キア・スターマー英国首相が党内の退陣圧力にも正面突破を選び、英国労働党の次期権力構図がうごめいている。スターマー首相は「挑戦するなら正式に名乗りを上げろ」と応酬したが、公然と辞任を求めた労働党議員だけで既に100人に達する。
米国CNNは12日(現地時間)、『ポスト・スターマー』として取り沙汰される人物たちを集中的に照らした。英国政界では早くも次期首相候補群をめぐる憶測が飛び交っている。ただし、まだ公式に代表選出馬を宣言した人物はいない。英国労働党代表選に出馬するには労働党下院議員の5分の1である81人の支持を確保しなければならない。現在この基準を満たす可能性がある人物は少数にとどまるとの評価が出ている。
◇ ウェス・ストリーティング(Wes Streeting)
最初に名前が挙がるのはウェス・ストリーティング(43)保健相だ。ケンブリッジ大在学時にトニー・ブレア政権への敬意を繰り返し示したストリーティングは、英国国民保健サービス(NHS)改革を主導し、強い市場親和的な改革論を強調してきた。「NHSは近代化しなければ死ぬ」という発言が代表的だ。イラク戦争支持の問題で一時労働党を離れたストリーティング保健相は、NHS改革の過程では官民連携と技術革新を強調する、いわゆる『ブレア主義』を継承したとの評価を受けている。
CNNはストリーティングについて「長年にわたり労働党の『穏健派の未来の担い手』と見なされ、政権内で最も優れたコミュニケーション能力を備えた政治家の一人との評価を受ける」と伝えた。ただし、最近ジェフリー・エプスタインをめぐる論争に連座して駐米英国大使職を退いた労働党の重鎮ピーター・マンデルソンと近しい関係にある点は弱点とされる。
◇ アンディ・バーナム(Andy Burnham)
党内左派と地方基盤の議員の間では、アンディ・バーナム(56)マンチェスター市長を代案と見る見方も少なくない。CNNは「労働党内部で『迅速な指導部交代』を主張する勢力はストリーティング保健相を支持し、『秩序だった権力移譲』を望む側はバーナム市長を好む」と伝えた。
バーナム市長は公共サービス拡大と地域均衡発展を強調する、いわゆる『マンチェスター主義』を掲げている。市場親和政策と福祉強化を組み合わせた『志向型社会主義』モデルとの評価だ。こうした路線のおかげで、バーナムは現在の英国で最も人気のある政治家の一人に挙げられる。マンチェスターを英国有数の成長都市の一つに育てたとの評価も出ている。
しかし現在下院議員ではない点は致命的な弱点だ。地方自治体の首長の身分であり、直ちに労働党代表選に出馬できないためだ。バーナム市長は今年、マンチェスター近郊の選挙区の下院議員補欠選挙への出馬を希望したが、労働党指導部の反対で頓挫したとされる。政界ではスターマー側が潜在的な競争相手をけん制したとの見方も出た。
バーナムは昨年のインタビューで「英国は債券市場の顔色をうかがう状態を脱すべきだ」と発言し、論争を招いた。この発言直後に英国国債利回りが急騰し、市場不安を刺激したとの批判が出た。
◇ アンジェラ・レイナー(Angela Rayner)
『貧困出身の女性政治家』という物語で注目を集めたアンジェラ・レイナー(46)前副首相も潜在候補群に挙げられる。率直で直截的な話法で、若い労働党支持層と伝統的な社会主義志向の有権者の間で人気が高い。
貧しい環境で育ち16歳で母親になったレイナーは、高齢者介護労働者と労働組合活動を経て政界に入った。レイナーは労働組合活動が政治入りのきっかけだったと繰り返し明らかにしてきた。
副首相と住宅相の時期、レイナーは労働党の中核政策の相当部分を主導した。住宅供給拡大、最低賃金引き上げ、借家人保護政策、『搾取的』ゼロ時間契約の制限法案などが代表的だ。これらの法案は来年施行される予定だ。
しかし昨年、英国南部の海岸地域の別荘に関連する税金を適切に納付していなかったという論争で、レイナーは副首相職を辞任した。単純なミスであり誤った法的助言によるものだったと釈明したが、未解決の税金問題が今後の党首選挑戦の負担になり得るとの観測が出ている。
◇ ダークホースたち
このほかにも、不法移民の取り締まり政策を担うシャバナ・マフムード(45)内相、労働党の元代表であるエド・ミリバンドエネルギー相なども潜在候補群として取り沙汰される。特にミリバンドは、気候意識が強い労働党の中核党員層の間で高い支持を得ているとされる。
英国政界では、スターマー体制の亀裂が単なる人物競争を超え、労働党の路線闘争だとの分析が出ている。ブレア式の中道拡張戦略を維持するのか、より強い福祉・再分配路線へ移行するのかをめぐって、党内の亀裂が広がっているということだ。まだ公式に代表選出馬を宣言した人物はいないが、公然の辞任要求が続く状況で、労働党内部の権力再編は事実上始まったとの評価が出ている。