日本の半導体復活を牽引する前進基地と呼ばれた九州が、10年ぶりに再び襲った大地震に揺れている。
28日午後、マグニチュード7.1の地震が熊本を襲うと、台湾TSMCが日本に設けた半導体工場やソニーのカメラ用半導体工場、半導体装置を製造する東京エレクトロンの工場、ホンダとトヨタの事業所が一斉に従業員を避難させるか生産を止めた。工場の外では高速道路が寸断され、鉄道と航空便がすべて止まった。専門家は今回の地震で、半導体と自動車の生産能力を一地域に集積した日本の産業戦略が試練に立たされたと評価した。
29日、日本気象庁は前日午後4時27分に熊本県の地下10kmで発生したマグニチュード7.1の地震に「令和8年熊本地震」という名称を付けた。気象庁が地震に名称を付けるのは2024年1月の能登半島地震以来である。今回の震源は2016年の熊本地震の震源から南西へ約20km離れた地点で、気象庁は「二つの地震が関連しているかはまだ分からない」と明らかにした.
九州には半導体から自動車まで日本の主力産業の工場が集積している。1967年に三菱電機が熊本に半導体工場を建てた後、関連工場が相次いで進出し、この地域は「シリコンアイランド」と呼ばれた。その後、日本の半導体産業が低迷しシリコンアイランドの名声も色あせたが、2021年に台湾TSMCが熊本に子会社JASMを設立し、再び名声が蘇り始めた。JASMは他社が設計した半導体を受託製造するファウンドリー工場である。
近隣にはソニーや東京エレクトロン、トヨタなど日本を代表する企業がクラスター(産業団地)を形成している。ソニーはこの一帯で、カメラに搭載され光を電気信号に変換するイメージセンサーを製造する。東京エレクトロンは半導体を生産する際に用いる装置を製造する。日本の内閣官房が5月に示した九州産業クラスター計画の素案によれば、熊本一帯で生産される半導体は金額ベースで日本の総生産額の約半分を占めることが示された。
これらの工場は今回の地震後、一斉に停止した。もっとも停止した工場の中で建物が倒壊した場所はなかった。日本は大地震でも建物が倒壊しないよう耐震設計を法律で義務づけている。1981年6月から適用した、いわゆる「新耐震基準」は震度6強から7に至る地震でも建物が崩壊しない水準を求める。
10年前の熊本地震後、国土交通省が都心部を全数調査した結果、1981年以前に建てた木造住宅は759棟のうち214棟(28%)が倒壊した一方、その後に建てた住宅は1196棟のうち83棟(7%)の倒壊にとどまった。当時倒壊した鉄筋コンクリート建物10棟はすべて旧基準で建てられた建物だった。半導体工場は微細な揺れでも生産が狂う。このため法定基準より厳格な耐震設計を適用することもある。
JASMとソニーは地震発生直後に従業員を避難させた。東京エレクトロン九州は29日、安全点検を理由に稼働を停止した。印刷・電子材料企業のトッパンと富士フイルム九州も操業を止めた。ホンダは熊本の二輪車工場を、トヨタは九州の3工場の稼働を中断した。
建物とは異なり、物流と水道、電力を網羅する製造関連インフラは地震に耐えられなかった。日本の国土交通省は、この一帯のクラスターを結ぶ九州自動車道と南九州自動車道が、地震後の安全点検の観点から一部区間で通行規制されたと発表した。JR九州は九州新幹線を29日の始発から全区間運休した。拠点空港である阿蘇くまもと空港でも、地震により滑走路点検に入ったことで航空便が止まった。熊本県の17市町では約14万戸が断水し、九州電力送配電は4万8000戸が停電したと明らかにした。
九州には現在、半導体関連の人材と既存の装置・部品の協力企業が集中している。豊富な工業用水、港湾と空港へのアクセス、中央・地方政府の補助金もこの地域に集まる。専門家は、工場と協力企業が同じ電力網と用水、同じ高速道路と空港に依存する現体制は、広域地震が来れば複数の生産ラインが同時に止まる致命的な弱点を抱えると指摘した。
10年前の2016年4月14日に発生した熊本地震当時、ソニー熊本工場は復旧に1カ月以上を要した。10年前の地震でソニーは建物の高層部と、粉じんを除去した清浄作業室であるクリーンルーム、装置が損傷した。ソニーは半導体の状態を測る計測工程を地震後ほぼ1カ月が経過した5月9日にようやく再開した。組立工程は5月17日、ウェハーに回路を刻むウェーハ工程は5月21日から順次稼働した。部品を供給する協力企業が複雑に絡む自動車業界は、当時資材調達も滞り、再稼働に3カ月を超える時間がかかった。ホンダ熊本工場の場合、4カ月以上が過ぎた8月22日にようやく正常生産を取り戻した。
一部では、その後シリコンアイランド一帯の復旧作業が遅れれば、世界の半導体業界にも支障が生じ得るとの見方が出ている。今回被害を受けた東京エレクトロン熊本工場は、世界の半導体生産で代替が難しい技術を保有する。半導体は円形のシリコン基板であるウェーハに回路を刻んで作るが、回路を刻むには感光性の薬品を基板に均一に塗布し光を当て、その薬品を洗い流さねばならない。東京エレクトロンはこの作業を行うコーター・デベロッパーという装置市場で世界シェア90%を占める。
東京エレクトロンは、熊本内の合志・大津の二つの事業所の建物と設備で重大な被害は確認していないと明らかにしつつも、29日は稼働を止め安全点検に入った。
地震後、JASM第2工場をはじめとする九州地域の新規半導体投資のスケジュールには、いまだ変化は確認されていない。TSMCは28日、ロイターに送った電子メール声明で「地震後に構造物の点検を終え、建物が安全であることを確認した」とし、「精密点検と影響評価は引き続き進行中だ」と明らかにした。