イランがドナルド・トランプ米国大統領のホルムズ海峡開放要求を受け入れ、双方が2週間の休戦に合意したなか、イラン戦争が中国経済に一定部分でプラスに作用しているという分析が出ている。ホルムズ海峡封鎖による原油高が物価を押し上げ、むしろ中国のデフレ(物価下落)圧力が一部緩和されたということだ。これにより中国金融当局の金融緩和ペースを調整する余地も生じたとの評価である。
8日ブルームバーグ通信によれば、中国は新型コロナ後にインフレ(物価上昇)に直面している主要国と異なり、物価下落圧力が続いている。不動産不況が長期化し内需が回復せず需要が弱いうえ、企業間の価格競争が激しいためだ。ここに米国発の関税戦争による不確実性まで重なり、中国の中央銀行である人民銀行は景気を下支えするために継続的に利下げを行ってきた。
しかし最近1カ月余り続くイラン戦争で国際原油価格が急騰し、原油高が物価を刺激するなかで、中国経済がデフレ圧力から抜け出す可能性が提起されている。中国国家統計局によると、中国の消費者物価は2月に入り約3年ぶりの大幅上昇となった。10日に発表される3月の消費者物価は原油高の影響を受け、前月よりさらに上昇すると見込まれる。ブルームバーグは、長期間続いた生産者物価の下落傾向も次第に鈍化するか、上昇局面へ転じると予想した。
金融市場でも変化の兆しが感知される。景気を下支えするために資金を供給してきた人民銀行は3月に入り再び資金を吸収する動きを見せ、債券市場でも長短金利差が拡大した。一般に短期金利は足元の見通しを、長期金利は今後数年の見通しを反映するが、長期金利がより大きく上昇し、将来の物価上昇期待が織り込まれたと解釈される。
これにより市場では人民銀行の利下げ期待が弱まっているとブルームバーグは伝えた。バンク・オブ・アメリカは人民銀行による2回の利下げ見通しを撤回し、今年の物価指数上昇率見通しも上方修正した。ブルームバーグは「人民銀行の利上げはまだ先だが、利下げの根拠は予想ほど明確ではない状況だ」と述べた。
ただし、この流れの変化が全面的にイラン戦争によるものではないという意見もある。中国政府は企業間の過度な価格競争を抑制する政策を着実に進めてきており、その結果、1〜2月の工業利益も前年同期比15%増を記録し回復基調を示している。不動産市場も長期低迷の後に一部で安定の兆しが現れている状況だ。
ブルームバーグは、こうした政府政策の効果でデフレ圧力が一部緩和する流れのなか、原油高が重なって物価反騰をさらに刺激したと分析した。ブルームバーグは「(中国の立場から)イラン戦争は有利な時点に重なった」とし、「グローバルなインフレ環境が(今回は)中国を素通りしなかった。これにより人民銀行も一部の負担を下ろすことができる状況になった」と述べた。続けて「仮に人民銀行が金融緩和を断行するとしても、それは切迫した必要によるものではなく、政策的選択に近いだろう」と付け加えた。