米国の強力なけん制にもかかわらず、欧州主要国の首脳が相次いで北京に向かっている。英国のキア・スターマー首相とドイツのフリードリヒ・メルツ首相に続き、スペインのペドロ・サンチェス首相まで訪中の列に合流した。
ドナルド・トランプ米国大統領が主導する保護主義の障壁が高まると、欧州が中国市場で活路を探す大々的な再評価(great reassessment)に入ったとの分析が出ている。安全保障上の懸念よりも経済的な実利を選んだ欧州の歩みは、西側陣営の単一の隊列に亀裂を予告している。
4日(現地時間)香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、スペイン政府はペドロ・サンチェス首相の中国訪問に向けて中国当局と詳細日程を調整中である。訪問時期は今年下半期と目される。今回の訪問が実現すれば、サンチェス首相は過去4年間で4回も中国を訪れる記録を打ち立てる。西側指導者の中で最も頻繁な訪問である。スペインと中国は1973年の国交樹立以来、欧州連合(EU)と中国の間の政治的緊張の中でも比較的円満な関係を維持してきた。
サンチェス首相の度重なる訪中は単なる外交的レトリックではない。徹底した実用主義の計算がある。ミゲル・オテロ・イグレシアス・エルカノ王立研究所上級分析官はSCMPに「サンチェス首相は中国訪問を年中行事にすべきだと提案した前例がある」と語った。さらに「サンチェス首相は中国がスペインに格別に重要であり、両国関係を強固にするにはハイレベルの訪問が不可欠だと信じている」と付け加えた。これは、中国との定例的な対話チャネルを構築し、スペイン産豚肉の輸出規制問題や電気自動車の生産工場誘致など山積する経済懸案を直接取り扱う意思と解される。
欧州が中国へ目を向ける背景には米国の高強度の圧迫政策がある。米中の貿易対立が高まる中、中国は昨年4月に米国産製品に対する関税を125%まで引き上げる強硬策で対抗した。続いて習近平中国国家主席はEUに「一方的ないじめ(unilateral bullying)に抵抗せよ」と促し、欧州に関心を示した。
米国第一主義に基づくトランプ政権の政策は欧州諸国にジレンマをもたらした。米国に追随すれば当面中国という巨大市場を失い、中国に接近すれば安全保障の同盟である米国との関係が懸念される。しかしウクライナ戦争の長期化とエネルギー費用の上昇で経済体力が枯渇し、最近はグリーンランド併合をめぐる論争に火がつき、欧州でも政治的理想よりも糧が急務だという現実論が力を得ている様相だ。サンチェス首相をはじめとする欧州首脳の相次ぐ北京訪問は、米国の政策変化が欧州諸国に対中関係を再考させる起爆剤になったと専門家は分析した。
スペインに先立ち、欧州の経済エンジンとされるドイツも中国との関係改善に一段と力を注ぎ始めた。今月末に訪中予定とされるフリードリヒ・メルツ独首相は、自国自動車産業の生存のために習近平主席と会談する。フォルクスワーゲンやBMWなどドイツの看板自動車企業は最大市場である中国で深刻な販売不振に直面している。メルツ首相はこの不振からの脱却策と電気自動車のサプライチェーン協力を協議する予定とされる。ドイチェ・ヴェレなどは、ドイツ国内で中国とのデカップリング(脱同調)は即ちドイツ製造業の自滅行為だという危機感が蔓延していると伝えた。
英国もブレグジット以後の経済的孤立から抜け出すために中国との接触を増やしている。キア・スターマー英国首相は先月北京を訪れ、習主席と貿易・投資の再開を協議した。安全保障問題でぎくしゃくした関係ではあったが、停滞する英国経済を立て直すには中国資本と市場が不可欠だとの判断による決定とみられる。このように欧州主要国の首脳が競って中国を訪れる現象は、過去のパンデミック以前のメルケル時代に追求した親中路線とも趣が異なる。過去の親中路線が相互繁栄のための協力だったとすれば、今は各自生存のための切迫した生存戦略に近い。
欧州連合(EU)はこれまで対中政策の基調としてデリスキング(リスク低減)を掲げてきた。中国依存度を下げることが核心だった。しかし最近の流れは、関係を断つのではなく、不必要な政治的摩擦を減らし経済的利益は享受する「選別的関与」へと転換している。中国製電気自動車に対するEU関税賦課の議論が進む最中にも、個別国家のレベルで中国企業の誘致競争が起きるという矛盾した状況がこれを裏付けると専門家は評価した。
中国もこうした欧州の隙を突いた。習近平主席は欧州の指導者と会うたびに戦略的自律性(strategic autonomy)を強調した。米国に振り回されず独自の判断をせよという要請である。中国はスペイン、フランス、ドイツなど個別国家に合わせた経済協力パッケージを提示し、EU体制を揺さぶる各個撃破戦術を展開している。サンチェス・スペイン首相の度重なる訪中も、こうした中国の戦略と欧州の必要が合致した産物だとスペインメディアは伝えた。
ただし欧州首脳の相次ぐ北京行きが、米国とEUをつなぐ大西洋同盟の亀裂を意味するわけではない。最近は敏感度が高まったとはいえ、依然として安全保障と価値の面で欧州は北大西洋条約機構(NATO)などを軸に米国と歩調を合わせている。一方で経済の問題に関する限り、米国一辺倒から脱し多角化を図る意思は明確である。
英国シンクタンクのチャタムハウスのカティヤ・ベゴ上級研究員は報告書で「欧州の指導者の相当数は中国との関係をより近く見せる誘因を感じている」とし、「米国が自国産業保護のため同盟国にも関税の壁を築く状況で、中国というレバレッジを活用して交渉力を高めようとしている」と述べた。