米国ビッグテック企業が高度技術人材の確保に難航している。大規模な人員削減が続く状況でも中核エンジニアの採用は容易ではない。年俸とブランド力で人材を引き寄せてきた公式が通用しなくなっている。スペースXは人里離れた基地で人材を説得できず、アマゾンはオフィス復帰方針で採用競争力が揺らいでいる。グーグルは人材が集積する海外拠点へ重心を移している。
◇「孤島」に位置するスペースXは「技術の修道院」
イーロン・マスクは最近、テック系ポッドキャスト司会者のドゥワカルシ・パテルとのインタビューで意外な採用上の悩みを打ち明けた。スペースXのテキサス南部のロケット基地「スターベース」でエンジニアを採るのが特に難しいというものだ。マスクはこの基地を「技術の修道院」と比喩的に表現した。人里離れた地域にあり、ほとんどが男性エンジニアのみが常駐する環境だという説明だった。
スターベースはスペースXの次世代超大型ロケット「スターシップ」を開発する中核拠点である。会社が将来を賭けるプロジェクトの中心だが、肝心の人材呼び込みでは足かせになっている。マスクは「エンジニア本人より配偶者や家族が移住を嫌がる場合が多い」と語った。スペースX以外に選べる職場がほとんどなく、生活インフラも大都市に比べて不足しているためだ。
このように最先端のロケットを打ち上げる企業でさえ、生活条件と家族の問題の前では採用競争力を失っている。単に年俸を上げれば解決する問題ではないことが浮き彫りになった格好だ。テック人材の採用で住環境と家族の暮らしまで考慮すべき時代になったことを示す分析が出ている。
◇アマゾン、「出社強制」が人材獲得の難しさを招く
アマゾンは全く別の理由で人材獲得に重荷を抱えている。アマゾンは昨年から全社員に週5日の出社を求めている。対面での協業と組織文化の強化を理由に掲げたが、海外メディアは「この方針が従業員流出と採用競争力の低下につながり得る」と指摘した。
コロナ禍以降、リモート・ハイブリッド勤務が拡大し、柔軟な就業環境は事実上の基本条件として定着した。一部の従業員は「リモート勤務を前提に入社した」と明らかにし、出社方針が強化された後に転職を考えたり入社を断念する事例も出ている。
アマゾンはシアトルやニューヨークなどの大都市に本社を置く。スペースXのように人里離れた地域に位置するわけではない。それでも「どう働くか」という問題が採用の障害として浮上した。同一の年俸条件であれば、より柔軟な勤務環境を提供する企業を選ぶという認識が広がり、働き方そのものが競争力になった。
◇グーグル、人がいる場所へ組織を移す
これに対しグーグルは戦略自体を変えた。米国内での人材確保が一段と難しくなる中、インドのベンガルールやハイデラバード地域などへエンジニアリング組織の中心を拡大している。これは単なるコスト削減を超え、ビザの不確実性と人材供給構造を考慮した選択だという分析が出ている。
グローバル・ビッグテックは長らくシリコンバレーを中心に人材を吸収してきた。しかし人件費の上昇、ビザ政策の変化、熾烈な人材争奪戦が重なり、米国内の採用だけでは成長戦略の維持が難しくなった。これに伴いグーグルをはじめとする企業は、核心技術の開発人材まで現地で採用し、人がいる場所へ組織を移す手法を選んでいる。
これは米国本社中心の構造から離れ、グローバル分散型組織へ転換する流れを示す。人材を本社へ呼び込む代わりに、人材が集積する地域に拠点を設ける戦略である。
このようにグローバルテック企業の人材難は単なる人手不足とは異なる様相を呈している。賃金水準と企業の知名度だけでは中核人材を確保しにくい構図が形成されているという分析だ。働き方と地域、生活条件などが採用競争力を左右する変数として浮上している。今後、テック企業の人材確保戦略にも変化が不可避だという見方が出ている。