スターバックスコリアの「5・18タンクデー」イベントをめぐる論争が孫正現代表の解任に続き、19日(現地時間)には鄭溶鎭(チョン・ヨンジン)新世界グループ代表の謝罪へと広がった。グローバル市場でも歴史的悲劇や植民地の記憶をマーケティング素材として誤って持ち出す事故は少なくない。該当企業は「自動化システムのエラー」「単純なデザインのインスピレーション」「翻訳過程での強調」など似た説明を出した。しかし主力市場の売上急減やプラットフォームからの退場、ブランド価値の数億ドル蒸発といった逆風は避けがたかった。
◇ KFCドイツ「クリスタルナハト・チキン」通知
米国ファストフードチェーンのKFCドイツ法人は2022年11月9日、自社アプリ利用者にプッシュ通知を一件送信した。ドイツ語で「クリスタルナハト追悼日です。カリカリのチキンにやわらかなチーズを添えて自分にご褒美を」という通知だった。クリスタルナハトは1938年11月9〜10日、ナチス・ドイツとオーストリア一帯で起きた反ユダヤ人虐殺事件である。ユダヤ人91人が殺害され、3万人が強制収容所に連行され、ホロコーストの始発点と評価される。
通知を受けた利用者は当該画面をキャプチャしてSNSに投稿した。英国ユダヤ人委員会は「恐ろしい」と批判し、国際法律フォーラムは「言葉を失い、吐き気がする」と述べた。KFCドイツは約1時間後、2回目のプッシュ通知で謝罪文を送信した。親会社ヤム・ブランズは別途の声明で「予定になく、無神経で許容できないメッセージだった」と謝罪した。続けて「各国の記念日が含まれたカレンダーと連動した半自動のコンテンツ生成システムを使っているが、今回は社内の審査手続きが作動しなかった」という説明を出した。その後長期の不買にまでは広がらなかったが、「自動化マーケティングは歴史感受性に代替し得ない」という代表例として残った。
◇ アーバン・アウトフィッターズ「ケント州立大スウェットシャツ」
米国の衣料チェーン、アーバン・アウトフィッターズは2014年9月、自社オンラインモールでヴィンテージコレクション商品としてケント州立大(Kent State Univ.)スウェットシャツを129ドル(約19万円)で発売した。色あせた赤色の地にケント州立大の文言が刻まれたこの服は、肩と裾に赤い染みが飛び散り、所々に穴が開いていた。
ケント州立大は1970年5月4日、ベトナム戦争に反対するデモの最中に米国オハイオ州防衛軍が非武装の学生に発砲し、4人が死亡、9人が負傷した「ケント州立大虐殺」が起きた場所である。この事件は米国の反戦運動史に悲劇として残っている。赤い染みと穴は発売と同時に「銃創や弾痕を形象化したのではないか」という批判に包まれた。会社は翌日、謝罪文を掲載し「赤い染みは生地本来の色の変色で、穴は自然な摩耗だ」と説明したうえで商品を即時回収した。
しかし会社側の説明は受け入れられなかった。アーバン・アウトフィッターズには2012年、ナチス強制収容所の黄色いダビデの星を想起させるシャツを販売した前歴がある。この事件の翌年である2015年にも、収容所の同性愛者収監者の制服に似たピンクの三角形ストライプ柄の服を売り、相次いで俎上に載った。ケント州立大事件は、アーバン・アウトフィッターズが「論争を楽しむ小売業者」という認識を強めた。会社の最高経営責任者(CEO)ディック・ヘインが社内メールで「ヴィンテージバイヤーは消費者が望む製品を提供してきた」として当該製品を擁護した事実が外部に流出し、さらなる論争を招いた。
◇ ザラ「収容所服想起」子ども服
スペインのファストファッションブランド、ザラは2014年8月27日、発売から数時間で子ども用パジャマの上衣1点を一斉回収した。3歳未満の乳幼児向けに発売された青と白の横縞のシャツが問題だった。このシャツの左胸部分には六角星形の金色バッジが付いていた。星の中には「保安官(SHERIFF)」の文言が印字されていたが、通常の画面でははっきりとは見えなかった。
ソーシャルメディアの利用者は直ちに、このシャツがナチス強制収容所の収監者が着ていた縞模様の囚人服を連想させ、金色のバッジはユダヤ人が強制的に胸に付けさせられた黄色いダビデの星を想起させると指摘した。ザラの親会社インディテックスは発売当日にすぐ多言語で謝罪文を掲載し、「このデザインはクラシックな西部映画の保安官バッジから着想を得たものだ」として、当該商品を全量廃棄すると約束した。米国ユダヤ人の反名誉毀損連盟(ADL)のエイブラム・フォックスマン当時議長は事件直後、「このような事態が繰り返される事実は、ホロコーストと反ユダヤ主義の歴史に関する教育が切実に必要であることを示している」との立場を示した。
ザラは2007年にも、ハンドバッグにスワスティカ(ナチスの鉤十字)模様が刻まれていた事実が発覚し、商品を回収したことがある。2023年には、野心作「ザ・ジャケット」キャンペーンを展開するなか、ガザ地区爆撃の犠牲者の葬儀を想起させるパフォーマンスを見せ、3日で発売を撤回した。
◇ ドルチェ&ガッバーナ「箸の広告」
イタリアの高級ブランド、ドルチェ&ガッバーナ(D&G)は2018年11月、上海のファッションショー「ザ・グレート・ショー」の直前に中国のSNSウェイボーでプロモーション映像3本を公開した。映像は、華やかなD&Gのドレスを着た中国人女性モデルがピザやスパゲッティを箸でぎこちなく食べる場面を収めた。広告には「箸が大きすぎない?」とモデルを嘲る口調のナレーションが入っていた。
ファッションショー当日に出演予定だった中国人モデル・俳優数百人は、広告の後、一斉に出演を拒否した。ブランドアンバサダーだった有名俳優のワン・ジュンカイは直ちに契約を解除した。結局ショーは開始数時間前に中止された。映像公開の翌日には、共同創業者のステファノ・ガッバーナがインスタグラムのダイレクトメッセージで中国を便の絵文字5個で表し、「無知で汚く、臭うマフィア国家」と貶めた私的会話のスクリーンショットが流出した。ガッバーナは「アカウントがハッキングされた」と主張したが、受け入れられなかった。
D&Gはその後、中国市場で致命打を受けた。アリババのTモール、ジンドン・ドットコムなど中国の主要ECプラットフォームはD&G商品の掲載を一斉に取り下げた。コンサルティング会社ブランドファイナンスによると、事件直後の8日間でブランド価値376億元(約7兆8000億ウォン)が蒸発したとの推計が出た。D&Gは事件が起きた2018〜2019会計年度のEBITDA(減価償却前営業利益)が前年度比40%超減の8720万ユーロ(約1465億ウォン)にとどまった。営業利益率は12.2%から6.3%へと半減した。事件から8年が過ぎた現在まで、D&Gはグローバル市場リスク分析で「中国市場で回復できていない代表的事例」として引用されている。