米国の有力紙ワシントン・ポスト(WP)が4日(現地時間)、149年の歴史で最も強度の高い大規模なリストラに入った。2013年にアマゾン創業者のジェフ・ベゾスが買収してから13年ぶりである。ワシントン・ポスト労働組合は、この日会社全体の従業員約2500人のうち約800人が解雇されたと明らかにした。
このうち記者を含む編集局の人員は、労組推計で300〜400人程度とみられる。マット・マレー編集局長は社内メモで今回の措置を「苦痛だが不可避の選択」と規定した。ワシントン・ポストは昨年、通年ベースで1億7700万ドル(約2300億ウォン)の赤字を計上した。
マレー局長は「われわれは全員を満足させる組織にはなれない」として、人員削減と報道範囲の縮小を同時に進めると伝えた。今回のリストラは「戦略的な再設定」だと強調した。政治・政府関連の報道部門を最大の柱として残し、科学・保健・技術・ビジネス部門も維持すると付け加えた。
今回のリストラはスポーツ部門の廃止を含め、編集・地域社会報道(メトロ)・国際・文化といった広範な領域に及んだ。
最も目を引く変化はスポーツセクションの解体である。ワシントン・ポストは現行のスポーツ部門を廃止し、関連人員を解雇または再配置することにした。スポーツ部の記者はおおむね45人規模とされる。このうち大半は実質的な解雇通告に当たる在宅待機の指示を受けた。一部の記者のみがスポーツを文化・社会的現象の観点から扱うチームに再配置された。専門家はこれにより、ワシントン・ポストが数十年にわたり築いた「地域スポーツ報道に強いブランド」というイメージが消えると見立てた。
海外取材網も大幅に縮小する。これまで26カ所で運営していた海外支局を半分以下の12に減らした。中東情勢の要衝であるエジプト・カイロ支局は全員が解雇通告を受けた。ロイターは中東を含め、欧州とアジア地域の特派員・支局長のラインが相当数整理されたと伝えた。ワシントン・ポストはこれまで「報道界のノーベル賞」と呼ばれるピューリッツァー賞の国際報道部門を複数回受賞するなど、海外取材に強みを示してきた。しかし今回の措置でグローバル総合紙としての地位を下ろし、ワシントン政界中心の政策専門紙へ回帰しようとしているとの分析が出た。
書評セクション「ブック・ワールド」も廃止された。週末紙面で書評と文学インタビューをまとめて提供してきた固定セクションがなくなり、文化関連の報道も相当部分が縮小する見通しだ。デイリーニュースのポッドキャスト「ポスト・リポーツ」も中断される。デジタル拡張を象徴してきたポッドキャストのフォーマットを削減するほど、ワシントン・ポストにとって短期のコスト削減が重要になったという意味合いと解釈される。
リストラの背景としては、トラフィック崩壊と収益モデルの難航が挙げられる。ブルームバーグによると、直近3年間でワシントン・ポストの自然検索(オーガニックサーチ)流入量はほぼ半分に落ちた。生成AIが利用者体験を再編し、従来のように検索を通じて記事を読む読者数が急減した。主要検索エンジンも記事リンクより要約回答を提供する流れが強まった。
ただし、検索流入の減少と生成AIの拡散はワシントン・ポストだけの問題ではない。主要メディア全般が直面する共通の現象である。専門家によれば、ワシントン・ポストは以前から検索依存度が他媒体より相対的に高く、流入構造が変わるとより大きな打撃を受けた。加えて、事業モデルの側面でもゲーム・商品販売・バンドルサービスのように購読を引き留める装置が不足していた。
監査資料によれば、昨年のワシントン・ポストの有料紙面購読者数は9万7000人、日曜版の発行部数は16万部だった。2020年の日平均購読者25万人から大きく減った。紙の新聞が急速に縮小した市場で、デジタル拡張にも失敗し、印刷や物流費といった固定費を相殺する構造を作れなかったためだ。
APは同期間、競合紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)がゲームや商品推薦といった付加サービスを育て、購読基盤を拡大したと伝えた。ニューヨーク・タイムズは2022年に5億5000万ドル(約7980億ウォン)を投じ、世界的権威を持つスポーツ媒体ザ・アスレチック(The Athletic)を買収した。翌年からはこの媒体でオンラインのスポーツセクションを代替し、印刷版(紙面)ではスポーツセクションをなくした。
一方、ワシントン・ポストは逆にスポーツ・書評といった総合紙としての外延を縮小し、ワシントン政界の政治・安全保障取材を前面に掲げる選択をした。コスト削減とアイデンティティ再定立を同時に狙った格好だが、読者の立場では読むものが減るという反作用も予想される。
大統領選当時に浮上した「政治的外風」論争は、忠誠度の高い読者層さえ離反させた。ベゾス社主は2024年に編集局が準備したカマラ・ハリス候補支持の社説を撤回するよう強制した。その後、ベゾスの職権乱用論争と、ハリス支持への反発が同時に起こり、1週間でデジタル購読者20万人が離脱した。全有料購読者の8%に達する数値だ。過度なPC(政治的に正しいこと)志向と、一方に偏った党派的報道が、保守層はもとより中道層の読者にも疲労感を与えたという評価だ。社説中断の決定後、左右を問わず読者の不満と混乱が噴出し、ブランドと信頼度にひびが入ったとの解釈も出た。
マーティ・バロン前編集局長はリベラル寄りのガーディアンのインタビューで「トランプ大統領の機嫌を取るためのベゾス社主の努力(sickening efforts)がブランド破壊を招いた」と語った。ワシントン・ポストの現在の赤字規模自体は、資産が2000億ドルを超えるベゾスに財政的な大きな衝撃を与えるものではない。アマゾンと宇宙探査企業ブルーオリジンなど、ベゾスの中核事業が政府規制と国防総省の契約に絡んでおり、ワシントン・ポストを「事業防護用の盾」に貶めたとの指摘だ。元ワシントン・ポストのファクトチェッカーであるグレン・ケスラーは「ベゾスがワシントン・ポストを救おうとしているのではなく、トランプ政権2期の局面で自らと企業帝国を取り巻く政治的圧力に耐えようとしているように見える」と述べた。
今回解雇された従業員は、4月10日まで書類上の雇用状態を維持し、6カ月分の健康保険の提供を受ける。しかしワシントン・ポスト労組は声明を出し、「ベゾス社主に報道機関としての使命を守る意思がないなら、むしろ売却せよ」という趣旨の声明を出した。