世界の主要中銀が利下げではなく利上げに重心を置いている。米国とイランが暫定停戦に合意し国際原油相場が急落、これに伴う物価上昇への恐怖も一服したが、各国の中央銀行は金融政策の方向を引き締めから緩和へ切り替えていない。戦争が終わっても、これまで積み上がった物価ショックが直ちに解消されるわけではないという慎重論が中銀の間に広がった結果との分析が出ている。
ドナルド・トランプ米大統領が15日、イランとの終戦合意を発表すると原油市場は即座に反応した。国際原油の指標であるブレント価格は1バレル=78.96ドルまで下がり、3カ月ぶりの安値を付けた。だが、実際に金融政策を担う中央銀行が感じる物価圧力は依然として強い。日本銀行は16日に会合を開き、政策金利を0.75%から1.0%へ0.25%ポイント引き上げた。1995年以降、31年ぶりの高水準だ。
この日の会合では日銀政策委員8人のうち7人が引き上げに賛成した。日銀は同日の声明で「高止まりした原油価格が企業取引を経て迅速に波及している」とし、「基調的な物価上昇率が目標の2%を上回るリスクがある」と警告した。基調物価とは、食品・エネルギーのように変動の大きい品目を除いた、物価の基礎的な流れを指す。ウチダ・シンイチ副総裁は会見で「金融緩和の度合いを調整しつつ政策金利を引き上げ続けるのが基本方針だ」と述べた。
日銀は2027年4月から毎月購入する国債規模を2兆円(約18兆ウォン)程度に据え置き、これまで縮小してきた債券買い入れを止めることも明らかにした。一時は月23兆7000億円まで膨らんだ買い入れ規模を正常化へ戻す最終段階だ。利上げで引き締めシグナルを出しつつも、国債買い入れを一度に減らして長期金利が急騰する事態は避ける意図とみられる。ハルミ・タグチS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス主任エコノミストは「債券は満期が来れば自然に減るため、無理に減らして金利にボラティリティを加える理由はないと判断した」と語った。
元日銀幹部のアタゴ・ノブヤス楽天証券経済研究所主任エコノミストは「基調物価が2%を上回るリスクを日銀が名指ししたのは非常に強力なメッセージだ」と述べた。次回の利上げ時期を従来の12月から10月へ前倒しした。アタゴは「これだけ明確なシグナルとともに、利上げと債券買い入れ縮小の中止が同時に出た以上、今回の6月会合が後日ターニングポイントとして記録され得る」と語った。
他国の中央銀行も認識は同様だ。物価を抑えるという目標の下、各国が歩調を合わせる『利上げの同調化』現象が鮮明になっている。欧州中央銀行(ECB)は11日の金融政策理事会後、預金金利を年2.00%から2.25%へ、主要リファイナンス金利と限界貸出金利をそれぞれ2.40%、2.65%へ引き上げると発表した。ECBの利上げは2023年9月以来2年9カ月ぶりだ。ECB政策委員のガブリエル・マクルーフ・アイルランド中央銀行総裁は「エネルギー施設が損壊した状態なら物価圧力はくすぶり続け得る」と述べた。爆撃で破壊された送油・発電設備を復旧し、ホルムズの物流が正常化するには相応の時間がかかると専門家は予測した。イランが敷設した機雷を除去するだけでも相当な日数を要する可能性があり、戦争が終わっても衝撃は当面残るという指摘だ。
ノルウェー中央銀行は先月7日に政策金利を4.25%へ引き上げ、先手の対応に動いた。オーストラリア中央銀行は16日に政策金利を4.35%に据え置きつつ「物価は依然として高すぎる」とした。景気減速の兆しが見えても物価安定を優先するシグナルと受け止められる。ニュージーランド中央銀行は金利を据え置きながら「中東の戦争と供給網不安で物価が再び上がり得る」とし「予想より速く大幅な利上げが必要となる可能性がある」と余地を残した。イングランド銀行も18日の会合を前に追加利上げ観測が浮上している。
米連邦準備制度(Fed・FRB)は17日まで会合を開き金利を決定する。専門家は今回はFRBが金利を据え置くとみる。ただし勘定は複雑になった。米国は雇用が堅調で消費も強く、物価が容易に下がりにくい傾向がある。景気減速の兆候が明確に表れなければ、トランプ政権が望むように利下げする名分は生まれない。足元の米経済はなかなか冷え込んでいない。ウォール街では年初にはFRBが間もなく利下げに転じるとみていたが、イラン戦争を経て雰囲気は反転した。いまやFRBが利下げするよりも、年末までに一度さらに利上げする可能性の方が大きいとの見方だ。米金利先物市場が30日物フェデラルファンド金利先物価格を基に算出するフェドウォッチは、12月FOMCまでにFRBが利上げする可能性を68.4%と織り込んだ。