米国とイスラエルの空爆でアヤトラ・アリ・ハメネイ前イラン最高指導者が死亡したのに続き、イランの安保首長格であるアリ・ラリジャニまでが命を落とし、イラン指導部の混乱が拡大している。
17日(現地時間)英ガーディアンは「(ラリジャニの死は)戦争初期にハメネイを失ったときよりもさらに大きな後退(a bigger reverse)となる可能性が高い」と報じた。英BBC放送も「ラリジャニの死が及ぼす影響は単に一人の高位官僚を失うことにとどまらない」とし、「戦争の流れとイラン国家自体の安定にまで影響を及ぼし得る指導力の危機を深める可能性がある」と伝えた。
ラリジャニはハメネイ死亡後、事実上イランの『実質的指導者』として浮上していた。タイムズ・オブ・イスラエルは「ラリジャニはハメネイが死亡した後、政権の核心人物だった」とし、「ラリジャニはハメネイが直接指名した権限代行であり、多くの人々がハメネイ死亡後にラリジャニをイスラム共和国の実質的指導者と見なした」と伝えた。イスラエルのシンクタンク、ミスガブ国家安全保障・シオニズム戦略研究所のメイル・ベン・シャバト所長は「ラリジャニの地位と影響力は、ラリジャニが担っていた公式職責をはるかに上回っていた」と語った。
ラリジャニは最高国家安全保障委員会(SNSC)事務総長として、戦争、外交、国家安全保障に関する意思決定の中心に立っていた人物である。とりわけ、事実上の『戦時総司令官』としての役割を担い、イランが攻撃を受けた場合には湾岸諸国の指導者に対し、自国領内の米軍基地を合法的な攻撃目標と見なすというメッセージを伝達する戦略の立案に大きな影響力を行使したとされる。
ラリジャニの死によりイラン情勢の『外交的解法』は事実上遠のいたとの分析が出ている。ガーディアンによれば、ラリジャニはマスード・ペゼシキアン大統領よりも湾岸諸国の指導者にメッセージを伝える上で信頼される人物と受け止められていた。保守性向のイラン出身政治アナリスト、ハテフ・サレヒはソーシャルメディア(SNS)を通じて「このように重大で危険な時期にラリジャニの不在は外交に深い影を落とし、終戦に向けた低コストの政治的解法を見いだす可能性を低下させる」と指摘した。
イラン指導部の間では身辺に対する不安感も強まっている。米国とイスラエルがイラン指導部を追加で排除する意思を示したためだ。イスラエル軍のエフィ・デフリン准将(報道官)はこの日、記者会見で「われわれはイラン政権のあらゆる指導部を打撃している」と述べ、モジュタバ・ハメネイを「追跡して見つけ出し、最終的に無力化する」と明らかにした。先立ってドナルド・トランプ米大統領もモジュタバ・ハメネイのイラン最高指導者選出に関連し「われわれの承認を得なければ、モジュタバ・ハメネイは長くはもたないだろう」と言及したことがある。
実際にイラン内部でも指導部の安全に対する不安が広がっている。匿名のイラン政府関係者はニューヨーク・タイムズ(NYT)に「ほかの関係者から、イラン指導部はもちろん自分たちの安全を心配する電話を何度も受けた」とし、「誰が次の攻撃対象になるのか皆が気にしている」と語った。別の関係者はラリジャニの殺害の知らせを伝える電話を受けて体が震えたとし、イスラエルがイラン指導部をすべて排除しイスラム共和国を崩壊させるまで止まらないという不安感が広がっていると伝えた。
一部ではラリジャニの死がイラン国内の強硬派の影響力を高めるとの見方も出ている。イスラエル情報機関モサド出身のシマ・シャイン、テルアビブ国家安全保障研究所(INSS)主席研究員は「ラリジャニは穏健派政治家と強硬派軍指導者の双方と協力できる実用主義者と評価されていた」とし、ラリジャニの死が、イラン革命防衛隊(IRGC)司令官出身で現国会議長のモハンマド・バーゲル・ガリバフのような強硬派に力を与え得ると述べた。
タイムズ・オブ・イスラエルも「(ラリジャニの死によって)イラン政権が完全に終焉を迎えるわけではない」とし、「イランの代理勢力であるハマスとヒズボラは、イスラエルの一連の指導部排除の空爆と作戦にもかかわらず、依然として活動している」と伝えた。