米国とイスラエルが28日(現地時間)、イラン全土を標的とした大規模軍事作戦に着手し、イランも直ちにイスラエルと域内の米軍基地に向けたミサイル・ドローンによる報復に乗り出し、衝突が中東全域へ拡大している。ウクライナ戦争の長期化の中で中東で再び武力衝突が激化し、グローバルな安全保障と経済全般に及ぼす波紋も大きくなるとの懸念が出ている。
今回の攻撃は核プログラムと弾道ミサイルを巡りイランと米国の間で緊張が最高度に達する中で行われた。米国は空母打撃群2個と大規模な戦闘機を中東に展開してイランを圧迫する一方、スイスとオマーンなどで26日まで3回にわたり核協議を続けたが、イランが核兵器を放棄する意思はないと最終判断したとみられる。
◇ トランプ「核兵器を決して持たせない」
ドナルド・トランプ米国大統領はこの日、ソーシャルメディア(SNS)トゥルースソーシャルに投稿した8分の動画で「少し前にイラン内で重大な戦闘を開始した」とし「我々の目標は、差し迫ったイランの脅威を除去することで米国民を保護することだ」と明らかにした。
トランプはイランが核プログラムの再建を試み、「核の野望を放棄するあらゆる機会を拒否した」とし「我々はこれ以上我慢できない」と述べた。続けて、イランのミサイルおよびミサイル産業、海軍の破壊などを今回の作戦の主要目標として示し、「我々はイランが核兵器を決して保有できないようにする」と明らかにした。
録画演説ではイラン国民に向けて「政府を掌握せよ」とし体制転覆を促し、その後SNSには「イランは2020年と2024年の米国選挙に介入してトランプを阻止しようとし、今や米国との再開された戦争に直面している」との投稿も行った。米国防総省は今回の作戦名を「壮大な怒り作戦(Operation Epic Fury)」と発表した。
米国の軍事行動には中東の中核同盟国であるイスラエルも加わった。イスラエルは米軍と共にイラン国内の軍事目標物数十カ所を攻撃したと発表した。イスラエル軍は、テヘランでイラン高位当局者が集まった複数の場所と西部イランのミサイル発射台を攻撃対象に含めたと説明した。
イスラエル公共放送カン(Kan)は、今回の空爆対象にアヤトラ・セイエド・アリ・ハメネイ最高指導者とマスード・ペゼシキアン大統領も含まれていたと報じた。2人の生死は確認されていない。ベンヤミン・ネタニヤフイスラエル首相は今回の作戦を「ほえるライオン」と命名した。
イラン国営IRNA通信など現地メディアによると、この日午前10時、首都テヘラン市内では空爆で爆発とともに濃い煙が立ち上った。ゴム、イスファハン、ケルマンシャー、カラジなど各地でも爆音が聞こえた。イラン国営メディアは南部地域のある女子校が空爆を受け、少なくとも51人の生徒が死亡したと伝えた。ロイター通信は当局者を引用し、ハメネイが現在テヘランにはおらず、安全な場所へ居を移した状態だと報じた。
◇ イランの報復で中東拡大戦に「一触即発」
イランは米国とイスラエルの攻撃を国際法違反の侵略行為だと規定し、即座に反撃に出た。イラン革命防衛隊(IRGC)はイスラエルに向けた初の大規模ミサイル・ドローン攻撃を開始したと発表した。同時にバーレーンに駐留する米海軍第5艦隊を狙ったとも主張した。イラン軍はまた、カタール、バーレーン、クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)にある米軍基地にミサイルを発射したと明らかにした。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が引用した米政府当局者3人によると、イランの攻撃はバーレーンの米軍基地を打撃して施設に被害を与えたが、人命被害はなかった。米軍関係者によれば、米海軍第5艦隊司令部がある基地が被弾し、倉庫1カ所が損傷した。イラン外務省は「戦争を防ぐために必要なあらゆる措置を取ったが、今やイラン国民を防衛する準備ができている」として強硬対応を予告した。
イスラエル軍当局は本土全域で防空サイレンを鳴らし、事業所の閉鎖と休校令も発表した。イスラエルの救急機関マゲン・ダビド・アドムは、北部地域で爆発により負傷した1人を治療中だと明らかにした。
湾岸地域各地でも爆発が相次いだ。UAEは2次のイラン攻撃を迎撃したと明らかにし、1次攻撃でアブダビで民間人1人が死亡したと発表した。サウジアラビア・リヤド、バーレーン・マナマ、カタール・ドーハでも爆発音が聞こえ、カタール国防省は自国を狙った複数のミサイルを迎撃したと明らかにした。ヨルダンは弾道ミサイル2基を撃墜したと発表した。
◇ 航空便に支障…ホルムズ海峡が封鎖されれば「原油高騰」
中東の航路も直撃を受けている。イラン民間航空局はこの日、米国とイスラエルの空爆後、自国の領空が無期限で閉鎖されたと明らかにし、イスラエルも民間航空機の領空進入を禁ずるなど領空閉鎖を発表した。カタールは一時的に領空を閉鎖し、カタール航空はドーハ発の航空便を全面停止した。
イラクは領空を閉鎖し、シリアも南部の一部領空を12時間閉鎖した。ロシアはイラン・イスラエル行きの商業便を無期限で停止し、エールフランス・ルフトハンザ・ターキッシュエアラインズ・エアインディアなども相次いで中東路線の運航を停止した。
国際社会の反応は割れた。フランスは国連安全保障理事会の緊急会合招集を求め、拡大戦の停止を促した。オマーン外相は「衝撃を受けた」と明らかにし、英国は「広範な地域戦争へ拡大する危険」を警告した。オーストラリアとカナダは米国の措置を支持すると明らかにした一方、ロシアは今回の空爆を「危険な冒険」と批判し、パキスタンは「正当性のない攻撃」だとして即時の拡大戦停止を促した。欧州連合(EU)は民間人の保護を強調した。
今回の事態が世界経済に及ぼす波紋への懸念も高まっている。中東の航路の大半で利用に支障が生じる中、イランが報復の一環としてホルムズ海峡を封鎖する場合、原油価格の急騰は避けられないとの懸念が出ている。ただし現時点まで関連する動きは伝わっていない。