を本格稼働させることがACIの目標だ。
今回の連合は、AIの活用状況と潜在的リスク、必要な安全装置に関する共通基準を策定し、関連課題をトランプ政権とともに協議して対応策を模索する予定だ。最近、米国ミネソタ州などで上水道施設を狙ったサイバー攻撃が発生し、産業間の情報共有の必要性も高まったと関係者らは述べた。
ダイモンCEOは声明で「ACIは数年前からAIを優先課題に据え、基幹インフラ企業が共に協力するよう取り組んできた」とし「この重要な作業を支援できることを誇りに思う」と述べた。CNBCのインタビューでも「政府と業界が相互に助言を交わす役割を担うことになる」と語った。
AIが金融と基幹インフラ産業全般に急速に拡大するなか、規制当局と業界では、AIがサイバー攻撃を高度化し、金融システムと国家の基幹インフラに新たな脆弱性を生みうるとの懸念が強まっている。とりわけ個別企業レベルの防御強化だけでは対応が難しいとの認識も広がっている。米国政府は先月、AI開発社と基幹インフラ運営企業、連邦機関が高性能AIモデルで見つかった脆弱性を共有し、対応策を調整する「ゴールド・イーグル(Gold Eagle)」プロジェクトを発足させるなど、官民連携を強化している。
先月、ダイモンCEOはAnthropicのAIモデル「Mythos」が招きうるリスクに言及し、高性能AIへのアクセス統制と安全装置の必要性を強調した。当時、ダイモンCEOは高性能AIを無制限に提供することについて「個人に弾道ミサイルを握らせるのと同じだ」と警告した。