平日の退勤時間帯に中国・北京の都心ど真ん中で軽飛行機の衝突事故が発生し、中国の航空保安体制に抜け穴が露呈したのではないかという論争が拡散している。北京は中国でも航空統制が最も厳格な地域とされるうえ、最近は低空飛行とドローン規制まで大幅に強化した状況であり、一般の軽飛行機が習近平中国国家主席の執務室近くの上空まで進入した経緯をめぐり疑問が広がっている。

26日午後、シティックタワー外観が小型機の衝突で損傷した様子。/AP聯合ニュース

当局発表と海外報道を総合すると26日午後5時55分、朝陽区中心業務地区(CBD)のシティックタワー(CITIC Tower・中国尊)に単発2人乗りの軽量スポーツ航空機が衝突し、操縦士1人が死亡、13人が負傷した。この建物は北京で最も高いビルで、この一帯は天安門広場と人民大会堂がある長安街の進入路に隣接し、近くに各国大使館と金融機関が密集する北京随一の繁華街である。

朝陽区当局は事故発生から丸一日が過ぎた時点になってようやく事故発生の事実を簡潔に知らせた。しかし、衝突した建物がシティックタワーである事実や操縦士の身元、飛行経緯、事故経緯などは公開しなかった。さらに事故が金曜の退勤時間帯に発生し、当時多くの目撃談が相次いだが、現地ソーシャルメディア(SNS)では該当内容が即時に削除された。「北京 飛行機 事故」「シティックタワー」「北京 朝陽」など関連検索語も事実上遮断されたと伝えられている。

26日夕方、シティックタワー周辺が規制されている様子。/ロイター聯合ニュース

◇ ドローンも飛ばせないのに… 習執務室7kmの距離で事故「疑問」

最近になって飛行統制が一段と厳格化した北京中心部でこのような事故が発生したことで、海外メディアを中心に航空保安体制に穴が開いたのではないかという疑問が広がっている。とりわけシティックタワーは習近平中国国家主席の執務室かつ官邸である中南海からわずか7kmしか離れておらず、軽飛行機が衝突しなかったなら数秒で中南海に到達し得た。

当局によれば北京の都心上空は一般の軽飛行機の運航が事実上禁止されている。低空飛行時には中国民用航空局(CAAC)と人民解放軍空軍の事前承認を受けなければならず、先月からはドローン飛行も全面禁止となり、北京ではドローンを購入することもできない状態だ。このため軽飛行機が都心中心部まで飛行した事実自体が異例だという評価が出ている。

ブルームバーグ通信は今回の事故が「北京上空の管理における重大な安全上の脆弱性を露呈した」と評価した。米国シンクタンク、ユーラシア・グループのジェレミー・チャン上級研究員は「当局は当該航空機が中国で最も厳格に統制される領空をどのように突破したのかを究明することに総力を挙げ、関係責任者の問責とともに有人・無人航空機に対する規制がさらに強化される可能性がある」と展望した。

26日、通行人がシティックタワーを撮影している。/ロイター聯合ニュース

◇ 「低空で迎撃するとかえって危険…可能性を開いておくべき」意見も

専門家らはただし、今回の事故が防空網自体の失敗を意味すると断定するのは難しいと指摘した。米国の軍事アナリスト、ベン・ルイスはニュースウィークに「北京は中国でも最も綿密な防空網を備えているが、これは戦闘機やミサイルのような軍事的脅威に対応するよう設計されたものであって、都市内の低空空域で一般航空機を阻止するためのものではない」とし、「都心の低空を飛行する軽飛行機を迎撃することはむしろより大きな危険を招き得る」と述べた。

ルイスは「真の疑問は、どうやって一般航空機が都心上空まで進入できたのかという点だ」とし、事故原因については操縦士の過失や機体の欠陥、気象要因など多様な可能性を開いておくべきだとした。台湾の国防安全研究院傘下の国防戦略資源研究所のスー・ズーイン所長は「今回の事件は政治的動機があった可能性を排除しにくい」とも述べた。ただし今回の事故の故意性についてはまだ明らかになっていない。

事故機の飛行経路をめぐる疑問も続いている。ブルームバーグがフライトレーダー24を引用した報道によれば、事故機は登録番号B-12PPのサンワードSA60Lオーロラ機種で、北京東部のスポサ(寺)空港を離陸後、正常航路から大きく外れて都心方向へ向かった。その後シティックタワー近くで信号が途絶し、建物と衝突した。ただしフライトレーダー24は「データには一部の飛行経路のみが記録されており、低空では受信範囲の限界により衝突直前の記録は含まれていなかった可能性が高い」と説明した。

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