米国とイランの戦争に直接参加しない方針だったサウジアラビアが、戦争勃発から6カ月でイラクの親イラン民兵を空爆し、その背景に関心が集まっている。サウジは自国の石油施設を攻撃した勢力への限定的な報復だと強調したが、実質的には米国主導の対イラン戦争に初めて公開で参戦したとの評価が出ている。
29日(現地時間)、ニューヨーク・タイムズ(NYT)、CNNなど主要海外メディアによると、サウジ国防省は米軍とともにイラクの親イラン民兵施設を空爆したと明らかにした。サウジ政府は、イラク民兵が今週、自国の石油施設を攻撃したため報復に乗り出したと説明した。
サウジは今回の空爆について、米・イラン戦争に本格的に加わったのではなく、自衛権の範囲での限定的対応だと強調した。トゥルキ・アルマルキサウジ国防省報道官は「サウジは緊張がさらに高まることを望まない」としつつも、「いかなる攻撃にも必ず対応する」と述べた。アルマルキ報道官は、受けた攻撃に応じて相手に対応せよという趣旨のイスラム教典コーランの一節も引用した。
サウジと米国の攻撃直後、ドナルド・トランプ米国大統領とハーリド・ビン・サルマーンサウジアラビア国防相兼王子が会談したとの報も伝わった。ビン・サルマーン皇太子は、イラク空爆がサウジの緊張激化の意図を示すものではなく、必要なら自ら防衛する用意があるという点を伝えたとされる。
◇「消極姿勢がむしろ仇」…サウジの態度が変わった理由
専門家は、サウジが軍事行動を回避し続ければ、敵対勢力に攻撃を黙認する姿勢と受け取られかねないと懸念し、公開の報復を決めたと分析した。
アブドルアジーズ・アルガシアン湾岸国際フォーラム上級研究員は、サウジが戦争に参加しないとする姿勢が「自国への攻撃を受け入れるものと誤解された」と説明した。続けて、サウジが今回の空爆を通じて敵対勢力に「サウジを攻撃すれば代償を伴う」というメッセージを送ろうとしていると分析した。
ハサン・アルハサン国際戦略研究所(IISS)上級研究員は、今回の空爆がイランへの警告でもあると説明した。アルハサン上級研究員は「イランがサウジに対する攻撃の度合いを高めれば、サウジが米国とより緊密に手を組み、戦争参加を拡大し得るというメッセージだ」と述べた。
サウジは2月、米国とイスラエルがイランを攻撃した後に始まった戦争への直接参加を避けてきた。長らくイランと敵対関係にあったサウジにとって、イランの国力が弱まることは有利になり得るが、戦争が中東全域に拡大すればサウジも大きな被害を受け得るためだ。
サウジが戦争を警戒してきた背景には経済的な理由がある。ムハンマド・ビン・サルマーンサウジ皇太子は、石油に依存する経済構造を改め、サウジを観光・ビジネス拠点に育てる「ビジョン2030」を推進している。しかし戦争が長期化し、観光と海外投資誘致に支障が生じた。政府財政の要である原油輸出も制約を受け、経済的負担が増している。
サウジとドナルド・トランプ米国政権の関係も影響した。中東の安全保障問題とイランへの対処をめぐり、両国の意見の隔たりが大きくなった。サウジはここ数年、イランの脅威を和らげるため関係改善を進めてきた。軍事的衝突よりも外交でイランを管理する方が現実的だと判断したためだ。
しかし米・イラン戦争の勃発で、サウジの外交的努力は頓挫した。イランは米国の攻撃への報復として、サウジをはじめ米軍基地があるペルシャ湾沿岸諸国に数千発のミサイルとドローンを発射した。
今月に入って、イランの支援を受けるイエメンのフーシ派反政府武装勢力もサウジを圧迫している。フーシ派はサウジ領内で発生した複数の攻撃の背後にいると名乗り出て、紅海でサウジの油槽船を封鎖すると宣言した。
サウジはこれまでイランを相手に秘密裏に軍事作戦を展開してきたとされる。だが海外メディアは、今回の米国・サウジ合同空爆は、サウジが米国の戦争に直接参加した事実を公に認めた初の事例と評価した。サウジがイラクの武装勢力を攻撃したと明らかにしたのも初めてだ。