米国プロ野球メジャーリーグ(MLB)では観客席に飛び込んだホームランボールをファンが持ち帰るのが一つの文化として定着しているが、ワールドカップのサッカーボール(公認球)は事情が異なる。競技場で観客席に入ったサッカーボールは返却しなければならない。単にボールが不足しているからではない。サッカーボール内部に搭載されたセンサーが判定とデータ分析に活用され、単なる競技用具を超えて試合運営のための先端装備へと変わったためである。
9日(現地時間)AP通信によると、2026国際サッカー連盟(FIFA)北中米ワールドカップの試合中に観客席へ入ったサッカーボールは再び回収される。試合の流れを維持する目的もあるが、近年ワールドカップ公認球が各種データを収集し審判の判定を支援する「スマート装備」へ進化した影響も大きい。
2026ワールドカップの公認球はアディダスが製作した「トリオンダ(TRIONDA)」である。見た目は一般的なサッカーボールと似ているが、内部にはボールの動きを感知するセンサーが入っている。このセンサーはボールの位置と動き、選手がボールに触れた瞬間などを把握し、競技場内の追跡システムにデータを送る。該当データはビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の過程で活用される。
とりわけ半自動オフサイド判定(SAOT・人工知能(AI)と追跡技術でオフサイドか否かを判断する仕組み)で中核的な役割を果たす。サッカーでオフサイドか否かを判断するには、攻撃側と守備側の位置だけでなく、パスが出た正確な瞬間を把握する必要がある。このときボール内部のセンサーは選手位置の追跡データと結合し、ボールを蹴った時点を特定し、審判団が従来より速く正確な判定を下せるようにする。
AP通信は、ワールドカップ公認球に適用された技術が正しく作動するには競技場内システムと接続される必要があり、センサーの充電など別途の管理も必要だと説明した。これは観客席に入ったボールがホームランボールのように記念品になり得ない理由でもある。サッカーボール自体が試合運営システムの一部となり、単なる消耗品ではなく管理の対象になったというわけだ。
スポーツ産業ではこのようなデータ技術の競争が一段と激化する見通しだ。過去のスポーツ用具開発競争が素材の改良と競技力向上に集中していたとすれば、最近は試合データをいかに正確に収集し活用できるかが新たな競争力として浮上している。とくに選手位置の追跡装置と競技場の追跡システム、AI解析技術などが結合し、スポーツ用具の役割も変わるとみられる。