中東情勢の不安で国際原油価格の変動性が高まり、世界最大の電動二輪車メーカーであるヤディ(雅迪・Yadea)が思わぬ恩恵を受けている。東南アジアと南米を中心に電動二輪車の需要が急速に増え、注文が殺到しているためだ。中国の内需市場を基盤に成長したものの内需の減速に直面していたヤディは、これを足掛かりに海外市場攻略に拍車をかけている。

現地メディアを総合すると、ヤディは中国江蘇省ウーシーに本社を置く電動二輪車の専業メーカーである。創業者のドン・ジングイ(董経貴)会長は安徽省の農村出身で、軍務時代にオートバイ整備技術を身につけた。妻のチエン・ジンホン(銭静紅)副会長兼最高経営責任者(CEO)とともに飲食店を運営した後、1990年代後半にオートバイ事業に進出し、その後、国営工場を買収して事業規模を拡大した。

ヤディは電動スクーター、電動オートバイ、電動自転車など累計販売台数が1億台を突破し、世界最大の電動二輪車メーカーと評価されている。チエン副会長はフォーブスチャイナが選定する「ベストCEO」名簿に数回名を連ねたことがある。

グラフィック=ソン・ミンギュン

◇ 原油が乱高下し電動化需要が上昇…東南ア・南米で注文急増

フアチュアン証券によると、ヤディは昨年合計1630万台を販売し、370億元(約8兆3098億ウォン)の売上高と29億1000万元(約6535億ウォン)の純利益を計上した。いずれも前年対比で31%、129%増加した数値で過去最高の実績である。市場は、今年の売上高が409億元(約9兆ウォン)、純利益は32億7000万元(約7346億ウォン)に達し、前年対比で10%以上成長すると予想している。

足元でヤディが注目を集める理由は海外事業の成長基調である。フアチュアン証券によれば、ヤディは2024年に海外で21万台、2025年に31万台を販売したと推定されるが、今年の海外販売はこれより大幅に増加する見通しだ。ヤディ側はFTに「今年の海外需要は昨年より約70%増加した」とし、「注文時期を前倒しできるかという顧客からの問い合わせが続いており、出荷を急がねばならない状況だ」と述べた。とりわけ東南アジアと南米地域で注文が大きく増加していると伝えられる。

ヤディの海外事業拡大には国際原油価格の上昇が重要な背景として作用した。イラン戦争の影響で上昇したガソリン価格の負担を感じた消費者が電動二輪車に目を向けているということだ。特にオートバイが主要な移動手段である東南アジア諸国では、燃料費負担が購買決定に直接的な影響を及ぼしているとされる。ヤディはこれを機に欧州市場への進出にも速度を上げている。会社は英国ロンドンやフランス・パリなど主要都市を中心に電動スクーターの普及拡大可能性を注視している。

FTは「原油価格の不安定さが中国製電気自動車、電動スクーターなど環境配慮型産業製品の需要急増を誘発した」とし、「専門家は中東発の原油高騰が長期的に電動化への移行を加速させると分析した」と伝えた。

◇ 飽和した中国内需市場を越えグローバル攻略を本格化

出勤時間帯の北京市内の横断歩道で二輪車が横断している。/ロイター聯合ニュース

ヤディの成長経路は中国の電気自動車メーカーであるビヤディ(BYD)に似ている。中国政府が推進した交通の電動化政策の恩恵を受けて成長したヤディは、世界最大の電動二輪車市場である中国内需市場で首位に立ち、規模の経済を構築した。現在、中国国内で6つの工場を運営中である。最近は高級型製品の比率を増やし、バッテリーなど中核部品の内製比率も高めながら収益性を改善している。フアチュアン証券は、昨年のヤディの純利益急増の背景として製品の高級化とサプライチェーンの効率化効果を挙げた。

ヤディが海外事業の拡大に乗り出したのは、中国市場の成長限界とも無関係ではない。ヤディ側によると、現在中国には約3億台の電動スクーターが普及している。ヤディ側は「世帯当たり平均1.5〜2台水準だ」とし、「人口減少により内需市場がこれ以上成長するには限界があるだろう」と述べた。

ただし、ヤディの海外事業はまだ初期段階だ。シティ銀行の分析によると、昨年の海外事業が全体売上高に占める比率は約2%にとどまった。それでも成長ポテンシャルは大きい。ヤディは今年の海外販売目標を45万台に示した。昨年の31万台から大きく増やした数値だ。これに向け、販売網も3700カ所から最大1万カ所まで拡大する計画である。現在ヤディはベトナム、インドネシア、タイ、トルコ(トュルキエ)、ブラジル、メキシコなどに生産拠点を運営している。欧州の需要増に対応するため、ハンガリーにも工場を設立する計画だ。

市場の見通しも明るい。国際清浄交通委員会(ICCT)によると、昨年時点で世界の二輪車市場における電動二輪車の比率は15%水準にとどまる。自動車市場に比べて電動化の移行がまだ初期段階にあるだけに、今後の成長余地は大きい。

ここに主要各社が機能強化にも速度を上げ、市場成長を促進するとみられる。中国の経済メディアである財新によれば、最近の電動二輪車はリモート制御やスマートキー、車両状態のリアルタイム確認機能などが標準仕様として定着しており、一部企業は独自の車載オペレーティングシステム(OS)まで開発している。ヤディ側は3月末の業績発表で「電動二輪車が単純な移動手段から脱し、スマート機能とデザイン、ライフスタイル要素を備えた製品へと進化している」と述べた。

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