相続税の節減を狙った投資資金が英国の商業用森林に流入し、環境と地域社会をめぐる論争が拡大している。造林事業で希少種の生息地が脅かされる一方、広大な土地が資産運用会社と富裕層投資家に集中しているとの批判も出ている。
英紙ガーディアンは7日(現地時間)、英国のイングランドとスコットランドの境界地域であるトドリグ(Todrig)で起きている造林事業の対立を紹介し、相続税の節減を狙った投資資金が森林に流れていると報じた。特に英国でもスコットランドを中心に森林投資需要が増え、環境破壊論争が大きくなり、土地が大手機関投資家に集中する現象への懸念も広がっていると伝えた。
◇ 相続税を減らし資産を増やす…森林が富裕層の投資先となった理由
森林投資が現地で注目される理由は税制優遇にある。英国の相続税率は一定基準を超える資産に対して40%が適用される。一方、商業用森林は2年以上保有すれば企業資産控除(Business Property Relief)の対象になり得る。木が成長する過程で発生する価値上昇分には所得税と法人税が課されず、伐採時にも譲渡益課税が免除される。業界では過去10年間で森林価値がほぼ2倍に上昇したと見ている。
森林売買仲介のウッドランズ・ドット・コム(Woodlands.co.uk)のアントン・バスカヴィルはガーディアンに「相続を考える資産家であれば森林投資を検討する価値がある」と述べ、「商業的に運営される森林は最も魅力的な節税手段の一つだ」と語った。
英国の中でも特にスコットランドは森林投資需要が集中する地域とされる。プライベートエクイティ業界の大物であるガイ・ハンズとホテル事業家のジュリア・ハンズ夫妻は、数万エーカー規模のスコットランドの土地を保有してきたほか、デンマークの流通財閥アナス・ポルブセンはスコットランド最大の個人土地所有者として知られている。ガーディアンによると、ロスチャイルド家をはじめ英国の有力資産家も森林投資ファンドに参加している。
◇「希少種の生息地が損なわれる」住民・環境団体が反発
トドリグは、こうした投資熱が向かった代表的な地域の一つだ。約580ヘクタール規模の同地域は草地と荒地が入り交じるエリアで、絶滅危惧の脆弱種であるノーザン・ブラウン・アーガス(northern brown argus、北部褐色シジミチョウ)をはじめとする多様な動植物が生息する。
ロンドンの資産運用会社グレシャム・ハウス(Gresham House)は2022年にトドリグを1200万ポンド(245億ウォン)で買収した後、商業用造林事業を進めた。トドリグの買収価格はわずか3年前より6倍に跳ね上がった。英国では近年、炭素吸収と木材生産を目的とした商業用造林事業が増えており、成長が速いシトカトウヒ(Sitka spruce)が代表的に活用される樹種とされる。
しかし環境団体は、グレシャム・ハウスのトドリグ事業がノーザン・ブラウン・アーガスが生息する草地と荒地を損なう可能性があるとして反発している。結局、チョウの生息地保全が争点として浮上し法的紛争に発展、環境当局が追加調査を進めることになり、事業は現在、再検討手続きに入っている。
地域コミュニティ協議会の議長であるカミラ・ファウラーは「このような手法の造林は既存の景観を損ない、単一樹種中心の森に置き換えることで生物多様性を害する」と述べた。バタフライ・コンサベーションの研究員アピタニ・ボンも「一度木が植えられれば草地は消える」「現在と同程度の種多様性を備えた草地が形成されるまでには数百年を要する」と指摘した。
◇ スコットランドの土地、投資家の手に…「地域社会の影響力が弱まる」
環境団体は、こうした投資熱が生態系だけでなく土地の所有構造にも影響を及ぼしていると主張する。特にスコットランドでは、広大な土地が資産運用会社と富裕層投資家に集中し、地域社会の影響力が弱まっているとの懸念が出ている。
市民団体コミュニティ・ランド・スコットランド(Community Land Scotland)のジョシュ・ドーブル政策担当理事は「グレシャム・ハウスは過去14年間でスコットランドだけで約7万3000ヘクタールの土地を確保した」とし「大手資産運用会社が土地を所有する場合、地域社会とのコミュニケーションと説明責任が弱まる可能性がある」と主張した。
これに対しグレシャム・ハウスは、相続税の節税手段という指摘を否定した。会社側は「投資家の大半は機関投資家であり、相続税の優遇を考慮して投資しているわけではない」とし、「トドリグ事業は長期的な環境的・経済的価値を創出するために設計した」と釈明した。