中国の人工知能(AI)スタートアップであるムーンショットAIが最近公開した大規模言語モデル(LLM)「キミ(Kimi)K3」が、グローバルAI市場の新たな変数として浮上した。米国AI企業の独走体制が揺らいでいるとの評価の中、「ディープシーク・ショック」に続く「キミ・ショック」という表現まで登場した。ムーンショットAIは年初までディープシークに押され存在感が大きくなかったが、事業戦略を全面的に修正し、ディープシークが引き起こしたAI競争構図の変化に迅速に対応したことがキミのヒットにつながったとの分析が出ている。
21日、中国の経済メディアである財新によると、キミK3は17日公開直後にグローバルAI性能評価機関アーティフィシャル・アナリシスでOpenAIとAnthropicの最新モデルに近接した性能を認められた。前日に閉幕した上海世界人工知能大会(WAIC)では、アリババやテンセントよりムーンショットAIのブースにより多くの来場者が集まり、同社は利用者が殺到すると新規有料サブスクリプションを一時停止する措置も取った。
ブルームバーグ通信はこれを「ディープシーク以後で最大のAI話題」と評価し、キミK3の成功には三つの戦略があると分析した。すなわち、▲開発者・企業顧客中心への転換 ▲オープンウエイトへの転換 ▲超大規模モデルの開発である。
◇「ディープシーク・ショック」の危機を好機に…開発者攻略で勝負
ムーンショットAIは2023年にキミを初リリースした後、一時は中国AIスタートアップの代表格とされた。しかし年初、ムーンショットAIがモデル「K1.5」を公開した当日にディープシークが「R1」を発表して市場の関心を独占し、状況は急変した。キミK1.5はクローズドモデルで社内のみで活用される一方、ディープシークR1はオープンウエイト(Open Weight)形式でモデルのコア重み(weights)を公開し、開発者が自由に活用できる点が特徴だ。
ディープシークR1はこのようなオープンウエイト戦略と低コスト・高性能を前面に出し、国内外の開発者から好評を受け、テンセントなど中国ビッグテック(大手テック企業)も相次いでディープシークモデルを自社サービスに導入した。同じ期間、キミはユーザー流出に耐えなければならなかった。
これを受け、ヤン・ジーリン(杨植麟)ムーンショットAI創業者は戦略を全面的に修正した。一般消費者向けのチャットボット競争ではなく、開発者と企業顧客中心へと舵を切った。同時に次期フラッグシップモデルはオープンウエイト方式で公開することを決めた。ムーンショットはこの戦略に基づき昨年7月にK2を公開し、米国のAIサービス「カーサー(Cursor)」や「パープレキシティ(Perplexity)」などがK2を採用するなど、迅速に企業顧客を獲得した。今回のK3もオープンウエイト戦略を維持しつつ、コーディングとAIエージェント性能を大きく引き上げたと評価される。
もう一つの勝負手は超大規模モデルだ。米国の半導体輸出規制で中国AI企業がGPU(画像処理装置)の確保に苦しみ小型モデルの開発に集中する中、ムーンショットAIはむしろモデル規模を拡大した。当初2000億パラメータ水準で検討していたモデルを1兆パラメータへ大幅に拡大し、K3では2兆8000億パラメータ規模のモデルを打ち出した。ヤン創業者は長期的にはモデル規模が大きいほど推論やコーディング、AIエージェントなどの作業で競争力が高まると判断したと伝えられる。
◇「キミ・ショック」の波及…中国企業を再評価、米国は価格競争
K3の波紋は中国AI業界全般に広がった。財新によると、K3公開直後に競合のズーフー(智谱)とMiniMaxの株価が急落した。ズーフーは発表当日の17日に1日で28%超下落し、上場後最大の下げ幅を記録し、MiniMaxも同日15%以上下落した。華創証券は「K3がオープンウエイトモデルの性能上限を引き上げ、市場がAIモデル企業の価値を再評価し始めた」と分析した。
開発者の反応も熱い。AIプラットフォームのOpenRouterでK3は公開から3日でトークン使用量の上位に上り、Anthropicの一部代表モデルを追い抜いた。同社はK3公開後、利用者からのリクエストが予想を大きく上回り、既存利用者に演算資源を優先配分するため新規有料サブスクリプションを一時停止した。
「キミ・ショック」は米国AI企業にも少なからぬ圧力となる見通しだ。グローバル投資銀行(IB)のバーンスタインは17日のリポートで、K3の利用価格が入力トークン100万個当たり3ドル、出力トークン100万個当たり15ドルに設定され、Anthropicの一部モデルより最大70%割安だと明らかにした。バーンスタインは「最先端AIモデル間の推論性能の差が次第に縮小していることは、企業の収益性には否定的なシグナルだ」とし、「OpenAIとAnthropicもここ数週間で価格競争と利用量制限の競争に突入した」と述べた。
急速な成長を背景にムーンショットAIは大規模な資金調達に動いている。2月に相次いで資金調達に成功し、企業価値を200億ドル(約29兆ウォン)まで引き上げ、最近は企業価値300億ドル(約44兆ウォン)以上を目標に新規投資の誘致を進めており、早ければ6カ月以内に香港市場への上場を推進中と伝えられる。