欧州自動車産業の象徴であるBMWとメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなどが、グローバルヘッジファンドの新たな空売り標的になっている。かつて中国市場で莫大な利益を上げ世界の自動車市場を主導した欧州企業が、いまや中国電気自動車(EV)メーカーの攻勢に押され、長期的な競争力に対する疑念に直面したとの分析が出ている。

BMWの車両。/ロイター

英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ヘッジファンドは今年に入り、BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、ステランティスが発行した長期債と永久債に対する空売り規模を拡大している。とりわけステランティスとフォルクスワーゲンの社債は、欧州で最も空売りの多い社債の一つに挙げられる。ステランティスが発行した2035年満期の債券は、5月末時点で欧州投資適格社債の中で最も空売りが集まった債券として集計された。

株式市場でも同様の流れが見られる。ステランティス株の空売り比率は昨年末の1%水準から足元で5.8%まで跳ね上がった。ヘッジファンドは自動車セクター全体で下落へのベットを拡大しており、この過程で欧州自動車企業の時価総額が数百億ユーロ吹き飛んだ。

業界では、投資家が欧州自動車産業を取り巻く危機を単なる景気後退ではなく構造的変化と見なし始めたとの分析が出ている。自動車分析会社アルファバリューのアドリアン・ブラゼ・アナリストはFTに「中国はもはや欧州自動車メーカーの収益源ではなく競争相手になった」と述べ、「投資家は自動車業界が過去水準の収益性を再び回復できるのか疑問を抱いている」と語った。

実際に中国自動車メーカーは欧州市場で急速に影響力を拡大している。欧州自動車工業会(ACEA)によると、今年1〜4月の中国自動車メーカーの欧州連合(EU)市場シェアは8.5%だった。前年同期の6%から大きく上昇した数値である。

とりわけ中国最大のEVメーカーである比亜迪(BYD)や吉利汽車(ジーリー)などが、低価格のEVとハイブリッド車を武器に欧州消費者を攻略している。中国メーカーの強みは単に価格競争力にとどまらない。投資家は、電池技術や車載ソフトウエア、生産効率など将来の競争力でも中国が欧州をリードし始めたと見ている。

ブラゼ・アナリストは「欧州の自動車会社が新型車1モデルを発売する間に、中国の競合は最新の電池とソフトウエアを適用した車両2台を投入する場合もある」と述べた。

中国メーカーは欧州での現地投資も拡大している。BYDは最近、2027年末までに約20億ユーロを投資し欧州全域に超高速充電インフラを構築すると発表した。EV販売を超え、充電エコシステムまで自前で構築する戦略である。

一方で欧州自動車メーカーは苦戦している。EVシフトの過程で莫大な費用を投じたうえ、中国市場での販売減速、欧州内の需要不振、米国の関税政策まで重なり、収益性が悪化している。

危機感の高まりを受け、ステランティスとフォルクスワーゲン、ルノーは最近、EUに「メイド・インEU」政策の導入を求めた。欧州域内での生産を維持する企業に恩恵を与え、域内の自動車産業を保護しようという趣旨である。

しかし市場は依然として冷淡で、投資家の視線も変わりつつあるとFTは評価した。一部の欧州自動車メーカーは、中国企業との技術協力を拡大したり生産ラインを譲渡したりする形で対応している。かつて中国市場を通じて成長した欧州自動車産業が、いまや中国メーカーの追撃を懸念しなければならない立場に置かれている。過去には景気回復だけで欧州自動車メーカーの業績が反発するとの期待があったが、いまは中国メーカーの技術力と市場支配力が長期的な脅威となり得るとの懸念が強まっている。

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