ドナルド・トランプ米国政権が企業のDEI(多様性・衡平性・包摂性)政策を標的にした取り締まりを本格化するなか、グローバルスポーツウェア企業のナイキが標的となった。
4日(現地時間)、米雇用平等機会委員会(EEOC)は声明で、ナイキの人事政策が白人従業員に対する「体系的差別(pattern or practice of disparate treatment)」につながったかどうかの調査に着手したと明らかにした。EEOCは2018年から関連資料を求めてきており、最近ではミズーリ連邦地裁にナイキを相手取り召喚状の執行を求める訴訟まで提起した状況だ。
ナイキは疑惑を全面否定し、調査手法に強い遺憾を示した。会社側は「今回の措置は予想外の異例の水準だ」とし、「EEOCの問い合わせに誠実に協力してきており、数千ページに及ぶ資料と詳細な書面回答をすでに提出し、現在も追加資料を提供中だ」と述べた。しかし、先行する対応にもかかわらず事態が連邦訴訟に発展したことについて、ナイキは当惑を隠せない雰囲気だ。
EEOCによると、今回の調査ではナイキの▲人員削減時の対象者選定基準▲従業員の人種・民族情報の保管方法▲メンタリング・キャリア開発プログラムの運営基準などがモニタリングされている。ただしEEOCは、特定の従業員が差別被害を主張して提起した個別の申立てがあったかどうかは公開しなかった。
今回の調査は、トランプ政権が警告した「違法DEIプログラム」を正面から狙う動きの延長線上にある。共和党所属のアンドレア・ルーカスEEOC委員は大統領の反DEI基調を積極的に支持してきており、昨年には米主要法律事務所20社の多様性プログラムに調査を着手した。最近ではソーシャルメディア(SNS)を通じて「企業の多様性プログラムで被害を受けたと感じる白人男性がいればEEOCに通報してほしい」と公言した。
ナイキに対する保守陣営の法的攻勢も事態を拡大させたとみられる。トランプ大統領の政治顧問として知られるスティーブン・ミラーが共同設立した非営利の法律団体「アメリカ・ファースト・リーガル(America First Legal・AFL)」はEEOCに申立てを提出し、ナイキが採用・研修・昇進の過程で事実上の数値割当を活用して多様性を強制し、その結果、白人異性愛者の男性が排除されたと主張したためだ。AFLはディズニー、スターバックス、セールスフォースなど他の大企業に対しても類似の申立てを行ってきた。
ただし今回の事案は、EEOCが調査段階で手続的過程を外部に公開した点で注目されている。通常、EEOCの調査は機密で進むためだ。労働専門弁護士のクリストファー・ディグロフは「召喚状の執行のような手続的措置は、たいてい非公開の行政事項だ」とし、「調査段階ではまだいかなる結論も下されておらず、EEOCは中立性を維持すべきだ」と指摘した。
先に米国企業は、2020年に性犯罪被害の経験を明らかにして連帯を示す「#MeToo」運動と、警察の過剰な制圧で死亡した黒人男性ジョージ・フロイドを追悼する「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter:黒人の命も重要だ)」運動以降、人種・性別の多様性拡大に大々的に乗り出した。
ナイキも同時期、元・現職従業員から関連訴訟を提起された後、2020年に最高多様性責任者(CDO)を新たに任命し、米国内の人種差別解消団体を支援するために4年間で4,000万ドルを投資すると発表した。
しかし2023年に米連邦最高裁が大学入試での少数人種優遇政策を違憲と判断し、企業のDEI政策も法的紛争の対象になり得るとの懸念が広がっている。ここにトランプ大統領の影響力も作用し、多くの企業が人種関連プログラムを縮小・再検討し、CDOの採用を縮小しているとされる。