欧州連合(EU)が違法漁業を阻止するために導入した水産物のデジタル追跡システムの米国など一部国への適用を11月末まで猶予した。違法漁獲物の欧州流入を遮断するために設けた制度だが、水産物サプライチェーンのデジタル化が十分に進まない状況で施行され、通関遅延とコスト増を招いたためである。
12日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、EUは米国産水産物に対するデジタル追跡システム(CATCH)の例外適用期限を当初の7月10日から11月30日まで延長した。米国政府がEU欧州委員会に制度運用上の問題を提起したことを受けた決定だと伝えられた。今回の猶予は米国のほか、カナダ、ノルウェー、ニュージーランド、アイスランド、フェロー諸島、南アフリカ共和国にも適用される。
CATCHは、違法・無報告・無規制(IUU)漁業で生産された水産物がEU市場に流入するのを防ぐための電子認証・追跡システムである。水産物の漁獲から輸出までの関連情報をデジタル方式で提出し、移動経路を確認する。EUは2010年から違法漁業の取り締まりを強化し、現在までに6カ国産の水産物輸入を一時的に禁止した。
今回の猶予の直接的な契機は5月にオランダで発生した通関支障だった。アラスカ産スケソウダラを積んだ船舶がCATCHの求める追跡情報を提出できず、数日間入港できなかったが、米国当局が介入してようやくオランダのエイマウイデン(IJmuiden)港に停泊した。このような通関支障は別の船舶にも波及し、ほかの船も貨物を積んだまま数日間港に足止めされた。2隻にはスケソウダラ・カレイ類の魚を含む水産物1万6000トン(t)が積まれていた。
米国アラスカの水産業界は、CATCHが事実上の貿易障壁として作用しているとの立場である。特に一部の貨物は数千件のデータ入力が必要で、輸出業者と輸入業者の双方に相当な費用負担が生じている。米国は2025年にスケソウダラやサケ、ロブスターなどを含め、10億ドル(約1兆5000億ウォン)を超える天然水産物をEUに輸出した。EU市場の比重が大きいだけに、新制度による通関遅延と事務コストの増加は米国水産業界の負担を高めるとの懸念が出ている。
問題は、水産物サプライチェーンのデジタル化水準がなお制度に追いついていない点である。サプライチェーンの情報の相当部分は依然として紙文書で作成・管理されており、最終輸出業者がこれを改めてデジタル化してシステムに入力しなければならない。この過程で資料の漏れや入力遅延が発生し、通関支障につながっているためだ。欧州水産物加工業者団体シーフード・ヨーロッパ(Seafood Europe)のカタリナ・シピッチ(Katarina Sipic)事務総長は「実際の市場環境で十分な検証なしにシステムが導入された」と述べ、「解決すべき課題は個別の技術的不具合ではなく、構造的でシステム的な問題にある」と指摘した。
FTが入手したEU専門家報告書も技術的限界を指摘した。同報告書は、データ辞書やメッセージ形式、標準入力例、検証ルール、エラーコード、アクセス権限などが必要だと評価した。これらの基準が整備されない限り、既存の手作業入力と事例ごとの解釈に依存せざるを得ず、サプライチェーン全体でのデジタル追跡は難しいということだ。
世界の水産物漁獲量の約5分の1は違法または無報告の漁獲と推計される。EUの違法・無報告・無規制漁業に対応するNGO連合によると、年間の違法・無報告漁獲量は1100万〜2600万tに達する。EUが水産物追跡システムを強化しようとする背景である。ただしサプライチェーンのデジタル転換が制度施行のスピードに追いつかず、通関支障が発生している。FTは、こうした問題が長期化すれば米国とEUの通商緊張を再び高め得ると伝えた。