ドナルド・トランプ米国大統領が関税と制裁、ビザを相次いで持ち出し、ブラジル大選の核心争点に直接的な影響力を行使している。

トランプ大統領は昨年、ブラジル産製品に最高50%の関税を課し、自身に近い強硬右派性向のジャイル・ボルソナロ前ブラジル大統領を法廷に立たせたブラジルの最高裁判事を制裁名簿に載せた。4日には駐米ブラジル大使のビザまで取り消した。ここに父親に代わって大選に出馬したボルソナロの長男フラビオを公開支持し、10月に実施されるブラジル大選の第三の主役に浮上した。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は5日(現地時間)、今年のブラジル大選がルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ現大統領とフラビオの二者対決にトランプまで割って入り、事実上の三者対決に変わったと伝えた。ブラジル大選の公式選挙運動は16日に始まる。

ブラジル大統領選候補のフラビウ・ボルソナロ(中央)が2026年8月5日水曜、ブラジルのブラジリアで開いた自身の陣営発表イベントで、妻のフェルナンダ・ボルソナロ(左)、副大統領候補のアルフレド・ガスパル(右)と記念撮影に臨んだ。/聯合ニュース

フラビオ(45)は父ジャイルに代わって今回の大選に臨んだ。父ジャイルは2019年から2022年までブラジルを率いた強硬右派の大統領である。政治路線から話法までトランプに酷似し「ブラジルのトランプ」と呼ばれた。しかし2022年の大選でルーラに敗れ、不正選挙を主張して電子投票システムの監査を試みる中、軍と国家機関を動員して選挙結果を覆そうとした疑いで起訴された。その後、懲役27年の判決を受け、現在は自宅に収監中である。

父が出馬資格を失うと、上院議員だった長男フラビオは支持層と政治組織をそのまま受け継ぎ、自ら大選出馬を宣言した。相手は80代で4期目に挑むルーラだ。1回目の投票は10月4日に行い、過半得票者がいなければ同月25日に決選投票に進む。

先にトランプは父ジャイルが法廷に立つと、これを「政治的迫害」かつ「魔女狩り」と呼び、ブラジルに他国より厳しい関税を課した。昨年7月、トランプ政権はブラジル産一部製品に既存の10%一般関税の上に40%を上乗せし、最高関税を50%まで引き上げた。当時の基準で米国がどの国にも課していない最高税率であった。ホワイトハウスは大統領令で高率関税賦課の理由を、貿易赤字や自国産業保護ではなく「ジャイルの裁判とブラジル最高裁による米国ソーシャルメディア企業の規制」と記した。

米国はブラジルとの貿易で損失を出す国ではない。米通商代表部(USTR)の集計によると、米国は昨年ブラジルとの財貿易で144億ドル(約2兆0560億円)の黒字を計上した。高額の通商関税を課す名分がないにもかかわらず、最も高い税率を他国の刑事裁判を名分に持ち出した前例のない措置であった。

ボルソナロ一族はトランプ政権が打ち出した高額関税措置を歓迎した。次男エドゥアルドは昨年、米国に渡り、トランプ政権と米保守陣営を相手に父の救済活動を展開した。エドゥアルドは米国が課した高額関税について「ブラジル司法を正す苦い薬」だと擁護した。これとは別に、関税引き上げをめぐり自分が「直接導き出した成果」だと主張した。長男フラビオも5月に米国でトランプ大統領や高位当局者らと面談した。

しかしこの50%関税は長続きしなかった。米連邦最高裁は2月、トランプが関税の根拠とした国際非常経済権限法(IEEPA)が大統領に関税賦課権限を与えないとして、6対3で無効判断を下した。トランプ政権は退く代わりに法的根拠を変えた。USTRは先月15日、ブラジルだけを個別に狙い、デジタル貿易規制と電子決済、エタノール市場、知的財産権の問題を掲げて通商法301条で25%関税を新設した。続いて24日には強制労働の輸入禁止を履行していないという理由で12.5%の関税を追加し、一部品目の税率が37.5%に跳ね上がった。ブラジル政府の集計によると、新関税は対米輸出額の23.1%に適用される。

ルーラはこの隙を突いた。ルーラは米国がブラジルにだけ課した関税を通商紛争ではなく「主権侵害」と規定した。続けてボルソナロ一族を「自分の家族を救うために祖国の企業と労働者を犠牲にした偽の愛国者」と攻撃した。これまで物価と治安に集中していたブラジル大選の争点も国家主権問題へと移った。ロイターは5日、現地の世論調査結果として、回答者の47%が「ボルソナロ一族が米国の関税を招いた」というルーラ側の主張に同意したと伝えた。42%は「米国の関税のせいでルーラ側に心が傾いた」と答えた。

昨年トランプ発の通商関税を歓迎していたボルソナロ陣営は、今年は米国に関税適用の延期を要請した。フラビオは先月6日、米通商代表部(USTR)に意見書を提出し「米国がブラジル産製品に新たに課す関税を180日遅らせてほしい」と求めた。ブラジルの現地メディアは、フラビオがひとまず米国の新関税を一時停止しておき、自らが大統領になればトランプ政権と再交渉して関税自体を撤廃または引き下げるという政治的計算が働いたものとみられると伝えた。しかし米国はフラビオの要請に応じなかった。最大37.5%に達する新関税は先月31日に公式に発効した。

新関税が発効した中でも大選の勝敗は依然として一方の優勢を示しにくいほど拮抗し、僅差となっている。ブラジルの世論調査会社クアエステが先月31日から今月3日まで有権者2004人を調査し5日に公表した結果によると、決選投票を仮定した支持率はルーラ44%、フラビオ39%だ。先月15日の調査(45%対37%)と比べると、3週間で格差は8ポイントから5ポイントに縮まった。父ジャイルに従っていた強硬右派にとって、トランプの公開支持は依然として政治的な保証書の役割を果たしていると専門家は評価した。ブラジル大選でのトランプの存在感は、核心支持層をつなぎ留める資産であると同時に中道層の拡大を阻む重荷として作用するという意味に解される。

米国は、ルーラが率いるブラジルを南米で自国の影響力を揺るがす国と見ている。アルゼンチンをはじめとする南米諸国がここ数年の間に相次いで右派政権へと回帰し、ブラジルはこの地域に残る最後の大規模な左派政権となった。米国はブラジルが新興国協議体ブリックス(BRICS)を主導し中国に接近する流れを、自国の裏庭で起きる挑戦と受け止めているとWSJは伝えた。キューバは1959年にフィデル・カストロが革命で政権を握った後、旧ソ連側に付いた。その後、米国は今に至るまで目前に敵対国家を抱えることになった。

ハファエウ・コルテス(ブラジル・サンパウロのコンサルティング会社テンデンシアスの政治学者)はWSJに「ブラジルは米国の外交政策の目の上のたんこぶであり、頭痛の種になった」と述べ、「2026年、ブラジルは米国の政策決定者にとって1959年のキューバのような存在になる危険がある」と語った。

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