米国とイランの戦争余波でホルムズ海峡の封鎖が長引き、「ガソリンが安い米国」という長年の通念が崩れつつある。世界最大の原油生産国である米国内のガソリン価格はロシア・ウクライナ戦争当時だった2022年以降の最高値に跳ね上がった。カリフォルニア州のような一部地域では、ガソリンスタンドで販売するガソリンの1リットル当たり価格が韓国より高くなるという奇現象まで起きている。
6日(現地時間)米国自動車協会(AAA)は、前日時点の米国全国平均ガソリン価格が1ガロン当たり4.11ドルで、この1カ月の間に86セント急騰したと伝えた。AAAは1902年に設立された米国最大の自動車クラブ連合体で、1970年代のオイルショック時から給油価格調査を行ってきた代表的な民間集計機関である。
集計によると、とりわけ西海岸地域のガソリン価格が最近鋭く上昇した。5日時点のカリフォルニア州平均ガソリン価格は1ガロン当たり5.92ドル、シアトルなどが属するワシントン州は5.37ドルを記録した。カリフォルニア州の価格をリットル当たりのウォンに換算すると約2366ウォンである。同日基準でオピネットが公示した韓国全国平均ガソリン価格であるリットル当たり1961ウォンを軽々と上回る。ハワイ(約2233ウォン)、ワシントン(約2149ウォン)、ネバダ(約1997ウォン)など米国西部の主要地域の平均ガソリン価格も韓国より高くなった。
米国は世界最大の原油生産国である。エネルギー自給に問題がなさそうに見えるが、ガソリンの小売価格は産油量より税金や環境規制、物流条件に左右される度合いが大きい。例えば現在米国内で最高値のガソリンスタンドがあるカリフォルニア州モノ郡は、険しい山岳地形で周辺都市のない孤立した地域に位置する。加えてカリフォルニアは大気汚染を減らすため、連邦基準より厳しい独自のガソリン規格(CARBガソリン)を適用している。カリフォルニアで販売されるガソリンは従来のガソリンに比べて精製工程が複雑で生産費が高い。CNNは専門家の話として「米国全体の産油量が潤沢でも、原油をガソリンに変える製油設備が不足し、州ごとに租税政策が異なるため小売価格が千差万別に開く」と伝えた。
また米国は燃料税が低く、平時のガソリン価格は韓国より割安だが、税負担が小さいぶん国際原油価格の変動がそのまま価格に反映される。これに対し韓国は税負担が大きく価格は高い代わりに、一定の緩衝効果がある。このため米国は原油高局面で価格上昇幅がより大きくなる「変動型構造」という特徴がある。こうした点も最近の米国ガソリン価格の乱高下に影響した。
高騰するガソリン価格は米国経済全体にも重い負担を強いている。燃料費の上昇は巨大な物流費の爆弾となって企業と消費者を直撃した。グローバル電子商取引企業アマゾンと格安航空会社ジェットブルーなど主要企業は、生き残りのため一斉に運賃燃油サーチャージを課し始めた。米国の経済専門メディアCNBCはこれを「米国企業と消費者が避けられない一種の戦争税を払っている」と分析した。
国際原油のベンチマーク指標は7日現在、1Barrel当たり100ドルをはるかに上回る110ドル台で推移している。投資銀行JPモルガンは、ホルムズ海峡の封鎖が今月中旬まで続けば米国全国平均ガソリン価格が1ガロン当たり5ドルを突破する危険があると警告した。過去最高だった2022年6月に迫る水準だ。米国の大半の地域では広大な国土のため自動車なしに日常生活が難しい場合が多い。このためガソリン価格の暴騰は家計の実質所得減少に直結する。さらに食料品から生活必需品まであらゆる物価がガソリン価格に連動して上がり始めれば、消費マインドは急速に冷え込む。専門家は、圧迫された生活費負担で民心が悪化すれば、11月の米国中間選挙を前にトランプ大統領への政治的圧力が最高潮に達すると見立てた。
トランプ政権は米国内のガソリン価格が心理的な抵抗線である1ガロン当たり5ドルを上回る場合、最後の切り札として戦略石油備蓄(SPR)を大規模放出する可能性が大きい。とりわけ夏の休暇シーズンが本格化する前の晩春ごろに先制措置に踏み切るとの見方が支配的だ。一部では、備蓄油を放出すれば即時的かつ一時的な価格下落は誘導できるが、精製設備のボトルネックと軍事的緊張という本質的な原因が消えない限りは弥縫策にすぎないという警告も出ている。
原油分析企業スパルタ所属のニール・クロスビー副社長は米公共放送PBSに「備蓄油の放出は、規模がどれほど巨大でも傷に小さな絆創膏を貼るレベルだ」と一蹴した。ホルムズ海峡の緊張緩和という外交的妥結なしには、米国を襲った原油高ショックは容易に終わらない見通しだ。