欧州連合(EU)が売れ残った衣料品やアクセサリー、靴などの廃棄を禁じたことで、ラグジュアリー業界の在庫管理戦略に大幅な見直しが不可避となった。希少性を維持するため未販売品を廃棄してきた慣行に歯止めがかかり、生産量の調整と在庫管理戦略全般の再設計が必要だとの分析が出ている。
19日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、この日からEUでは大企業の未販売の衣料品やアクセサリー、靴を焼却または埋め立てる行為が禁止される。消費者が返品した製品も対象に含まれる。今回の措置は昨年制定されたEUの「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(Ecodesign for Sustainable Products Regulation・ESPR)」に基づくもので、過剰生産と廃棄物を減らし、資源の循環利用を拡大するために設けられた。
この規則は、寄付や修繕、再使用などを未販売品処理の優先的な代替案として推奨する。ただし健康や安全上の問題がある場合、偽造品、復旧が不可能なほど損傷した製品など一部の例外的なケースでは廃棄が認められる。
今回の措置でとりわけラグジュアリー業界への影響が大きいとみられる。高級ブランドはこれまで製品の希少性を維持する在庫管理戦略の一環として未販売品を廃棄してきた。今後は在庫保管コストを増やすか生産量を減らし、値引き販売チャネルもより精緻に運用するなど、在庫管理戦略全般を再検討する見通しだ。
代表的な高級ブランドであるシャネルは、最近の香港裁判所での審理過程で、シャネル香港法人が数千点の未販売品を廃棄してきた事実が明らかになった。ただしシャネルは、法廷で言及された事例は現在のグローバルな運用方式を反映したものではないとし、現在は販売が難しい製品を2019年に設立したリサイクル専門法人「ラトリエ・デ・マティエール(L'Atelier des Matières)」を通じて処理していると明らかにした。
業界では、大衆ブランドにとっては寄付と再使用の拡大が新たな再販チャネルになり得る一方で、希少性を重視するラグジュアリー業界にはむしろ一段の負担として作用するとみている。未販売品がアウトレットや寄付・中古市場、グレー市場(Gray market・非公式流通経路)により多く流入すれば、値引き販売が増え、ブランドの希少価値が毀損され得るためだ。また在庫保管や修繕、素材回収など追加コストが発生する可能性も大きい。
市場調査会社ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)とイタリアのラグジュアリー協会アルタガンマ(Altagamma)によると、昨年の高級品販売の最大40%が値引き販売を通じて行われた。景気の減速と在庫の増加で、高級ブランドのアウトレット販売と価格引き下げへの依存度が高まった影響である。
グローバル投資銀行バーンスタイン(Bernstein)のルカ・ソルカ・アナリストは「新規則により企業は生産計画と在庫管理に一層気を配るようになる」と述べ、「アパレルブランドはシーズン終了後に一部の在庫が残ることを避けられないだけに、ブランド価値を維持しつつ値引き販売を管理するための取り組みがより重要になる」と語った。
業界では、今回の規制が人工知能(AI)を活用した在庫管理システムの導入も前倒しするとみている。AIを用いてリアルタイムで在庫を管理し、需要を予測して生産と店舗、物流在庫を効率的に調整しようとする動きが拡大するとの見通しだ。ただし一部では、高級ブランドがEU域外の流通網を活用し、未販売品を海外で廃棄する方式で規制を迂回する可能性も提起されている。