昨年「America First(米国第一主義)」を掲げたドナルド・トランプ米政権の発足以降、グローバルサプライチェーンの中心軸が速いペースで米国へ移行している。米国が自国内に生産拠点を整備する企業に優遇を提供するなか、韓国企業も業種を問わず米国現地での工場建設と投資を約束している。
しかし韓国企業の米国進出は新たな機会であると同時に複雑な課題を伴う。州ごとに政策が異なるうえ、韓国とは異なる制度や労働市場、ネットワーク構築など多様な問題を解決してこそ安定的に定着できるためだ。十分な経験と資本力を備えていない企業にとっては、米国進出そのものが大きな挑戦となる場合もある。
この過程でグローバル企業がサプライチェーン構築リスクを抑えるために頼る先が、グローバル不動産サービス企業のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(以下、クッシュマン)だ。クッシュマンは世界60カ国に進出し、不動産の売買・賃貸・管理・評価・アドバイザリーなど不動産全般にわたる総合サービスを提供している。このなかで米州の物流・産業部門は、多国籍企業の米国進出を支援する中核組織である。
ジェイソン・トリヴァー米州物流・産業部門代表は、米国を含む米州全域10カ国、240拠点で活動する産業部門の専門家と協業し、多国籍企業の米国市場進出アドバイザリー、大規模製造投資プロジェクト支援、顧客企業のサプライチェーンネットワーク設計と実行などを支えている。トリヴァー代表は先月に韓国を訪れ、企業を対象に米国の産業投資戦略セミナーも行った。以下はトリヴァー代表との一問一答である。
―具体的にどのような仕事をしているのか。
「重要な業務の一つは、韓国企業を含むグローバル企業と緊密に連携し、企業が米国で事業を拡大する際に支援することだ。企業が地域ごとの差異を理解できるよう助け、サプライチェーンと立地戦略を評価し、現地ではプロジェクトが効率的に実行されるよう全方位で支援している。
より広く見ると、ニアショアリング(生産拠点を隣接国へ移すこと)、先端製造、インフラ、労働市場の変化など需要面に表れる新潮流を把握し、こうしたインサイトを顧客が実行可能な戦略へ転換する役割も担っている。結局のところ私の役割は、不動産、サプライチェーン戦略、資本市場の交差点にあるといえる。」
―最近、製造企業のサプライチェーン戦略はどう変わったか。
「新型コロナのパンデミック以後、サプライチェーン戦略は効率性中心からレジリエンス中心へと変化している。過去には低コスト国に生産を集中し在庫を最小化するJust in Time(適時生産方式)によってコスト削減に注力していた。しかしこのモデルは地政学的緊張、生産停止、輸送ボトルネックなど突発事象に脆弱であることが明らかになった。
今日の企業は「地域化」「バッファ構築」「デジタル化と可視性」という三つの原則を軸に生産・物流戦略を再設計している。単一国家中心の生産から脱し多地域の製造体制へと移行し、デュアルソーシングや安全在庫の拡大、追加の流通拠点構築などによってリスクを分散している。
物流不動産の側面でも、工場近接の主要物流都市、内陸物流ハブ、コールドチェーンや先端製造施設などの特殊産業用不動産の需要が急速に増加している。いまや企業はサプライチェーンを単なるコスト削減手段ではなく、競争力を左右する中核戦略とみなしている。」
―最近、米国で「local-for-local(現地生産拡大)」戦略が強調されているというが。
「製品を販売する現地市場の近隣で原材料を調達し生産するこの戦略は、グローバル企業の資本配分のあり方を根本から変えている。単に生産設備を移転するにとどまらず、サプライチェーン全体のバリューチェーンを最終市場中心に再構成する動きだ。
自動車、電子、半導体、消費財など多様な産業でグローバル企業が米国の生産施設に大規模投資を進める一方、隣接するサプライチェーンネットワークにも投資している。一次・二次の協力企業が主要工場の近隣に拠点を構えることで、地域化されたサプライチェーンが形成されている。
その結果、米国中西部と南東部、米国・メキシコ国境地域で産業クラスターが形成される趨勢だ。工場だけでなく、大型物流センター、クロスドック(Cross-dock)、ラストマイル物流センターなど多様な産業用不動産への需要も増加している。」
―韓国企業の米国投資の流れはどう変わったか。
「過去の韓国企業は市場参入中心の戦略を取っていた。韓国やアジアの生産拠点で作った製品を販売するために米国に販売法人を設立し、限定的な製造・組立施設を運営する水準だった。米国市場は製造工程の下流段階にとどまっていた。
しかし最近は生産とサプライチェーンを完全に現地化する方向へ戦略が変わっている。電気自動車用電池、半導体、先端製造などサプライチェーンの上流段階で大規模投資が行われ、補助金の資格確保や地政学的リスクの緩和、コア技術と顧客へのアクセス確保に向け、サプライチェーン全般を現地で構築している。
投資地域も米国全域へと多様化しており、米国パートナーとの共同投資や合弁投資も拡大している。これは韓国企業が単なる輸出企業を超え、米国の産業エコシステムの構成員へと変化していることを意味する。」
―韓国企業が米国進出の際に最も悩む部分は何か。
「まず用地選定とコスト構造だ。米国は単一市場ではなく、異なる地域経済が結合した市場であるため、企業は労働力、賃金水準、エネルギーコスト、インフラ、顧客およびサプライヤーとの距離などを総合的に検討しなければならない。
労働力の確保も重要な課題だ。サプライチェーンを構築するには熟練かつ安定的な人材の確保が要であり、特に先端製造への投資が集中する地域では人材需要が供給を上回る場合が多い。採用だけでなく、現地人材の教育と長期的な定着、韓国式経営文化との調和も併せて考慮する必要がある。
このほか、連邦・州・地方政府にまたがる規制と政策体系のマネジメントや、信頼できる現地サプライヤーと物流インフラの確保も重要な課題だ。「現地生産拡大」戦略は単一の工場設立だけでは完結せず、一部の企業は中核の協力企業を米国へ進出させるか、新たなパートナーシップを構築する必要がある。」
―クッシュマンはどのように韓国企業を支援しているのか。
「最近、大規模投資プロジェクトを検討していた韓国の先端製造企業を支援した。ソウルのグローバル・コリア・デスク(GKD)チームは顧客経営陣と緊密に連携し、顧客への距離、人材確保の可能性、プロジェクトのスケジュールなど中核の優先順位を定義した。同時に米国チームは、労働市場分析、インフラ評価、インセンティブ交渉を含め、複数州にわたる用地選定プロセスを進めた。
この種のプロジェクトは、ソウルのGKDと北米チームのクロスボーダー(国境間)協業によって進む。単にオフィス間で業務を受け渡す方式ではなく、初期の戦略立案から現地での実行までつなげる統合的な双方向運営モデルである。特にソウルのGKDチームは顧客と緊密に協力し、企業の戦略目標と意思決定構造、文化的コンテクストを深く理解し、プロジェクトの初期方向性を定める。」