2026年北中米ワールドカップ開幕がちょうど1カ月後に迫るなか、国際サッカー連盟(FIFA)が中国とインドで公式中継権契約を締結できていないことが明らかになった。両国の人口を合計すると約29億人で、世界人口の35%に達する。両国はいずれもFIFAが本大会拡大を断行するにあたり新たに取り込もうとしていた核心目標だった。
しかしFIFAは本大会出場の舞台はおろか、国内の視聴者すら安定的に確保できていない状況に置かれている。専門家は単にワールドカップ人気がしぼんだことによる事態ではなく、人口大国を狙ったFIFA側の天文学的な中継料要求と、収益性を冷静に精査する現地放送局の計算が衝突した結果とみている。
11日(現地時間)時点でFIFAは世界175カ国と中継権契約を締結した。事実上の主要国との交渉は終えたが、最も規模が大きい中国・インドとの交渉だけが漂流中だ。FIFAはこの日公式声明で「2026 FIFAワールドカップのメディア権利販売に関し、中国およびインドと協議が進行中だ」とし、「現段階では機密保持の原則により具体的に明らかにできる事案はない」と述べた。
ワールドカップは中国でも指折りのスポーツイベントだ。中国国営の中央テレビ(CCTV)は2018年と2022年大会の当時、数カ月前に権利を先行確保し、大会前からスポンサー広告を大々的に流した。今回のワールドカップのように開幕が1カ月前なのに公式契約発表がない状況は異例である。仮に今すぐ中継権契約が成立しても、企業が中継インフラを構築し広告販売を終えるまでの時間は5週間しかない。
中国チャイナデイリーなど現地メディアの報道を総合すると、FIFAは当初CCTV側に2億5000万〜3億ドル(約3650億〜4360億ウォン)を中継権料として要求した。CCTVの自前予算は6000万〜8000万ドル(約870億〜1160億ウォン)の水準だったとされる。両者の差があまりに大きく、FIFAがその後1億2000万〜1億5000万ドル(約1750億〜2200億ウォン)まで要求額を引き下げたものの、合意点はいまだ遠い状況だ。中国のワールドカップ中継権料は2010・2014年の2大会セット約1億1500万ドル(約1670億ウォン)から、2018・2022年のセット約3億ドル(約4360億ウォン)へと急騰した。CCTVとしては内部承認の上限をはるかに超える中継権料は受け入れられないという意味合いだ。
FIFAの統計によると、中国は2022年カタール・ワールドカップ当時、世界のデジタル・ソーシャルプラットフォーム視聴時間の49.8%を占めた圧倒的な市場だ。有線テレビ到達率でも世界1位で、視聴者5億1000万人を集めた。しかしアジアで開催された前回大会と異なり、今回のワールドカップは主要試合の相当数が北米開催日程に従い中国時間の未明や早朝に割り当てられる可能性が高い。未明の生中継に付く広告は単価が大きく下がる。
FIFAは今大会から本大会出場国を32カ国から48カ国へ、試合数を64試合から104試合へ増やした。中国のような新興サッカー市場の代表チームを本大会に呼び込み、グローバルな外延を広げる布石だった。ところが約2億人のサッカーファンを抱える中国代表は今回の拡張本大会すら通過できなかった。国家的な応援イベントとしての魅力が大きく低下した。そこに現地取材陣のビザ発給遅延まで重なり、放送品質の低下懸念も提起されている。
インドの状況も変わらない。合併を経て巨大プラットフォームとなったリライアンス—ディズニー合弁のジオスター(JioStar)は、今回のワールドカップ中継権としてわずか2000万ドル(約290億ウォン)を提示した。2022年カタール大会当時にリライアンス系のメディア部門が約6000万ドル(約870億ウォン)で権利を確保した点を踏まえると、金額は3分の1に割れた。FIFAがインド市場に期待した水準は6000万〜1億ドルだった。
インドは中国のようにサッカーをコンテンツとして消費しない。インドのスポーツメディア市場は徹底してクリケット中心で回る。インディアン・プレミアリーグ(IPL)の2023〜2027年中継権は総額62億ドル(約9兆ウォン)規模で取引された。これに北米開催でインド時間の相当数の試合が深夜以降に設定される点が加わり、広告収益性の評価をさらに押し下げた。ジオスターを除く他企業は早々に入札を放棄した状況だ。専門家は今回のワールドカップのインド中継権は、実質的に買い手側が取引を主導する見通しだと述べた。
FIFAは権利料の単価を守ろうとして最大の市場を丸ごと失う危険に直面した。FIFAは2026年の1年でワールドカップを含む総収入を89億ドルと見込む。このうち半分近い39億ドルが放送権販売収入の目標だ。直近大会のカタール・ワールドカップ比で約3分の1多い野心的な数値である。しかし中国とインドに巨額の中継権料割引を与えれば、他の新興市場が連鎖的に値下げを求める名分が生じる。
逆に最後まで粘って今回のワールドカップ中継が不成立となれば、スポンサー露出の打撃が甚大だ。中国ではモンニュウ、ハイセンスといったスポンサー企業が今大会に合算で約5億ドル(約7270億ウォン)以上を投じた。アディダスやコカ・コーラといったグローバルスポンサーも、世界最大市場である中国とインドで露出機会が失われる状況を歓迎しない。ロイターは専門家の話として「FIFAがアジア需要を過大評価した結果、オウンゴール(own goal)を決めかねない危機に陥った」と伝えた。
専門家は、CCTVが価格を一定水準引き上げ、FIFAが1億ドル前後まで目線を下げるか、インドのリライアンスが提示額を小幅に引き上げる線で妥協点を見いだす確率が高いとみている。単独中継権とハイライト編集権限を分離して販売するカードも取り沙汰される。中国のスポーツメディア専門家、イエン・チャンは「FIFAもグローバル市場の商業化を考慮すべき状況であり、中国もワールドカップに対する世論の重要性を考慮すべき立場だ」とし、「双方は最終的に妥協に到達するだろう」と述べた。