足元のグローバル金融市場で中国の「脱ドル」動きが加速しているとの評価が相次ぐなかで、中国が実際には国有銀行を動員し前例のない規模でドルを買い集めているとの分析が出ている。
米国外交問題評議会(CFR)のエコノミストで著名経済学者のブラッド・セッツァーは、フィナンシャル・タイムズ(FT)への寄稿で「中国人民銀行の公式外貨準備高の指標に惑わされてはならない」と指摘した。セッツァーは、中国が昨年12月だけで1,000億ドル超の外貨を買い入れ、1月にも700億ドル前後のドルを追加取得したと伝えた。これは月次ベースで過去最大水準の為替介入規模だ。
セッツァーは表面上は中国人民銀行の外貨準備が大きく増えていないと指摘し、その理由として実際のドルが国有商業銀行のバランスシートへ移ったためだと説明した。中国は公式準備を積み増す代わりに、国有商業銀行という「倉庫」にドルを保管する方式を取っているためだ。
足元では中国の輸出企業が人民元の上昇期待を背景にドルを売却して人民元を確保しようとする動きを見せている。これを受け、一部では中国の米国債保有残高が減ったことを根拠に脱ドル化が進行中だとの解釈も出ている。実際、米国内の受託機関に保管された中国の米国債保有額は減少した。しかし、これはドル資産の比率調整や米国以外の受託機関の活用拡大に伴う会計上の移動である可能性が大きいとの指摘だ。
セッツァーは、中国の米国債保有量の減少は資産の多様化や受託機関の変更に伴う技術的な調整に過ぎず、対外資産の蓄積全体が止まったわけではないと強調した。実際、国有商業銀行が保有する外貨資産の相当部分はドル資産と推定される。セッツァーは、中国が経常収支の黒字を維持し、輸出中心の経済構造を堅持する限り、ドル資産から完全に離れるのは難しいと分析した。人民元をドルに連動させて管理し、輸出競争力維持のために相対的に弱い通貨を選好する限り、市場に流入するドルを継続的に吸収せざるを得ない構造だということだ。
同時にセッツァーは「ドルは消えたのではなく、単に表に見える所在が変わっただけだ」と分析した。