「政府は特定の宇宙分野に集中するかどうかを事前には定めない。現場からどのような提案が出るかを見て、それに合った支援プログラムを設計するだけだ。」
24日(現地時間)ベルンで会ったヨナス・ハビヒスイス宇宙局(SSO)科学顧問は、スイスの宇宙産業の特徴をこのように説明した。スイスは欧州を代表する宇宙強国である。50年前、アポロ11号が月に着陸した後に実施した最初の実験も、スイスが開発した太陽風測定器だった。その後スイスは衛星、ロケット部品、宇宙ロボットなどの核心技術分野で存在感を高め、欧州宇宙機関(ESA)の創設メンバーかつ主要拠出国として地位を固めた。
驚くべき点は、スイスの宇宙政策を統括するSSOの人員がわずか15人にすぎないという事実である。政府組織は小さいが産業は強い構造だ。政府が産業の方向を一方的に定めず、企業や大学など民間の現場で生まれたアイデアが産業の流れを主導する。スイス政府はその流れが確認されてから支援に乗り出す。大学と企業が中心となる「ボトムアップ(Bottom-up)」体制は、スイスの宇宙産業のみならず国家全体の競争力の核心的背景とされる。
◇ アイデアが産業になる「イノベーションパーク」
このようなボトムアップ構造は「スイス・イノベーションセンター」で具体的に具現化される。スイス・イノベーションセンターは産学官のイノベーション生態系構築と研究の商用化のため、政府と民間が協力して設立した非営利機関だ。現在チューリヒ、ローザンヌなど全国6カ所でイノベーションパークを運営中で、約700の企業と研究機関が入居している。このうち宇宙産業に集中するのはチューリヒ・イノベーションパークだ。
スイス・イノベーションパークは単なるオフィス空間を超え、企業、研究者、公共機関をつなぐ「プラットフォーム」の役割を果たす。代表的事例である「放物線(Parabolic)飛行プログラム」は2015年、研究者の好奇心から出発した。航空機を放物線軌道で飛行させて無重力状態をつくり、物理・生命科学の実験を行うこのプログラムは10年以上運用され、国際宇宙ステーション(ISS)の実験にまで拡張した。研究成果の一部は国際学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ・フィジクス」に掲載されたこともある。
コラ・ティエルスイス・リヒテンシュタイン宇宙航空センター(CSA)国際協力ディレクターは「良いアイデアがあれば政府の指示を待たずに自ら始める」と述べ、「このように出発したプロジェクトが有機的に成長して成果を立証すれば、その時に政府が支援に乗り出す構造だ」と説明した。
このようなイノベーション体制は地域や分野を問わず同様に作動する。ローザンヌ・イノベーションパーク(PARK WEST EPFL)はローザンヌ連邦工科大学(EPFL)など近隣の学術インフラを中心に、この10年間で300社以上のディープテック系スタートアップを輩出し、50億ドル(約7兆ウォン)超の投資を誘致した。ジョバンニ・ポルチェラーナ副所長は「われわれの目標は、企業が研究生態系と自然に協力できる能力を備えるよう支援することだ」と述べ、「大企業が学界との協力を効果的に活用するときに最も大きな価値が創出される」と語った。実際、ここにはTSMC、ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー(LVMH)などグローバル企業が協力パートナーとして参加している。
◇ 「小さな政府」がつくったイノベーション強国
現場が政策を牽引するボトムアップ構造は、スイス特有の政治文化に根を下ろしている。直接民主主義と地方分権が発達したスイスでは、政府が一方的に方向を示すよりも、市民と地域社会の選択を優先する。産業政策もまた、民間で形成された流れを連邦政府が制度的に下支えする方式である。
政府介入を最小化した構造は、逆説的に高い効率を生んだ。学界と企業は短期的成果に埋没せず、長期的な「破壊的イノベーション」に集中できるようになった。この環境のおかげで、スイスは世界イノベーション指数(GII)で15年連続1位を記録している。
制度的な下支えも強力だ。規制は緩和する一方、知的財産権(IP)の保護は徹底している。平均法人税率は約12%水準で、IP所得に対しては最大90%の税制優遇を与える。とりわけ「欧州の中の米国」と言われるほど企業に親和的な環境も、スイスの強みとされる。
これに後押しされ、グーグルは米国外で最大規模の研究・開発(R&D)センターをチューリヒに設立し、マイクロソフト、アップル、Meta(メタ)、エヌビディアなどグローバル・ビッグテックもスイスを欧州の拠点としている。これは再び国内の学界とスタートアップ間の協力を強化する好循環構造へとつながっている。