アップル(Apple)がフォード(Ford)と協業し、車載ソフトウエア(SW)戦略の拡大に乗り出した。自社の電気自動車開発プロジェクトを中断した後は完成車を直接作る代わりに車載用地図とソフトウエアを供給し、自動車エコシステムでの影響力を広げようとする動きとみられる。
23日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、アップルはフォードの次世代電気自動車(EV)プラットフォームに自社の車載用地図開発ツール「MapKit for Automotive(マップキット・フォー・オートモーティブ)SDK」を供給することにした。これによりフォードは、この技術を次世代電気自動車に導入する最初の完成車メーカーの一つとなる。
新プラットフォームにはアップルマップを基盤とするナビゲーションが標準搭載され、フォードの運転支援システム「BlueCruise(ブルークルーズ)」の次世代機能開発に必要な道路単位(road-level)の地図データも提供される。ただしアップルが自動運転機能自体を提供するわけではない。地図プラットフォームと関連ソフトウエアを支援する形である。
今回の協力は、2024年にアップルの電気自動車開発プロジェクト「Project Titan(プロジェクト・タイタン)」が終了して以降、自動車分野で発表した最大規模の協業である。当時アップルは数年にわたり推進してきた電気自動車の開発を中断し、生成型人工知能(AI)事業に力量を集中することにした。
これを受けFTは、アップルは自動車製造事業からは撤退したが車載ソフトウエア市場は放棄していないと報じた。従来のCarPlay(カープレイ)がアイフォーンと車両をつなぐ役割にとどまったのに対し、今回は車内ナビゲーションシステム自体をアップルマップで実装する点で自動車ソフトウエア事業の領域を一段拡張することになったという。
エディ・キュー アップルサービス部門上級副社長は「新しいMapKit for Automotive SDKを通じてアップルマップのサービスをより多くのドライバーの日常へ拡張することになった」と述べた。ジム・ファーリー フォード最高経営責任者(CEO)は「アップルマップは世界最高水準の製品だ」とし「フォードはこれを車両に初めて搭載する完成車メーカーの一つになる」と語った。
とりわけ両社の今回の協力は、米国の中国産コネクテッドカー用ソフトウエア規制強化とも重なっているとみられる。米国は国家安全保障を理由に2027年型車両から中国産コネクテッドカー用ソフトウエアの使用を禁止する規制を施行する予定である。アップルなど米国のテクノロジー企業には、車載ソフトウエア市場での地位を拡大する機会になり得るとの見方が出ている。