コロラド川の水位が数十年ぶりの低水準に落ち込むなど、米国西部が記録的な干ばつに見舞われている。約4,000万人が依存するこの川を巡り、各州の水確保競争も一段と激しくなっている。こうした中、カリフォルニア州サンディエゴは「水の輸出都市」への変身を試みている。かつて水不足の象徴だったサンディエゴは、いまや余剰水を他州に供給している。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、アリゾナ州とネバダ州は最近、サンディエゴ郡水道局と協議し、カリフォルニア沿岸で生産される海水淡水化水を活用する案を進めている。北米最大規模であるカールズバッド淡水化施設で生産される水を基盤に、コロラド川への依存度を下げる狙いとみられる。
この取引は水を実際に移送する方式ではない。各州が淡水化施設の運営費を負担する代わりに、サンディエゴが保有するコロラド川の水資源割当量を引き継ぐ「権利交換」の構造だ。年間約5万6,000エーカー・フィート規模の水が取引対象として取り沙汰されており、これは約50万人が使用できる量だ。
サンディエゴのこうした変化は偶然ではない。サンディエゴは1990年代初頭の5年間続いた大干ばつを経験し、水供給の3分の1を失う危機に直面した。当時、水の大半を外部に頼る構造から脱却するため、二度と同じ状況を繰り返さないとの目標の下、大規模な投資を始めた。その後30年以上にわたり、サンディエゴは水資源の自立に莫大な費用を投じた。ダムを増設して貯水容量を2倍に拡大し、海水淡水化施設を建設し、さらにコロラド川流域の農業地域から節水で生じた水利用権も先行確保した。その結果、現在の外部依存度は過去の95%から現在の10%水準へと大きく低下した。
これに加え、市民の意識変化も一役買ったとWSJは説明する。サンディエゴの1人当たりの水使用量はこの25年間で約半減した。供給は増え、需要は減ったことで、市は想定外の余剰水資源を確保するに至った。こうした構造変化がサンディエゴを「水の輸入都市」から「供給都市」へと変えた。かつて水を買っていた都市が、いまは水を売る都市になったというわけだ。
いまサンディエゴは余剰水を新たな資産とみなしている。実際に現地の水資源当局は、余剰水を外部に供給してコスト負担を下げる方策を積極的に検討中だ。水の自立に投じた莫大な投資費用を回収しようとする戦略でもある。
この流れは米国西部全体に広がっている。水不足に直面する州は下水再利用や海水淡水化など新たな水源を確保する一方、州間の水取引によって不足分を補っている。ロサンゼルス一帯では最大150万人が使用可能な規模の下水再利用施設の建設も進められている。
技術の進展もこれを後押ししている。近年は海の深部で直接塩分を除去する洋上淡水化技術が試験され、コストと環境負荷を下げる試みも続いている。長期的には海上に水資源生産施設を設け、水を生産・取引する構想まで取り沙汰されている。
サンディエゴはすでに下水再利用でも先行している。「ピュア・ウォーター・サンディエゴ」という名称で供給される再生水はミネラル含有量が低く、地域のクラフトビール醸造にも活用されている。専門家は、こうした変化が水を見る観点を変えていると評価する。かつて単なる公共財だった水が、いまは投資と取引の対象となる資源へと変わっているとの分析が出ている。