イラン戦争の余波でグローバル金融市場の不確実性が高まるなか、米欧英の主要中央銀行は一斉に金利据え置きの方針を維持するとの見方が強まっている。エネルギー価格の急騰と景気減速への懸念が同時に強まり、金融政策の方向性も定まらない様相だ。
米連邦準備制度(FRB・Fed)は29日(現地時間)の金融政策会合で政策金利を据え置く公算が大きい。市場は、FRBが戦争の経済への影響をもう少し見極めるとの見解を維持するとみている。英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、FRBが最大雇用と低インフレという二重の責務を改めて強調する見通しだと伝えた。
足元でFRBの政策見通しは大きく揺らいだ。戦争前は年内に2〜3回の利下げ期待が織り込まれていたが、戦争により原油価格が急騰した後は利上げの可能性まで取り沙汰された。その後、見通しは再び変化し、現在の市場は来年中盤までに1回の利下げの可能性を約50%とみている。今回の会合はジェローム・パウエルFRB議長にとって最後の会合となる可能性が大きい。ドナルド・トランプ米大統領が後任に指名したケビン・ウォーシュが現在、承認手続きを進めているためだ。
欧州中央銀行(ECB)も同様の状況だ。ECBは30日の会合で7会合連続の金利据え置きがほぼ確実視されている。クリスティーヌ・ラガルドECB総裁をはじめ政策委員は、足元のエネルギー価格急騰がインフレと成長に及ぼす影響を評価するにはまだ時期尚早だと強調してきた。BNPパリバは、ECBが3月以降のコミュニケーションでタカ派色を明確に弱めたと評価した。
ただし利上げの可能性が完全に消えたわけではない。とりわけ物価圧力が変数だ。ユーロ圏の4月インフレ率は年率2.9%へ上昇する見通しだ。これはECBの中期目標である2%を大きく上回る水準である。一方で成長は減速の兆しを示し、ユーロ圏経済が「スタグフレーション」リスクに近づいているとの懸念も出ている。野村は、この状況がECBに難しい選択を迫っていると評価した。金利を引き上げれば物価は抑制できるが景気減速を深める可能性があり、逆に金利を維持すればインフレ圧力が持続しかねないためだ。
英国の中央銀行であるイングランド銀行(BoE)も金利据え置きの可能性が高い。現在の政策金利3.75%を維持する見込みで、一部の政策委員の間では小幅な引き上げの必要性も提起されている。イングランド銀行は今回の会合で、イラン戦争を反映した経済見通しシナリオを併せて示す予定だ。エネルギー価格が上昇を続ければ利上げの可能性が再び浮上しうることから、市場の関心が集まっている。
専門家は、主要中央銀行が当面「観望モード」を維持するとみている。ダニ・ストイロバBNPパリバエコノミストは「必要な場合は利上げの可能性を開いておくが、金融政策委員会がまだ性急に引き上げに動くことはないというメッセージが出るだろう」との見方を示した。