2026年北中米ワールドカップを前に「チップの国」と呼ばれる米国の飲食店が、外国人観光客の「ノーチップ」可能性に備えてサービス料導入に動いていることが分かった。ワールドカップ期間中、客の自主性に委ねていたチップを、いわゆる「自動チップ(auto gratuity)」という形のサービス料として事実上制度化するということだ。
10日(現地時間)ワシントン・ポスト(WP)によると、ペンシルベニア・ミズーリ州レストラン協会は、ワールドカップ開催都市であるフィラデルフィアとカンザスシティの加盟飲食店に対し、11日から7月19日まで続くワールドカップ期間の全期間または一部期間にわたりサービス料を追加で課すよう勧告している。
WPは「このような指針は、外国人観光客がチップを残さない状況を防ぐためのものだ」とし、「米国式のチップ文化を逐一説明しなければならない気まずい状況や、ワールドカップ期間に混雑する店舗でサービスが遅れる事態を減らすための措置でもある」と伝えた。
ワールドカップを前にサービス料の議論が大きくなったのは、チップ文化に慣れていない外国人観光客の増加で従業員の収入が減少しかねないとの懸念からだ。チップに慣れていない海外の客が増えれば、直ちに米国の飲食店従業員の収益減少につながり得るということだ。
米国と一部欧州諸国を除く大半の国ではサービス料が勘定書に含まれており、チップは選択事項である場合が多い。特に満足のいくサービスを受けた時だけ追加でチップを渡す文化が一般的だ。
一方、米国では連邦基準の最低賃金が時給2.13ドルにすぎないチップ労働者が多く、チップが実質的に従業員賃金の中核要素として定着している。本来は良いサービスへの感謝のしるしだったチップが、消費者が負担する一種の給与体系として固まった格好だ。
フィラデルフィアで飲食店を運営するダニエル・マクラフリンは、従業員50人のうちおよそ半数がチップを受け取る職種だとして、これらを保護するためワールドカップの試合が行われる3週間、すべての勘定書に20%のサービス料を課すことにしたと説明した。
ダニエル・マクラフリンは「店舗が非常に忙しいのに、チップを受け取る従業員が何の恩恵も受けられないのは本当に残念なことだ」と語った。マクラフリンの店でチップを受け取る従業員の時給は時給25〜45ドル水準だという。
ワールドカップの試合が開かれる米国内11都市の飲食店運営者も、サービス料導入の是非をめぐって同様の悩みを抱えている。これらは地域・州・連邦の規制や常連客の反発可能性、実際の海外観光客流入規模などを総合的に検討しているとWPは伝えた。
ただし、チップを事実上義務化するサービス料をめぐる法的論争も少なくない。従業員の取り分と見なされるチップと異なり、サービス料は飲食店の売上として分類され、地方税・州税などの売上税の課税対象となる。また、事業者はサービス料を含めて従業員の賃金を計算しなければならない。
これを受け、独立レストラン連合(IRC)は今月初め、数万人の会員にニュースレターを送り、サービス料課金時の売上税と残業代の問題に加え、自動チップは連邦保険拠出法(FICA)に基づくチップ税額控除の対象ではない点も説明した。
IRC事務総長エリカ・ポルマーは「サービス料導入を検討していた事業者の間では『これは当然正しい選択だと思っていたが、今は分からなくなった。会計士に相談すべきだと思う』という反応が多く出た」と述べた.