チリを襲った暴風により主要な銅鉱山の稼働が相次いで停止し、人工知能(AI)産業の核心原材料である銅の供給を巡る懸念が高まっている。AIデータセンターと送電網・再生可能エネルギー設備の拡大で銅需要が増えるなか、老朽鉱山の生産性低下と異常気象による供給障害が重なり、銅不足の深刻化に伴う今後のAIサプライチェーンの不確実性が高まり得るとの見方が出ている。
26日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、カナダの鉱山会社ルンディン・マイニング(Lundin Mining)は先週、チリ・アタカマ地域のカセロネス銅・モリブデン鉱山の操業を停止した。大雪で送電に支障が生じたことによる措置である.
チリの鉱山企業アントファガスタ(Antofagasta)もミネラ・ロス・ペランブレス鉱山の採掘と加工作業を数日間停止した。カナダの鉱山企業バリック・マイニング(Barrick Mining)も25日(現地時間)、「異例の気象状況」によりチリ北部の鉱山キャンプに滞在していた従業員をヘリコプターで避難させたと明らかにした。
今回の暴風は、高地の主要銅鉱山が位置するアンデス山脈一帯に大雪をもたらした。低地ではフラッシュフラッディング(flash flooding、突発的洪水)が発生した。チリ当局によると、今回の暴風で少なくとも13人が死亡した。チリ国営銅企業コデルコ(Codelco)も大雪の影響でエル・テニエンテを含む一部主要鉱山の操業を一時停止した。英系鉱山企業アングロ・アメリカン(Anglo American)や豪州の鉱山企業BHPなどグローバル大手鉱山会社も、現地情勢を注視しつつチリ当局と緊密に協議している。
とりわけ今回の暴風による銅生産の停滞は、すでに供給不安が強まっている銅市場の不確実性を一段と高める雰囲気だ。銅はAIデータセンターと送電網・再生可能エネルギー設備の構築に不可欠な中核金属である。チリは世界最大の銅生産国で、世界の銅生産量のおよそ4分の1を占める。
主要鉱山会社は最近、老朽鉱山の生産性低下を理由に銅生産量の減少を相次いで警告してきた。昨年も主要鉱山の事故と稼働停止が続き、銅価格は史上最高水準まで急騰した。最近は米国の銅輸入関税賦課の可能性と中国の買い増しが重なり、銅価格の上昇基調が続いている。
業界では、気候変動により拡大する鉱山運営の不確実性への懸念が出ている。鉱山会社は通常、一定水準の気象悪化に伴う生産支障は年間生産見通しに織り込むが、既存の気象パターンが変化し、生産支障の時期と規模の予測が次第に難しくなっている状況だ。
これに加え、供給拡大を制約する構造的要因も少なくない。国際鉱業金属協議会(ICMM)によると、世界の金属・鉱山施設1万2000カ所のうち3分の1は水の確保競争が激しく干ばつリスクが高い地域にある。チリも代表的なリスク国の一つに挙げられた。鉱石の品位(品質)が低下するほど同量の銅を生産するのにより多くの水が必要であり、古い鉱山ほど水使用量も増える。アルバート・マッケンジー・ベンチマークアナリストは「すでに水不足を経験する国家に鉱山がさらに増えれば、現行システムにかかる圧力が強まる可能性がある」と述べた。
供給障害への懸念は実際の生産実績にも反映されたとみられる。投資銀行ジェフリーズ(Jefferies)が今月、世界の採掘銅供給量のおよそ5分の1を占める主要鉱山会社の生産データを分析した結果、直近四半期の世界銅生産量は前年同期比で約10%減少した。ジェフリーズは今後12カ月のあいだに相当規模の銅供給不足が発生するリスクが高まったと分析した。
国際エネルギー機関(IEA)も、チリやペルーなどの主要生産国が現在水準の銅生産量を維持することに一段と大きな困難を抱えると警告した。AIと環境配慮型エネルギーへの移行で銅需要は増え続けるなか、老朽鉱山と水不足、気候変動に伴う生産支障が重なり、AI産業を含むグローバル先端産業のサプライチェーン不確実性も拡大する見通しだ。