かつて「スタートアップ国家」を標榜し欧州のビジネス拠点として君臨してきたフランスの威信が揺らいでいる。エマニュエル・マクロン仏大統領の任期末が近づくなか、フランス経済の強力な後ろ盾だった米国投資家の信頼が過去最悪の水準へ急落したとの調査結果が出た。
18日(現地時間)のブルームバーグによると、在仏米国商工会議所(AmCham France)とベイン・アンド・カンパニーが実施した年次調査で、フランス経済を楽観視するとした米国投資家は回答者の17%にとどまった。これはマクロン大統領就任初期の2018年の72%と比べると惨憺たる水準だ。調査によれば、回答者の55%がこの1年でフランスの状況は一段と悪化したとし、77%が政府に必要な経済改革を遂行する能力があるとは信じられないと答えた。
米国企業はマクロン政権以降に断行された法人税引き下げや労働市場の柔軟化などの親企業政策を歓迎し、フランスに莫大な資本を投じてきた。だが最近の調査では、回答者の28%が今後の雇用縮小を検討中だと答え、投資マインドが急速に冷え込んでいる実態を示した。
投資家が背を向ける決定的な理由は「政治的な不確実性」と、それに起因する「社会的統制力の喪失」である。2024年の解散総選挙後、フランス議会は圧倒的多数党のない「ハング・パーラメント(hung parliament)」状態に陥り、このため政府の予算案通過や追加の経済改革案の処理が事実上麻痺した。昨年10月にはフランス史上最短命の首相として記録されたセバスチャン・ルコルニュ首相が就任からわずか27日で職を退いた。この2年間でマクロン大統領が任命した5人目の首相だったルコルニュまでが退場し、フランスの国政運営は未曾有の混乱に陥った。
とりわけ年金改革などをめぐる激しい抗議デモや公共部門の常習的なストライキといった深刻な社会的混乱は、投資家の退出本能を刺激しているとの見方が出ている。政府が街頭の怒りを鎮められず社会的合意の形成に失敗したことで、フランスの慢性的な労使対立リスクが企業経営の致命的な足かせとして再浮上したためだ。
これに加え、2027年のフランス大統領選を前にマクロン大統領が3選制限で退く状況のなか、マリーヌ・ルペンが率いる強硬右派系の国民連合(RN)が政権をとる可能性があるとの懸念も市場を支配している。アンケートに答えた投資家の77%は「政府が大統領選までに意味のある経済改革を成し遂げるとは信じない」と回答した。
対外環境も容易ではない。米国トランプ政権による報復関税の脅威が現実味を帯びるなか、フランスの慢性的な財政赤字と欧州内での国防費増額圧力はフランス経済の魅力度を一段と低下させる要因だ。これまでフランスはドイツを抑え欧州での外国直接投資(FDI)誘致で首位を記録してきたが、今回の調査結果はその地位が危うくなったことを示唆する。ある金融界関係者は「投資家は不確実性を最も嫌う」としたうえで「マクロン後のフランスがどの方向へ進むのか確信が持てない状況では、資本流出は避けられないプロセスだ」と指摘した。