「インドのシリコンバレー」と呼ばれるITハブ都市ハイデラバードがドナルド・トランプ米国大統領の名前を幹線道路に掲げた。インドでは道路名はマハトマ・ガンジーやネルソン・マンデラのような物故者から取るのが大半である。トランプ大統領は2度の任期の間にハイデラバードを訪れたことがない。

このためインド国内では「海外資本と技術誘致に死活を賭ける州政府の経済的計算が込められた賢明な措置だ」という支持と「現在インドと関税戦争を繰り広げている他国の大統領の名前を道路に付けるのは妥当か」という攻防が激化している。

ハイデラバードは24日(現地時間)、米国領事館に接する道路を「ドナルド・トランプ・アベニュー」と命名した。ハイデラバードは広域人口が約1100万人に達するインドで4番目に大きい大都市である。マイクロソフト・グーグル・アマゾンのインド拠点が集まっており「サイバラバード」とも呼ばれる。この日、ハイデラバードが属する現地テランガナ州政府の要人らは、セルジオ・ゴール駐インド米国大使、ローラ・ウィリアムズ・ハイデラバード米国総領事が出席するなか、米国独立250周年のレセプションに合わせてドナルド・トランプ・アベニューと記された銘板を公開した。ドナルド・トランプ・アベニューはハイデラバード米国領事館に隣接し、主要な米国企業のオフィスにも近い。

セレジオ・ゴル・ジュー・インド駐米大使(中央)とマル・バティ・ビクラマルカ・テランガナ州副知事(左)が23日、米国総領事館近くの道路をドナルド・トランプ米大統領にちなみ「ドナルド・トランプ・アベニュー」に改称する標識を公開している。/X

レバンス・レディ・テランガナ州首相は昨年12月にトランプの名前を道路に付ける構想を初めて打ち出し、6カ月間押し通した。レディは「12月8〜9日に開かれる『テランガナ・ライジング・グローバル・サミット』を前に国際的な注目と投資誘致を狙った」と述べた。米国企業が集積する都市で米国大統領の名を冠した道路を打ち出せば海外投資家の目を引けるという計算である。テランガナ州はグーグルの名を冠した「グーグル・ストリート」、インドの著名実業家ラタン・タタの名を冠した道路のように、グローバル企業や人物を道路名に取り入れる作業も並行している。

一都市の投資誘致の試みで終わるはずの事案は「トランプ」という名前が入ったことでインド政治全体を揺さぶる争いへと拡大した。インドは一国内で中央政府と各州政府を別個の選挙で構成する連邦制国家である。米国の連邦政府・州政府の関係に近い。現在インド中央政府はモディ首相が率いるインド人民党(BJP)が、ハイデラバードが属するテランガナ州は野党インド国民会議(コングレス)が政権を握る。両党はインド政治の二大勢力で、中央ではBJPが与党でコングレスが第1野党だが、テランガナでは逆である。ドナルド・トランプ・アベニューの命名を決めたレバンス・レディ州首相もコングレス所属である。

コングレスは平素から党としてトランプ大統領を強く批判してきた。コングレスの全国級指導者ラフル・ガンジーは「トランプはインドの利益を損なう」と重ねて攻撃した。最近米国との和解ムードを醸成中のモディ首相に対しては、関税戦争とイラン戦当時にインド船員が乗った油槽船被撃事件の局面でトランプに対抗せず「妥協した」と追及した。そうしたコングレスが与党の州でトランプの名前を道路に刻むと、モディ首相が所属するBJPは直ちに逆襲に出た。

インドで道路名を変えることは単純な行政手続きにとどまらず政治行為として受け止められる。BJPの与党地域ではムガル帝国の皇帝やイスラム系人物の名前をヒンドゥーの人物に変える改名が相次いでいる。シェザード・プナワラBJP報道官は24日、Xに「ラフルはトランプがインドの利益を損なうと言う。ではなぜラフルの政府がテランガナで道路名まで変えて最高の献辞を捧げるのか」と記した。バンディ・サンジャイ・クマル連邦長官は、レバンス・レディ州首相が「流行する名前なら何でも貼り付ける」と述べた。

米国とインドは中国を牽制しながら長く手を結んできたが、トランプ2期に入って関係が急速にこじれた。トランプ政権は関税戦争勃発後、インド産製品に一時50%に達する高関税を課した。トランプはインドがロシア産原油を買い入れたことへの制裁加算25%に相互関税25%を上乗せして算定した数値だとし、インドの外交方針を修正するよう圧力をかけた。この間、米国はインドが宿敵とみなすパキスタンともぐっと接近した。

しかし今年2月から両国は関税を18%に引き下げることで合意し、辛うじて関係の修復に動き出した。17日、フランスのG7首脳会議でモディ首相はトランプ大統領と会い、通商協定をより深く議論することで一致した。

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