世界最大の高級ブランドグループを率いながらも報道の前にはめったに姿を見せなかったベルナール・アルノーLVMH会長が世論戦の前面に出た。
フランスの有力日刊紙ルモンドが6部作の企画記事でアルノーと5人の子どもの承継構図を掘り下げると、アルノーは3ページに及ぶ長文の反論書簡で応酬した。27日(現地時間)には生涯使ってこなかった個人X(旧ツイッター)アカウントまで作り、この書簡を自ら拡散した。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、ルイ・ヴィトンやディオールといったブランドの実績で自身を語ってきたアルノー会長が、後継構図を巡る疑念が噴出すると自らコミュニケーションの手法そのものを変えたと評価した。
26日夕方、アルノーはLVMH公式Xアカウントに「ありがとうございます(Merci)」というタイトルの書簡を投稿した。書簡は、ルモンドが19日から24日まで6回にわたり掲載した「ベルナール・アルノー帝国」企画シリーズ記事を狙い撃ちにしたものだ。この記事は、ルモンド所属の2人の記者が6カ月にわたりグループ幹部10数人と5人の子ども、アルノー本人にまで会って執筆した連載である。
アルノーは27日、グループの公式アカウントではなく個人Xアカウントを開設し、最初の投稿として自身の書簡を改めて掲載した。このアカウントはアルノー会長が作った初の自前のSNSアカウントである。前日に投稿した書簡に対する大衆の応援メッセージについて「深く感動した」と記した。イーロン・マスクXオーナーはアルノーのこの投稿を直ちに再投稿した。アルノーは最近、自身の人生を扱った1時間41分のポッドキャストにも出演した。
今年77歳のアルノーはこれまで少数の媒体と選別的に接触してきた。子どもたちが不公正な記事を見たと抗議すると、「自分はもっと若い頃に遥かに激しい攻撃を受けた」「面の皮が厚くなければならない」と答えたという。WSJは、これまで沈黙していたアルノーがフランス語圏で出版された書籍や家族の確執を扱った現地報道が相次ぎ、不満が募ったと伝えた。
ルモンドの連載は、アルノーを取り巻く人脈、歴代大統領との関係、トランプやプーチンへの対峙の仕方、所有するメディアへの影響力、文化支援と税控除、5人の子どもの承継を順に扱った。24日に掲載された最終回には「アルノーの承継、LVMH心臓部の毒」というタイトルが付いた。
アルノーはこの最終回に最も強く反発した。自ら執筆した書簡で「アルノー一族の者が議論すれば陰謀になり、意見を交わせば競争になる」と記した。承継構図を巡って暗闘が繰り広げられているとの報道には、「子どもたちは日曜日になると互いに電話し合う仲だ」とし、「一般家庭で日常的に起きる出来事が、わが家では暗闘と呼ばれる」と付け加えた。
アルノー家が握るLVMHグループの持ち株は過半を超える。現在、アルノーの5人の子どもであるデルフィーヌ(51)、アントワーヌ(49)、アレクサンドル(34)、フレデリック(31)、ジャン(27)も全員がLVMHまたは系列ブランドで働いている。しかし5人のうち誰がグループ全体を継ぐかは依然として定まっていない。ひとまずアルノー会長本人が4月の株主総会で99%の賛成により再任された。同じ総会で株主は最高経営者の年齢上限を85歳に引き上げる議案も承認した。アルノーはこの点を根拠に「承継は7〜8年後に改めて尋ねてほしい」と答えた。
アルノーは、歴代大統領と親しく付き合ってきた事実、文化支援制度で税控除を受けてきた事実、複数のメディアを保有してきた事実そのものを否定しなかった。政治圏との関係は世界的企業を運営する中で生じた交流であり、文化支援はフランス芸術への貢献の一環だと説明した。書簡には、ノートルダム大聖堂の復元に2億ユーロ(約3340億ウォン)、エコール・ポリテクニークの数学研究所に5000万ユーロ(約835億ウォン)を拠出し、ルイ・ヴィトン財団が毎年来館者150万人を受け入れるなど、フランス文化にどれほど多く貢献してきたかを強調した。
アルノーは現在、経済紙レゼコーと日刊紙ル・パリジャン、週刊パリ・マッチ、ラジオ・クラシークを所有している。これに対し、長女デルフィーヌと事実婚関係にある通信財閥グザヴィエ・ニエルは、今回の記事を掲載したルモンドに個人株主として名を連ねている。アルノーは「自分には保有するメディアに圧力をかけると疑いながら、ニエルは編集に介入しないとみなす基準は何か」とルモンドに問い返した。
アルノーはこの日の書簡で、高級品ビジネスは四半期単位ではなく世代単位で考えるべき産業だと述べた。この日LVMHグループが発表した今年第2四半期の業績を見ると、LVMHはアルノー一族の指揮下で予想より良好な成績を収めた。グループの上半期売上高は386億ユーロ(約64兆4600億ウォン)で前年同期比3%減となったが、第2四半期のオーガニック売上は3%増加した。オーガニック売上は、M&Aや為替変動など外部要因を除き、企業が既存事業と本質的なケイパビリティのみで上げた売上を指す。とりわけファッション・レザー製品部門は2年ぶりに四半期売上が増加へ転じた。上半期ベースのLVMH純利益は57億ユーロ(約9兆5200億ウォン)で、市場予想の52億2000万ユーロを上回った。